図12に十勝地域における経営耕地面積規模別経営体数の割合を示したが、30〜50ヘクタールおよび50ヘクタール以上の大規模層の割合が高まっている。十勝地域の典型的な畑作経営は、てん菜とともに小麦、豆類、ばれいしょを輪作で生産する。それぞれの作物の投下労働時間を比較すると、図13に示したように移植栽培のてん菜は加工用ばれいしょの次に労働力を必要とする。一方、直播栽培のてん菜は、小麦の次に投下労働時間が短い。通常、労働力が増えないまま規模が拡大すれば、省力的な作物が選択され、その作物の面積は拡大するか少なくとも維持すると考えられるが、十勝地域のてん菜は異なる。
図14に十勝地域における直播率と一戸当たりのてん菜作付面積の推移を示した。てん菜の一戸当たり作付面積は、2021年までは拡大傾向にあったが同年の9.0ヘクタールをピークに縮小に転じた。一方で直播率は上昇を続ける。図14はデータの制約から移植栽培と直播栽培を行う経営を区別せずに示したが、図15には十勝地域のホクレン区域と限られた範囲ではあるが移植栽培と直播栽培を行う経営の一戸当たり作付面積を別々に示した。すると、移植栽培を行う経営よりも直播栽培を行う経営の作付面積が小さいという意外な結果が得られた。
この理由を明らかにするために、表3に十勝地域のB町における移植栽培を行う経営と直播栽培を行う経営の一戸当たりてん菜作付面積と経営面積を示した。05年に移植栽培を行う経営の一戸当たり面積は35.3ヘクタール、直播栽培を行う経営は同27.6ヘクタールと、直播栽培を行う経営の方が小規模である。この傾向は05〜25年を通じて見られ、経営面積の差が、移植栽培を行う経営よりも直播栽培を行う経営の一戸当たりてん菜作付面積が小さい理由と言える。
移植栽培を行う経営と直播栽培を行う経営の面積を比較すると、05年には直播経営は移植経営の78%の規模であったが、25年には91%の規模となり、その差は縮んでいる。一般的に小規模経営は、労働力が限られている場合が多く、こうした経営が先行して省力的な直播栽培を行ったと推測される。そして、町内全体で大規模化が進む中、労働力が増えずに大規模化した経営にも直播栽培が普及していったと考えられる。
次に経営面積に対するてん菜作付割合を見ると、移植栽培を行う経営では05年には24%であった割合が年々低下し、25年には20%となっている。この点については、移植栽培に不可欠な育苗用ハウスに収容できるペーパーポット冊数に限りがあるため、規模拡大に伴い、てん菜作付割合が低下したと考えられる。育苗施設の制約を受けず経営規模の変化にも柔軟に対応できる直播栽培は、てん菜を含む輪作体系を維持するには適した栽培方法と言える。
図14に示した22年以降の一戸当たりてん菜作付面積の低下については、政策的な影響があることも指摘された。てん菜の生産には、粗糖を輸入する精製糖企業などから徴収してした調整金や国費を財源として、交付金が支払われているが、原資となる調整金収支の関係から、糖価調整制度の持続的な運営を図るため、国内産糖交付金の交付対象数量が64万トンから55万トンへ、22〜26砂糖年度の間に減少することとなった(図16)。また、てん菜以外の需要のある作物への転換を支援する政策も行われており
5)、てん菜生産者のモチベーションに影響しているようであった。
一方で、てん菜は輪作体系を構築するための重要な作物の一つであることから、砂糖以外の新しい用途も検討されている。近年では、飼料としての利用に向けた取り組みが進められており
6)、さらに、てん菜から糖分を抽出した後の副産物である繊維分を原料とした飼料の販売も始まっている
(注4)。飼料自給率が低い日本において、てん菜を飼料として利用するこうした取り組みについても今後の動きが注視される。
(注4)詳細は、日本甜菜製糖株式会社によるプレスリリース「新たな乳牛用飼料「生パルプロールS」を2025年10月7日より試験販売開始」〈https://www.nitten.co.jp/dcms_media/other/news_20251029_AP.pdf〉参照。