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〜砂糖などの甘味料を例に〜 ―後編―

甘味と食品表示の今後の新たな役割
〜砂糖などの甘味料を例に〜 ―後編―

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最終更新日:2026年6月10日

甘味と食品表示の今後の新たな役割
〜砂糖などの甘味料を例に〜 ―後編―

2026年6月

一般財団法人 消費科学センター 代表理事
(公立大学法人 宮城大学 名誉教授)
池戸 重信

【要約】

 食品表示は、消費者の健全な食生活の実現に必要な情報伝達媒体であるとともに、食品を提供する側と消費者を結ぶ信頼の絆でもある。前編では、食料・農業・農村基本法の基本理念などに基づき、消費者にとって食品表示の活用目的である「健全な食生活」の意義およびその実現を図るための「分かりやすい食品表示」の在り方を記した。さらに、食品表示の本質である以下の3点

1)視認性の高さ
2)表示ルールの理解
3)関連情報の理解


−のうち、3)の関連情報について、砂糖などの甘味料を例に挙げて述べたところである。

 後編では、1)の視認性 および2)の表示ルールという、表示そのものに求められる2点について、改めて現時点での課題を砂糖などの甘味料を例に記す。さらに、国際整合性の下で検討されている「デジタルツール」の活用を通じ、1)〜3)を網羅的に実現する未来を見据え、食品表示の今後の新たな役割を示すこととする。

1 食品表示の「視認性」に関する課題

 食品表示に求められる“分かりやすい3要素”としては、

 ◆表示自体の「視認性」(見やすさ・読みやすさ、探しやすさ)が高いこと
 ◆食品表示に関する「ルール」およびそれに使用される「用語」の意味などについて、消費者が正しく理解できるようになっていること
 ◆対象食品に関する「特性」や「食生活との関わり」(食料自給率、わが国における生産・製造などの分野〈農業、食品産業など〉の取り組み状況など)といった「関連情報」について、消費者が正しく理解できるようになっていること

があるが、このうち、視認性に関して消費者が不便に感じる点としては、消費者庁の「食品表示に関する消費者意向調査(消費者意向調査)」(令和5年度)によれば、後述する横断的義務表示(9項目)について、1)「文字が小さくて見にくい」、2)「表示事項が多すぎて見たい情報がすぐにわからない」、3)「容器包装の底面など目立たないところに表示されているため見つけにくい」−にそれぞれ回答した人の割合を合計すると、9項目平均で約39%と4割近くになり、特に女性の60歳代では約55%、同じく70歳代以上では約61%に達しており、視認性に関し、これら3点について消費者が不便に感じていることが分かる。

 戦後、食品を巡る衛生意識や消費者意識の高まりなどに伴い、食品表示をすべき対象や事項が時代とともに増加してきた(図1)。一方で、1世帯当たりの人員は減少の一途をたどり、2020年には2.21人と、1950年(5.02人)に比べ半分以下となり(図2)、全世帯の約3分の2を1人世帯と2人世帯が占める状況となった(図3)。このため、販売される食品は、少人数世帯を対象とした小スケールのものが増え、結果として食品表示が可能な面積が小さくならざるを得ず、このことが消費者に「見にくい」などの不便さを感じさせることとなっている。









 

 こうした状況を踏まえ、食品表示法制定に先立って設置された食品表示一元化検討会以降(前編図1参照:『砂糖類・でん粉情報』2026年5月号)、文字をより大きくし、表示事項をより少なくして、視認性をいかに高めるかということが課題の一つとされてきた。

2 食品の「表示ルール」に関する課題−砂糖などの甘味料を例に−

(1)義務化されたルールの概要

 次に、食品表示に関する具体的なルールについて述べる。食品の製造者、加工者、輸入者および販売者(食品関連事業者など)に義務付けられた主な事項は、以下の通りである。

 ◆栄養成分表示の義務化 2020年4月1日から、加工食品に熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量)の栄養成分表示が義務付けられた。
 ◆原料原産地表示の義務化 22年4月1日から、国内で製造されたすべての加工食品について、使用されている原材料のうち最も多いものの原料原産地の表示が義務化された(生鮮食品については、従前から原産地表示が必須となっている)。
 ◆加工食品における横断的表示義務事項 15年4月1日から、原則全ての加工食品に共通の義務表示事項として、名称、保存方法、消費期限又は賞味期限、原材料名、添加物、内容量等、栄養成分の量等、食品関連事業者の氏名等、製造所所在地等の9項目が定められている。

なお、その他、特定原材料を原材料とする加工食品などには「アレルゲン」、機能性表示食品などにはその食品である旨、上記「原料原産表示」など、一定の加工食品を対象に共通の義務表示事項が定められている。
 
 上記を踏まえた具体的な表示事項は、表1の通りである。
 
1

(2)砂糖の食品表示

 消費者が家庭用に調味料として購入する小袋の表示については、表2のようになっている。




 「ア 名称」は、「その内容を表す一般的な名称を表示するもの」とされ、上白糖、グラニュー糖、三温糖などと記載されている。「イ 保存の方法」は、保存のための注意事項が記載されている。「ウ 消費期限又は賞味期限」は、砂糖については、長期保存しても品質が変化しにくいため、表示が省略できることから、欄が設けられていないことが一般的である。

 「エ 原材料名」は、原材料に占める重量の割合の高いものから順に、その最も一般的な名称をもって表示する。また、国内で製造したすべての加工食品の最も割合の高い原材料については、「原料原産地名」を表示することとなっている。原産地名は国別重量の多いものから順に記載することとされているため、複数国ある場合は、過去の一定期間における産地別使用実績または今後の一定期間における産地別使用計画における重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法(「又は表示」という)と、原産国が3カ国以上ある場合には、3カ国目以降を「その他」と表示する方法がある。

 なお、サトウキビ由来の砂糖については、国内の原料糖も海外からの輸入糖も、国内の精製糖工場で一緒に精製されることが一般的であり、表2のように記載される。北海道のてん菜由来の砂糖は、現地の原料糖を使用して道内で精製されるため、本欄には「てん菜(北海道産)」などと記載されている。

(3)異性化糖の食品表示

 「エ 原材料名」としては、日本農林規格(JAS)に基づき、果糖含量に応じて「ぶどう糖果糖液糖」(果糖含有率が50%未満)、「果糖ぶどう糖液糖」(同50%以上90%未満)、「高果糖液糖」(同90%以上)、「砂糖混合異性化液糖」(上記の液糖に10%以上の砂糖を加えたもの〈その液糖がぶどう糖果糖液糖であれば、砂糖混合ぶどう糖果糖液糖〉)と記載される。また、「原料原産地名」を記載する際は、原材料の後に「(国内製造)」が追記されることが一般的である。

(4)加糖調製品の食品表示

 「エ 原材料名」には、2種類以上の原材料からなる複合原材料を使用する場合に該当するので、その名称の後に、複合原材料の原材料名を、その複合原材料の原材料に占める重量割合の高いものから順に( )書きで表示することになる(表3)。

 ただし、中間加工原材料を使用した場合であって、1)消費者がその内容を理解できない複合原材料の名称の場合、2)複数の原材料を単純に混合(合成したものは除く)しただけなど、消費者に対して中間加工原材料に関する情報を提供するメリットが少ない−と考えられる場合には、分割して表示することが可能である(表4)。



 
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(5)甘味料入り加工食品の食品表示

 原材料に占める重量割合の高いものとして「原料原産地名」が記載される可能性があるのは、糖質系甘味料(主に砂糖、加糖調製品、異性化糖)に限られている。また、加糖調製品は、分割されて砂糖またはその他の原料として「原料原産地名」が記載されている場合もある。他方、甘味度が高く重量が小さい高甘味度甘味料は、「原料原産地名」が記載されることは考えにくい。

 「オ 添加物」は、原則として含有する高甘味度甘味料などの食品添加物はすべて重量順で表示しなければならない。その場合、「添加物」として別枠で記載される場合もあるが、通常は、原材料名の後にスラッシュ(/)もしくは改行で区別して記載されている。甘味料(アセスルファムカリウム)、甘味料(スクラロース)などの表示がある。

 砂糖は、一般的には添加物の記載はないが、三温糖など色の調整を行うためにカラメル色素を使用した場合には、その旨の表示がある。

(6)栄養成分表示および栄養強調表示のルール

 容器包装に入った加工食品には、食品に含まれる栄養成分に関する情報を明らかにするため、表1の内容とは別に「栄養成分表示」が表示されている。消費者の健全な食生活の実践には不可欠なものであり、健康維持に欠かせないエネルギー(熱量)および4栄養成分(たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム〈食塩相当量〉)の表示が義務付けられている。また、義務表示以外に推奨表示と任意表示がある。

 【栄養成分表示の具体例】
 ◆砂糖の場合は、通常は「熱量」と「炭水化物」の欄に記載がある。
 ◆異性化糖、加糖調製品を含んだ食品は、その他の原材料に応じて、「熱量」と「炭水化物」の欄のほか、該当欄に数値が記載されている。
 ◆砂糖や異性化糖、加糖調製品に含まれる砂糖は、「炭水化物」のうち「糖質」や「糖類」に該当するが、この表示は任意表示の扱いになっており、必ず表示されているわけではない。
 ◆高甘味度甘味料は、甘味度が高いため使用量が少なく、「熱量」はゼロキロカロリーなどと記載されることが多い。

 さらに、食品が一定の基準を満たした場合に「栄養強調表示」が認められており、糖質系甘味料である糖類に関しては、表5のようにさまざまな表示が使用されている。これらの表示のある食品には、非糖質系甘味料である高甘味度甘味料が使用されていることが多い。



 

 なお、「ノンシュガー」、「シュガーレス」のような表示は、糖類に関する「含まない旨」の表示基準が適用になるので、砂糖以外の糖類(異性化糖など)を含めて基準を満たしていない場合には表示することができない。

 また、「含まない旨の表示」と類似した「糖類無添加」や「砂糖不使用」の表示については、「無添加強調表示」として、以下の条件をすべて満たさなければ表示できない。(詳細は『砂糖類・でん粉情報』2025年10月号「糖に関する食品表示について〜新たな食品表示基準の下で〜」をご参照ください。)

 【無添加強調表示に係る4つの条件】
 ◆いかなる糖類も添加されていないこと。(ここでいう「添加」は「使用」と同義)
 ◆糖類(添加されたものに限る。)に代わる原材料(複合原材料を含む。)または添加物を使用していないこと。
 ◆酵素分解その他何らかの方法により、糖類の含有量が原材料および添加物の量を超えないこと。
 ◆糖類の含有量を表示すること。

 しかし、「栄養強調表示」や「無添加強調表示」には、代替品である高甘味度甘味料の使用制限は条件になっていないため、実際にはこのような表示がされている多くの食品で使用されている。

 一方、2023年5月には、世界保健機関(WHO)が、最近の健康影響に関する研究成果をまとめ、(高甘味度甘味料などの)「非糖質系甘味料の使用に関するガイドライン」を公表し、「体重コントロールの達成や非感染症疾患(生活習慣、環境、遺伝などが原因で発症する病気)のリスク低減の手段としては使用しないこと」(糖尿病で治療中の者を除く)を提案している。

 消費者が商品選択を行うに当たっては、食品表示の確認や関連情報の把握が必要であると考えられる。

 以上、甘味料を例として、現行の食品表示基準に基づくルールの概略を示した。

 加工食品の食品表示基準に基づく義務表示事項は、1)全ての食品に表示が必要な事項(「名称」、「保存の方法」など)、2)一定の食品(対象食品)に表示が必要な事項(「アレルゲン」、「機能性表示食品である旨」など)、3)個別の食品に表示が必要な事項(食酢に対する「酸度」、「希釈倍率」など)−に区分して規定されている。すなわち、個々の食品の特性などを踏まえて表示義務が課せられている。上記の甘味料の基準も、検討を踏まえた根拠に基づいたものであり、こうした表示ルールを知ることを通じ、個々の食品の特性などに関する理解を深めることができる。

3 食品表示が目指す3要素の実現のために

(1)消費者側の理解度合い

 さて、ここまで、食品表示の3要素である、1)視認性、2)表示ルールの理解、3)関連情報の理解−について見てきたが、その一方で消費者側の理解の度合いについては、消費者庁の令和6年度消費者意向調査報告書が参考になると思われる。

 この調査では、表示事項によって質問内容が異なるため、図4では「参考度合い」、「理解度合い」および「分からない度合い」を、図5では「認知度合い」、「理解度合い」および「分からない度合い」に示している。






 

 なお、「参考度合い」は、アンケート調査において、購入時に「いつも参考にしている」および「ときどき参考にしている」と回答した者を合計した割合であり、「認知度合い」は、「どのようなものか知っている」および「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」と回答した者を合計した割合である。また、「理解度合い」は、いくつかの選択肢の中からその表示事項に関する説明として正しいと思うものを選ばせる方法により、正答を選んだ者の割合となっている。なお、同質問(選択肢方式)において、「分からない」との選択肢を選んだ者の割合を「分からない度合い」としている。

 これらの結果を見ると、「消費期限・賞味期限」の参考度合いは約8割と、消費者の鮮度への関心度が高い一方で、理解度合いは60%を超えているものの、「分からない」との回答(分からない度合い)が約13%を占めている。この期限表示事項は、消費段階の安全性確保や食品ロス削減の観点から、より一層の普及・啓発が求められる。また、栄養成分等表示についても、参考度合い、理解度合いとも5割に達していないことから、健康・栄養政策の観点から、さらなる知識と理解促進が求められる。

 一方、「栄養機能食品」、「特定保健用食品」および「機能性表示食品」の「保健機能食品」については、「認知度合い」は高くても総じて「理解度合い」が低く、また「分からない度合い」が高いことから、正しい理解に基づく活用がなされるよう一層の理解促進の取り組みが期待される。

4 デジタルツールの活用へ向けた検討経緯

 消費者庁および消費者委員会食品表示部会においては、これまで「分かりやすい食品表示」に関する調査や検討・審議などがなされてきた(「前編」の「はじめに 食品表示の役割」参照)。

 その結果、この課題については、消費者委員会食品表示部会において、「食品表示の全体像」の在り方として検討がなされ、2019年8月に報告書が示された。

 同報告書によれば、活用される食品表示とするための考え方(結論)として、

 ◆表示事項間の優先順位
 ◆インターネットを活用した表示の可能性を含む、ウェブ上における情報提供と従来の容器包装上の表示との組み合わせ

 につき検討するという方向性が示された。

 わが国において、分かりやすい表示の方策としてウェブ上での情報提供が挙げられている中、国際的にも同様の方策が課題となっていたことから、コーデックス委員会の食品表示部会において、ガイドラインの策定に向け、国際ルール作りの議論が進められてきた。

 わが国としても、こうした議論に能動的に対応していくことが必要であることから、2023年10月に消費者庁に「食品表示懇談会」が設置されるとともに、同懇談会の下に24年10月、「食品表示へのデジタルツールの活用検討分科会」が設置され、7回の検討を経て25年12月に食品表示懇談会に報告書が示された。

 分科会では、コーデックス委員会におけるデジタルツールの活用の議論も踏まえて検討することになっているが、第48回コーデックス食品表示部会(24年10月)に示された「食品表示における食品情報の提供のためのテクノロジーの使用に関するガイドライン(テクノロジーガイドライン)」は、図6のような概要となっている。

 デジタルツール活用のイメージは、図7のように、消費者がスマートフォンで二次元コードなどを読み取ると、知りたい情報をソートでき、フォントサイズを調整できることでアレルギー情報も大きく見ることができるというものである。また事業者にとっては、急な仕様変更にも対応可能となる。

 一方、分科会で検討された技術的課題は図8の通りである。








食品表示デジタル化に向けた制度設計の論点整理

(ア)デジタルツール活用のメリット・デメリットと制度上求めるべき水準
 
デジタルツール活用のメリット・デメリットは図9のように整理された。

  大きなメリットとしては、情報提供スペースの制約がないため、提供できる情報は表示に比べ格段に増すことである。また、表示に比べ提供する情報も速やかに提供可能となり、例えば原料原産地表示のように、頻繁に原産地が変更される場合でも対応が容易となり、コストや手間を低減することが可能となる。

 一方、デメリットとしては、消費者サイドでは、スマホの保持や維持経費、店内などでの操作のわずらわしさが伴う。事業者サイドでは、データの管理に要する費用や手間が負担となる。こうしたメリット・デメリットを消費者と事業者の立場で考慮した結果として、普及・定着の進度が決まってくると思われる。

 

(イ)データの管理方法について
 
データの管理方法としては、図10に示すように一元(集中)管理にするか、分散管理にするかの議論がなされた。
現実的な状況として、一元管理で進めていくのは維持管理費用や人員確保の点で、国などが措置していくことは非常に難しいと考えられ、さまざまな課題はあるものの、分散管理により制度設計していくという方向が示された。



(ウ)消費者がアクセスするために使用するツールについて
 
何らかの読み取り用端末が必要であるが、小売事業者が店舗に専用端末を設置するようなことは現実的ではないため、消費者が所有するスマートフォンを、費用負担も含めて使用することを前提とすることとされた。

(エ)1対1対応の具体的方法
 
義務表示の代替であることが前提であるため、デジタルで表示される情報と商品との1対1対応は必須となる。

 二次元コードを利用する場合、図11に示す3パターンが考えられるが、消費者の利便性の観点からすると、手数が少ないパターン(1)が望ましいものの、事業者の実行可能性も踏まえ、パターン(2)を採用することも可能とすること、消費者に分かりやすく、利便性を損なうことのない具体的方法について、消費者庁において詳細なガイドラインの作成を検討していくこととされた。
 


(オ)保管するデータの範囲
 
将来を見据え、義務表示に必要な情報に加え、事業者が自主的な取り組みとして表示しているものや消費者の利便性および安全性に関わる情報については、幅広に保管可能な制度設計とすることとされた。また、保管方法のルールについては、消費者庁において詳細なガイドラインの作成を検討していくことが示された。

(カ)広告などその他の情報との棲み分けルール
 
現在の実態も踏まえ、一切の広告表示を禁止するものではなく、広告が先に出てしまったり、目立つところに広告が出現し、一括表示の情報を消費者が視認することを妨げられたりすることがないように、広告などを掲載する場合は、別枠を設ける、食品表示を優先して確認できる位置に表示するなどの望ましい例を、ガイドラインなどの作成を検討し整理していく方向が示された。

(キ)監視可能性についてのルール作り
 
行政機関が適切に監視できるように、修正履歴の保管を一定の要件化とする方向で制度設計し、その商品が流通しているまたは消費者の手元にある間は、少なくとも行政機関が修正履歴を確認できるように、修正履歴の示し方やその保管期間について、今後、消費者庁において検討されることとなった。

 上記の検討結果を踏まえ、デジタルツール活用制度に関しては、今後、消費者庁において、事業者が参考にする詳細なガイドラインの作成を進めていくことになった。

 また、消費者庁において検証した上で、食品表示に係る情報提供の様式例を示すこととなっている。

 一方、コーデックステクノロジーガイドラインにおいて「食品の名称、安全および栄養に関する食品情報や国などが定めるその他の義務的食品情報は、テクノロジーの使用のみによって提供されるべきではない」旨が示されているが、このことは、国際的に上記以外の義務表示事項に関しては、容器包装上の表示に縛られることなく、デジタルツールを活用した表示により代替されても良いと解釈できる。従って、本制度において容器包装に必ず表示する事項と、デジタルで代替表示を可能とする事項についての具体的な議論を食品表示懇談会で進めることとなっている。
 

 デジタルツールは、食品表示の3要素を実現可能とする可能性を秘めており、メリットを生かすことができれば、新たな役割を担う伝達媒体として期待されるものである。

 なお、食品表示へのデジタルツール活用に関する海外での取り組みについては、消費者庁の2024年の調査によると、韓国・インドネシア・米国・カナダ・EUの各国・地域で二次元コードなどを活用した情報提供が進み、消費者の利便性向上や事業者の効率化に寄与している点が確認されている。

 国家主導型から業界主導型まで多様なモデルが存在し、日本にとっても制度設計の参考となる有益な知見が得られるであろう。今後、法制化を図る国も出てくることが予測されていることから、それらの動向も参考とした検討が行われると思われる。

 以上、デジタル化に向けた検討を含めて述べてきたが、最終的には、いかに消費者へ効果的に普及・教育するかという点が重要である。

 これに関しては、「食生活指針」を記した「食料・農業・農村基本法」(前編参照)のほか、「食育基本法」(2005年6月施行)において、図12に示す七つの基本理念および図13のような関係者の責務が示されている。



 
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 特に、デジタル化対応に関しては、同法に基づき策定された現行の「食育推進基本計画」(21年3月)において記されている。すなわち、「デジタル化に対応した食育の推進」として、「ICT(情報通信技術)などのデジタル技術を有効活用して効果的な情報発信を行うなど、新しい広がりを創出するデジタル化に対応した食育を推進する」ことや「デジタルトランスフォーメーション(デジタル技術の活用による社会の変革)が一層進展する中で、SNS活用やインターネット上でのイベント開催および動画配信、オンラインでの非接触型の食育の展開などを推進する。また、個人がいつでも手軽に使える優れた食育アプリなどについて情報提供を行い、国民の行動変容を促す」旨が示されている。

 一方、食育も含めた消費者教育の推進に関しては「消費者教育の推進に関する法律」(12年12月施行)において、基本理念や国・地方団体などの責務などが規定されている。そして、同法に基づく現行の「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(23年3月)において、学校、地域、家庭および職域というさまざまな場における消費者教育推進の内容が示されている。「デジタル化に対応した消費者教育の推進」として、消費者にとって「適切な情報収集・発信能力の重要性の高まりとポータルサイトでの情報提供・連携促進」を図るとともに、行政としても、デジタル化に対応した消費者教育を推進するとともに、デジタル技術を活用した消費者相談の実施など、消費者のためのデジタル化を推進していく必要がある旨が示されている。さらに、「消費者教育としての、事業者による消費者への情報提供、商品サービスの開発・提供」も記されている。

おわりに

 法令で規定されている食品表示のルールは、食品表示法関係だけでも、食品表示基準、同基準の消費者庁通知およびQ&Aを合わせて、優に100万字を超えており、食品関連事業者は、これら膨大なルールを適切に遵守しなければならない。

 一方、消費者の食品表示に対するニーズは年々高まり、表示事項は増加の一途をたどってきた。「食品」だけではなく、現在は「食品」とともに「情報」を付加価値としてとらえた上で購入する時代となっている。その背景には、食品に関して、年々消費段階と生産・製造現場との距離が、地理的にも社会的にも遠くなってきたことも影響している。子供達が学校教育の一環で作物の生産や収穫を体験できたとしても、日常的には農畜水産業に触れる機会がない地域が多くなっているのが現状である。当然ながら、輸入品に関しては、さらに生産現場は遠いところにある。

 一方で、おいしいものを手軽に季節を問わず食べたいという消費者ニーズに対応して、事業者は常に新食品・新技術の開発努力を続けている。

 すなわち、昔は母(父)親が身近な田畑で収穫した食材を調理して家族に提供してきたが、現在は食品関連事業者がその役目を代わって果たしているとも言える。そうした意味で、消費者の母(父)親代わりをしている食品関連事業者は、家族(消費者)に対し単に食品を提供するだけではなく、家族が健全な食生活が送れるよう、食品表示のみならず上記の食生活に関連した有効な情報を提供することが期待されているとも言える。また一方で、消費者としても、そうした情報を通じて、食品の供給サイドの努力や課題を理解することが求められる。

 食品の供給サイドにおける食品表示のデジタル化の実現には、事業者・消費者の双方のテクノロジー整備が不可欠となる。

 消費者サイドにおいては、スマートフォンの保有率が9割近くの高水準となった一方、事業者サイドに関しては、中小企業が大半を占める実態から、情報管理システム整備に対する国などの支援や関係団体などの協力が求められている。

 今後、事業者の実行可能性に配慮した取り組みの下で、新たな情報伝達機能の活用促進を期待するとともに、各種の基本法に基づく基本理念に沿った「真の親代わりとして信頼のある企業」の発展につながることを願っている。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8678