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砂糖とエタノールで揺れ動くインドのサトウキビ産業(前編)

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最終更新日:2026年7月10日

砂糖とエタノールで揺れ動くインドのサトウキビ産業(前編)

2026年7月

調査情報部 伊澤 昌栄
玉井 明雄
峯岸 啓之(現:畜産振興部畜産流通課)

【要約】

 インドは、国内一次産業従事者の約2%に当たる5500万人以上のサトウキビ生産者と100万人以上の砂糖関連産業従事者を抱える世界第2位のサトウキビ生産国である。

 近年は、気候変動や病害により生産量が左右されているが、抵抗性品種への置き換えやICT(情報通信技術)の活用などにより、生産安定化を図ろうとしている。

 また、国や主産州による再生産可能な買い取り価格の勧告などの価格政策も行われていることから、生産者の作付意欲も高い。

はじめに

 砂糖は、飲食品だけでなく医薬品、化粧品などに利用されるほか、近年では、砂糖の原料の一つであるサトウキビがバイオエタノールなど燃料原料としても多く利用されている。

 GlobalData UK Ltd.による2026年3月時点の予測によると、2025/26砂糖年度(10月〜翌9月)の世界の砂糖生産量は、1億9391万トン(粗糖換算、前年度比2.4%増)とわずかな増加が見込まれている。また、同年度の世界の砂糖消費量は、1億8878万トン(同1.0%減)とわずかな減少が見込まれている。

 生産量は増加が見込まれているものの、近年の世界的な気象変動により、原料となるサトウキビの作況が変化して予測が変動することに加え、消費量も、サトウキビのエタノール原料向けの需要の増加により大きく変動するなど、世界の砂糖需給には大きな関心が寄せられている。

 2025/26年度における主な生産国の状況を見ると、世界第1位のブラジルは減産が見込まれる一方、同第2位のインドは増産が見込まれている。インドは主要生産国である一方、同第1位の消費国でもあり、その動向は世界の砂糖需給に少なからず影響を与えている。

 これらのことから、本稿では、前編でインドのサトウキビ生産、後編で砂糖需給およびこれに大きな影響を与える同国のエタノール生産とその流通状況について報告する。

 なお、本稿中の為替レートは、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年5月末日TTS相場の1インドルピー=1.83円を使用した。

1 インドのサトウキビ生産動向

(1)サトウキビはインドに欠かせない農作物

 インドでは、サトウキビが古代から何世紀にもわたり重要な農産物として生産され、現在では、ブラジルに次ぐ世界第2位の生産国、また、世界第1位の消費国として、世界の砂糖需給において重要な位置付けにある。その作況は、国内5500万人以上の生産者とその家族の生計に、また、100万人以上の製糖および関連産業従事者の雇用に大きな影響を与えている。サトウキビは、農村住民の連帯(農機具の共同所有など)や農業協同組合の形成など、地域活動にも大きな影響を及ぼしている(写真1)。
 
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(2)サトウキビ生産動向

ア 産地分布
 
インドにおいてサトウキビは、全国28州と8連邦直轄領のうち、熱帯地域に属する6州と亜熱帯地域に属する6州の合計12州で国内生産量の約98%が生産されている(図1)。北部のウッタル・プラデーシュ州(以下「UP州」という)が国内生産量の5割弱を占め、次に西部のマハラシュトラ州や南部のカルナータカ州が続き、上位3州で国内生産量の8割弱を占める。



 


イ 主な作型
 
熱帯原産のサトウキビは、萌芽期が26〜33℃程度、生長期は30〜34℃程度が適温とされており、生長期には大量の水を必要とする。

 国土の広いインドは、北部が亜熱帯、南部が熱帯気候と二つの気候帯にまたがっている。また、季節は高温になる暑期(3月〜5月)、降水量が多い雨季(6月〜10月)、比較的気温が低く乾燥した乾季(11月〜翌2月)の三つに分かれている。このため、インドでは、サトウキビの生育ステージに合わせ、1)春作型(北部および西部)、2)秋作型(北部および西部)、3)Eksali作型(南部)、4)Adsali作型(南部)−の4作型に分かれており、栽培期間は長期栽培のAdsali作型以外は12カ月以内となっている(表1)。10アール当たり収量は、長期栽培で積算気温が十分得られるAdsali作型が17トン程度で最も多く、次いで春作型および秋作型が12トン程度、Eksali作型が10トン程度となっている。
 



 


ウ 主な品種
 
インドで生産される代表的なサトウキビ品種には、UP州などを中心に栽培される「Co 0238」や、マハラシュトラ州などを中心に栽培される「Co 86032」などがある。両品種とも、高収量で搾汁率が高い。2025年9月に連邦政府がサトウキビ搾汁液などから直接エタノールを生産することを解禁したことから、バイオエタノール向け原料としても多く生産されることが見込まれる(写真2、表2)。








 2009年に品種登録されたCo 0238は、優れた品種特性からUP州などのインド北部で既存品種からの転換が進み、同地域で約半数の生産者により栽培されている。

 品種登録当初は、赤腐病(注1)の耐病性が高いとされてきたが、近年は耐病性が低下しており、同品種が主力のUP州では、同病による収量低下が問題となっている。同州では、ドローンによる農薬散布とセットで他品種への置き換えプログラムが実施されており、2020/21年度から24/25年度にかけて1238万ヘクタールを置き換え、この期間におけるCo 0238の作付け比率は、87%から44%まで大幅に低下した(図2)。
 

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 品種の置き換えが進んできているUP州であるが、25年2月、同州は24/25年度の圧搾期に向けた品種の検討や作付面積の増加に向けた会議を開催し、サトウキビ生産者や製糖事業者に対し、Co 0238から他品種への置き換えの必要性を引き続き訴えた。

 (注1)糸状菌であるColletotrichum falcatumが、害虫の食害跡などから侵入することで発生する病害。罹病すると茎内部が赤変し、病害の進行により枯死する。罹病株は抜根して圃場外で焼却処分する必要がある。有効な治療剤がないため、抵抗性品種や健全苗の利用を行うとともに、連作を避ける必要がある。

エ 生産量の推移
 
サトウキビ生産量を見ると、2024/25年度は、前年度に比べ収穫面積がやや減少したことに加え、干ばつや赤腐病の発生で3億8985万トン(前年度比12.1%減)と前年度からかなり大きく減少した。25/26年度は、カルナータカ州およびマハラシュトラ州の一部生産者がこれまでの干ばつなどを受けて綿花や豆類に転作する動きがあるものの、 モンスーンにより適度な雨量が確保できたことから、2026年5月時点の収穫面積は526万ヘクタール(前年度比0.3%増)と前年度並みが見込まれ、生産量は4億938万トン(前年度比5.0%増)とやや増加すると見込んでいる(表3)。




 気象の影響を受けやすいサトウキビ生産においては、安定生産のためにICT(情報通信技術)が活用されている。製糖企業の業界団体であるインド砂糖・バイオエネルギー製造業者協会(ISMA)などは、11年からGPS(全地球測位システム)を活用したサトウキビ作付面積調査を実施している。同調査で得られたデータは、製糖工場での原料調達見込量の推計のほか、生産者に対しては、サトウキビの葉色判定による圃場の土壌肥料量の状況を提供している。また、インドサトウキビ研究所(ISRI)などの政府系機関も、適正施肥やかん水技術向上のためのアプリ開発や普及を行っている。

 これらの技術をより多くの生産者が活用できるようになることで、今まで以上の収量確保が期待されている。

オ UP州の生産状況
 
インド国内産地の生産状況として、国内生産量の約5割を占める最大の産地であるUP州の状況を示す。

 同州はネパールに南接し、インド北部の亜熱帯地域に位置する。同州は、インド・ガンジス平野の沖積土壌を生かした農産物生産が盛んで、サトウキビ、小麦およびばれいしょの国内最大の産地となっている(図3)。同州の農業は、大きく分けて冬作、雨季作(夏)および乾季作(冬)の3作型で生産が行われており、サトウキビは、春作型および秋作型に当たる雨季作の生産が中心となっている(表4、写真3)。






 
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 UP州のサトウキビ生産を見ると、サトウキビ価格の上昇を受けて2022/23年度まで増加した作付面積は、23/24年度にはわずかに減少したものの、24/25年度は増加に転じて全国の作付面積の50%に当たる272万ヘクタールとなった(図4)。また、生産量は、降雨に恵まれた22/23年度から一転し、23/24年度は干ばつと赤腐病の発生でやや減少し、24/25年度はモンスーンで降雨に恵まれたことから増加に転じ、全国の生産量の48.6%に当たる2億2080万トンとなった(図5)。亜熱帯気候の同州(平均気温26℃程度)は、他の主産地である西部のマハラシュトラ州(同27℃程度)、南部のカルナータカ州(同29℃程度)よりも季節による気温差があり、平均気温が低いため、単収は低い傾向にある。23/24年度はマハラシュトラ州およびカルナータカ州が干ばつにより不作傾向となった中、UP州は他州より降雨があったため、単収はこれらの州より高い10アール当たり8.1トンとなった。しかし、24/25年度は、これらの州では雨量が確保できたことで生育が比較的順調に推移したため、再び同州の単収を上回った(図6)。









 

 UP州は、主要生産品目であるサトウキビの生産振興対策として、前述の品種置き換えやドローン防除による収量安定化のほか、栽培技術講習や最新農機実演会、導入後の訓練などの技術指導も行っている。生産者手取り向上対策として、後述する州独自の最低買い取り価格である州勧告価格(State Advised Price:SAP)設定のほか、製糖企業から生産者へのサトウキビ買い取り代金支払い期限の厳格化を行っている。州政府は17年以降、製糖企業がサトウキビを受け入れた日から14日以内に生産者への代金支払いを行わなかった場合、製糖企業に制裁を科している。同時に製糖企業への代金回収の実施や、悪質な不払いと判断した場合には刑事責任を問うとしている。これらにより生産者は速やかな手取り確保ができ、毎年度引き上げられるSAPにより、高い作付け意欲を維持できている。

 また、UP州政府は25年4月、州内生産者および製糖企業に対し、「スマートサトウキビ農家ERP(注2)ポータル(e−Ganna)」というアプリを開発、公表した。同アプリの対象利用者は、同州政府に生産者登録している者であり、スマートフォンにダウンロードして使用する。同州政府によると、同アプリはダウンロードおよび利用料が無料で、サトウキビ出荷や販売代金受領などに付帯する作業を、いつでもどこでもスマートフォンで処理することができ、生産者は栽培作業に集中できるとしている(表5)。

 (注2)Enterprise Resource Planning。さまざまな情報などを一括管理して有効活用する考え方。



 
 

カ サトウキビ生産の課題
 
引き続き人口が増加傾向にあるインドでは、サトウキビはもちろん、他の作物生産を含む農畜産業、さらに工業など他産業でも土地や水資源需要が増加していることから、生産性を低下させずにこれら他産業などと共存することが求められている。ISRIは、2015年に公表した「Vision2050」で、1)サトウキビの品種改良、2)土壌および水管理、3)新しい栽培管理技術−などが必要とした。特に、水はサトウキビ生産にとって重要な資源と位置付けられており、灌漑施設の整備と利用効率の向上が必要とされている(写真4)。この課題に対してマハラシュトラ州では、点滴灌漑を採用することで、サトウキビ生産の水使用量を慣行栽培比で30〜40%削減できたとしている。




 


 インドでは、サトウキビ収穫の機械化が進んでおらず、地域住民などの季節雇用による手刈り収穫に頼る生産者が多いことから、収穫にかかる時間が長く、人件費が高い傾向にある。効率的な収穫と人件費抑制のためには、収穫機の導入が求められる。資金力のある大規模生産者であれば収穫機の個人所有が可能であるが、一般的な中小規模生産者は資金力に乏しいため、収穫機の導入は難しい。このため、農村住民全体や協同組合組織での共同所有および運用により、産地全体で機械化体系を構築することが求められる。

コラム インドの歴史・文化と砂糖

1 砂糖製造はインドが発祥
 2400年ほど前のインド北部が起源とされているサトウキビによる砂糖製造は、サトウキビ搾汁液を直火で煮詰めて結晶化させ、貯蔵性の高い「ジャグリー(Jaggery)」(黒糖)を製造したことから始まった(コラム−写真1)。インドでは、後述する伝統医学の「アーユルヴェーダ(Ayurveda)」や宗教儀式などでも多く用いられてきた。その後、ジャグリーはインドから中国や中東、地中海地域などに伝わった。




 インドからこれらの国や地域に伝わったジャグリーは、さらに欧州など世界中に広がった。その後、18世紀後半の産業革命により、均一で精製度が高い製糖技術が開発され、同世紀に英国がインドを植民地化すると、インド国内に英国資本の大規模製糖工場が設置され、19世紀には製糖業が国内で最も有力な産業に成長した。製糖業が成長する中でも、インドの食と文化に密接したジャグリーは、地域の生産者などにより、安定して製造されてきた。

 なお、砂糖(Sugar)の語源は、サンスクリット語で「結晶化した甘味物」を意味する「Sharkara(シャルカラ)」とされている。

 2 宗教儀式とジャグリー
 
前述の通り、インドでジャグリーは宗教儀式などに用いられてきた。代表的なものとしては、冬至の収穫祭である「マカラ サンクラーンティ(Makar Sankranti)」(1月14日前後に実施)が挙げられる。この祭事では、ジャグリーを重要な供物として神々に捧げるとともに、ジャグリーとごまを使った菓子「ティル・グッド(Til-Gud)」を家族や友人とともに食べる習慣がある。また、この祭事では、貧しい人々へジャグリーを寄付することが重要視されている(コラム−写真2)。




 ジャグリーは、砂糖(精製糖)よりもミネラルなどが多く含まれることから、インドでは体によい食べ物として、宗教儀式などに限らず、普段から多く食べられており、アーユルヴェーダでも体質改善のための食べ物として重視されている。

3 アーユルヴェーダとジャグリー
(1)アーユルヴェーダとは

 サンスクリット語で「生命科学」を示すアーユルヴェーダ(Ayurveda)は、インド発祥で約5000年の歴史を持つ世界最古の伝統医学である。予防医学を重視するアーユルヴェーダでは、人間の体質を形成する要素を、1)風、2)火、3)水−に大別しており、これらのバランスをいかに整えるかが重視されている。

(2)多汗などを鎮めるジャグリー
 アーユルヴェーダでは、多汗やじんましん、胸やけを鎮めるには、休息を十分とり、消化の良い甘いものを摂取すると良いといわれている。これに適した食材として、ジャグリーが挙げられている。ジャグリーは、日本の黒糖と同じく、サトウキビの搾汁液を4段階に分けて煮詰めたものを冷やし固めたものである。煮詰める温度が低いため、黒糖よりも水分含量が高いとされている。

  ジャグリーで多汗などを鎮めるには、そのまま食べるのはもちろん、ミルクに茶葉とスパイスを入れて煮込んだチャイに入れたり、さまざまな料理の味付けに使用したりしている(砂糖には疲労回復や精神安定にも効果があるといわれる)。また、サトウキビの搾汁液も広く飲まれている(コラム−写真3)。





 

(3)サトウキビ価格政策

 サトウキビ産業は、さまざまな関連産業の収益や雇用機会を生み出すなど、農村経済を支える重要な要素であり、国や州政府ともに、さまざまな政策による支援を行っている。ここでは、サトウキビ政策について触れるとともに、国(連邦政府)の定めるサトウキビの買い取り価格の下限である公正収益価格(Fair and Remunerative Price:FRP)と州独自の最低買い取り価格である州勧告価格(State Advised Price:SAP)の二つの代表的な価格政策について取り上げる。

ア サトウキビ政策
 
インドでは、1955年に制定された必需品法(ECA)で、国民生活に欠かせないサトウキビを含む砂糖、穀物などの生産、流通、供給を規制し、政府が最低支持価格(MSP:Minimum Support Price)を定めることとした。併せて同法では、製糖企業がサトウキビ生産者に対して再生産可能な販売代金を支払うよう、FRPを設定することを定めた。その後、66年に制定されたサトウキビ管理命令では、製糖企業がFRPを買い取り価格の指標にすることを義務化したほか、産地内の製糖企業が、その産地内生産のサトウキビを優先的に購入できるようにすることなどが定められた(表6)。


 


イ FRP
 
インド政府(内閣経済委員会〈CCEA〉)は、農業費用・価格委員会(CACP)の勧告に基づき、毎砂糖年度(10月〜翌9月)、サトウキビ破砕期の前までにFRPを設定する。設定されたFRPは、砂糖年度終了まで有効であり、サトウキビを受け入れる製糖企業が買い取り価格の指標としており、これを下回る価格では取引することができない。

 FRPは、1)サトウキビ生産コスト、2)他品目との収益比較、3)国内外の砂糖販売価格、4)国内砂糖需給の状況−などを勘案した上で算定される。加えて、糖回収率が基本糖回収率(2025/26年度は10.25%)を上回る場合は、割増金の加算も定められている。25/26年度のFRPを見ると、1キンタル(注3)当たり365ルピー(668円〈1キログラム当たり6.68円〉)、割増金は糖回収率0.1%の増加につき同3.46ルピー(6円)だった。なお、糖回収率が9.5%を下回った場合には、FRPは減額される。

 昨今は物価上昇などにより生産コストが上がっていることから、FRPは毎年度上がっており、15/16年の230ルピー(421円)から24/25年度には340ルピー(622円)となり、その後も上昇し続けている。CCEAは2026年5月、26/27年度のFRPを前年度より10ルピー(18円)高い、1キンタル当たり365ルピーにすると公表した(図7)
 

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 現地報道によると、ISMAは、「増額されたFRPは生産者の収入を大幅に増加させ、全国で約5500万人のサトウキビ生産者に恩恵をもたらす。この増額により、生産者全体で追加収入は1兆5000億(2兆7450億円)〜2兆ルピー(3兆6600億円)を超えると見込まれており、26/27年度でサトウキビの総支払額は約1兆3000億ルピー(2兆3790億円)に達する見込みである。これにより農村経済が強く刺激され、特にサトウキビ生産が主な生計手段となっている地域では、農村経済がより強化される」としている。

 多くの生産者はこれを歓迎しているが、一部では、「この引き上げでは、急激に上昇する栽培、収穫、輸送費用を相殺するには不十分だ」との声も上がっている。一方、製糖企業側は、「FRP増額の決定は歓迎するが、エタノール価格と変わらない砂糖の最低販売価格が、サトウキビのコスト上昇により製糖企業の利益率を圧迫している」と主張している。

 (注3)100キログラム。

ウ SAP
 
SAPは、主産地であるUP州、パンジャーブ州、ハリヤナ州およびウッタラクハンド州が独自に設定している州勧告価格であり、FRPよりも価格水準が高いといわれている。製糖企業は生産者に対し、FRPとSAPを比較して高い方を買い取り価格の指標にしなければならないとされているため、SAPを設定している4州の製糖企業は、所在する州のSAPを買い取り価格の指標としている。

 2015/16から25/26年度までのUP州のSAPを見ると、16/17年度はFRPより1キンタル当たり75ルピー(137円)高かった。直近の25/26年も、FRPより同35ルピー(64円)高かった(図8)。FRPより高いSAPの価格水準は、主産地州生産者の作付け意欲を押し上げている。



 

 FRPより高いSAPを買取価格の指標にすることに関し、パンジャブ州は協同組合系製糖工場に対してはFRPを超えた差額のすべて、民間製糖企業に対しては同差額の3分の2を州政府が補助している。また、ハリヤナ州では製糖企業が受け入れたサトウキビの糖回収率により、同企業に対して補助金を交付している。これに対し、UP州およびウッタラクハンド州では州政府からの補助はなく、同差額はすべて製糖企業の負担となる。

 後編では、サトウキビを原料とする砂糖の生産および需給と、近年増加しているサトウキビ由来のエタノール需給について報告する。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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