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アイスクリームをめぐる状況〜夏の到来を目前に〜

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最終更新日:2026年6月10日

アイスクリームをめぐる状況〜夏の到来を目前に〜

2026年6月

一般社団法人 日本アイスクリーム協会
専務理事 小栗 英揮

はじめに

 アイスクリームはお好きでしょうか。   
  

 日本アイスクリーム協会では、2025年にアイスクリームについての調査を実施しました。その結果によれば、「アイスクリームが好き」と回答された方は全体の90%以上に達し(図1)、好きなスイーツの第1位に選ばれています(図2)。さらに1〜3位の合計でも80%以上の支持を集めており、アイスクリームが広く愛されていることが分かります。





 

 日本人とアイスクリームとの出会いは、江戸時代末期の1860年にさかのぼります。江戸幕府が派遣した使節団が訪問先の米国で初めて口にし、そのおいしさに驚嘆したと伝えられています。その後、明治初めの1869年には、町田房蔵が神奈川県横浜市・馬車道において、日本人として初めてアイスクリーム「あいすくりん」の製造販売を開始しました。

 以来、およそ160年にわたり、アイスクリームは人々の暮らしに寄り添い続け、今日では「キング・オブ・スイーツ」とも称される存在となっています。

 当協会は、アイスクリーム類および氷菓の衛生ならびに品質の向上を図ることにより、お客さまに安全な商品を提供し、豊かな食生活に寄与することを目的として、1966年に設立され、本年で60周年を迎えます。この間のアイスクリームの市場規模(販売金額)は、設立当初の510億円から、2024年度には6451億円と過去最高を更新しました。

 一方で、この60年の歩みは決して順風満帆ではなく、市場の低迷や構造変化など、多くの課題にも直面してきました。本稿では、20年前の低迷期からV字回復を果たした軌跡と「なぜアイスクリームがこれほどまでに人々に愛され続けているのか」、その背景をご紹介いたします。

1 アイスクリーム市場の販売動向(直近20年を振り返る)

 アイスクリーム市場は、1970年代以降順調に拡大し、1994年には4000億円を超える規模に達しました。しかしその後、約9年間にわたり市場は縮小し、2003年には3000億円台前半まで落ち込みます。

 この背景には、少子化の進行、小売チャネルの変化、さらにはチルドデザートなど競合商品の拡大といった複合的な要因がありました。また、アイスクリームの市場の低迷は企業の投資意欲を抑制し、さらなる縮小を招くという負の循環も生じていたと考えられます。

 こうした状況を転換したのが、「価格重視」から「価値重視」への発想の転換でした。各社が技術革新や設備投資を進め、高付加価値商品の開発に取り組んだことで、魅力ある商品が市場に広がりました。その結果、消費者の支持を再び獲得し、市場は回復基調へと転じます。

 2010年に4000億円を、2017年には5000億円を、そして、近年では6000億円を超える規模へと成長し、現在も拡大を続けています。

2 アイスクリーム・トレンドの変化

 当協会の調査では、アイスクリームを食べる理由として、20年前の2006年頃は「甘いものが食べたいとき」、「気軽に食べられる」が上位でしたが、2025年の調査では、「おいしさ」に加え、「幸せな気分になる」、「自分へのご褒美」、「ストレス解消」といった理由が上位に挙げられています(図3)。アイスクリームは食品としてのおいしさだけではなく、「癒し・安らぎ」といった情緒的なものを提供していることが分かります。

 その背景には、フレーバーや食感の進化があります。バニラ一つをとっても多様なバリエーションが存在し、製造技術の進歩により、くちどけや滑らかさ、食感のコントラストなど、細部にまで工夫が凝らされています。

 こうした取り組みにより、アイスクリームは嗜好(し こう)品としての価値を高め、「キング・オブ・スイーツ」としての地位を確立してきました。
 
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3 アイスクリームに使用される甘味料や乳製品

 アイスクリームの品質や味わいを左右する重要な要素として、甘味料と乳製品が挙げられます。

 適度な甘さはアイスクリームに欠かせないものです。主なものに、砂糖、ブドウ糖、果糖、水あめなどがあり、それぞれ甘さの質が異なります。糖分は、固形分の供給源としてアイスクリームの組織をつくるほか、凍結温度に影響を与え、氷結晶を細かくすることで滑らかな食感を実現します。また、クリームの香りや風味を引き立てる役割も担っています。

 20年前は、砂糖を中心に水あめ、異性化糖などを併用する処方が一般的でした。その後、「濃厚」や「キレ」など高付加価値商品の増加、機能訴求型商品の登場といった要因を背景に、甘味料の選択肢は多様化しました。

 近年の傾向としては、甘味料には、機能的な効果のみならず、前章で述べた通り、20年前と比べて「癒し・安らぎ」といった情緒的・官能的効果も求められてきており、その総合的な機能性により、砂糖や水あめが改めて評価されています。特に、砂糖は、「自然で後味の良い甘味」、「乳原料・油脂との相互作用によるコク・風味の形成に優れている」点が認められています。

 乳製品についても、開発コンセプトによって液状や粉状のもの、乳固形分の割合などを考慮して選定されています。乳固形成分中に含まれる乳脂肪分がコクや風味に直結しますし、柔らかさや滑らかさといった食感の違いや味わいの差別性を図るため、生乳、クリーム、チーズ、脱脂濃縮乳など多種多様な乳製品を使い分けています。

 甘味料や乳製品は、品質・おいしさを支える不可欠な素材として、商品の差別化を図る上で、いかに最適に使うかという視点が、今後も一層重視されていくものと思われます。 
 

4 アイスクリーム業界をめぐる課題

 直面する課題としては、原材料価格の上昇が挙げられます。国際的な需給動向や為替相場の影響により、砂糖や乳製品の価格変動は製造コストに直接影響を及ぼしています。また、エネルギーコストの高騰も冷凍流通を前提とするアイスクリームにとって大きな負担となっています。

 さらに、人手不足や物流問題も深刻化しており、安定供給体制の維持が課題となっています。

 夏の販売傾向や消費者ニーズにも変化があります。猛暑が続き日中の外出は控えられ、屋外での喫食から冷房の効いた屋内での喫食頻度が増えたことにより、氷菓だけではなく、クリーム系商品も好まれるようになってきています。加えて、健康志向の高まりに伴い、糖質やカロリーに対する消費者の意識が高まっていることも、商品開発における重要なテーマとなっています。

5 社会貢献活動と「アイスクリームの日」

 当協会は、同時に「アイスクリームを通じて人々に笑顔を届けること」も大切な使命と考え、長年にわたり社会貢献活動に取り組んでいます。その代表的な取り組みが、福祉施設へのアイスクリーム寄贈活動です。

 1964年、当協会の前身である東京アイスクリーム協会は、5月9日を「アイスクリームデー」と定め、都内の福祉施設や病院へアイスクリームを寄贈する活動を開始しました。子どもたちや施設で生活されている方々に、ひとときの楽しさと笑顔を届けたいという思いから始まったこの活動は、その後、全国の地区協会へと広がり、60年以上にわたり継続されています。

 現在では、毎年3万個以上のアイスクリームが会員企業の手によって全国の福祉施設へ届けられています。施設を訪問し、直接アイスクリームを手渡す交流の中で、多くの笑顔が生まれ、地域とのつながりを深める貴重な機会となっています。福祉施設の方々からは、毎年心温まるお礼状や、アイスクリームを笑顔で召し上がる写真を多数いただいており、これらは会員企業にとって大きな励みとなっています(図4)。こうした長年の取り組みが評価され、2022年には関東アイスクリーム協会が東京都功労者として表彰されました(図5)。

 アイスクリームを通じて人々に喜びを届けたいという業界の思いは、これからも変わることなく受け継がれていきます。



 
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6 今後のアイスクリーム市場への考察(展望)

 ライフスタイルの多様化や健康志向の高まりなど、消費者ニーズは一層高度化しています。こうした変化に的確に対応し、新たな価値の創出に取り組むことが、今後の業界発展において重要であると考えております。特に、健康志向と嗜好性の両立です。さまざまな機能性素材の活用などにより、「健康と嗜好を両立させたぜいたく」といった新しい価値の提供が求められます。また、環境配慮や資源の有効活用など、持続可能な社会への対応も業界として重要な使命です。

 2025年度の市場規模は、6600億円に到達するものと見込んでおりますが、この先10年後には9000億円、さらには1兆円規模への成長も視野に入っております。ただし、その実現には、価格以上の価値を消費者の皆さまに認めていただくことが不可欠です。

おわりに

 協会設立60周年に当たり(図6)、消費者の皆さまに「アイスクリームの原体験」や「最初の出会い」、「印象に残る思い出」を調査したところ、多くの方が家族や友人との時間、子どもの頃の記憶、日常の小さな出来事など、アイスクリームと結びついた温かいエピソードを語ってくださいました。アイスクリームは単なるスイーツではなく、人々の人生に寄り添う存在であることが改めて確認できました。

 夏の到来を目前に控え、「アイスクリームでみんな笑顔に」を合言葉に、当協会は今後も衛生・品質の向上と業界の健全な発展に努め、食文化の向上に貢献してまいります。

 今後とも、関係各位のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
 


一般社団法人日本アイスクリーム協会ホームページ

https://www.icecream.or.jp/




プロフィールはこちら
https://www.icecream.or.jp/iceworld/prince.html
 

 

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8678