砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 調査報告 > さとうきび > 人手不足を乗り越え、製糖業の未来へ
〜JAおきなわ製糖工場を支える外国人労働者の力〜

人手不足を乗り越え、製糖業の未来へ
〜JAおきなわ製糖工場を支える外国人労働者の力〜

印刷ページ

最終更新日:2026年8月10日

人手不足を乗り越え、製糖業の未来へ
〜JAおきなわ製糖工場を支える外国人労働者の力〜

2026年8月

那覇事務所

【要約】

 全国的な少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、沖縄県農業協同組合では、製糖工場の安定操業を維持するため、特定技能制度を活用した外国人労働者の受け入れを進めている。沖縄県農業協同組合中央会と連携した直接雇用により、人材確保とコストの両面で改善を図るとともに、教育や生活支援、地域との交流を通じ、安心して働ける環境づくりに取り組んでいる。現場では、外国人労働者が製糖工場を支える重要な戦力となり、正職員の負担軽減や操業の安定化にも大きく貢献している。一方で、円安や人材獲得競争、言葉の壁などの問題もあり、自動化や中核人材の育成を進めながら、地域産業を支える持続可能な体制構築を目指している。

はじめに

 日本では少子高齢化の進行により、生産年齢人口(15〜64歳)が平成7年に、総人口も平成22年をピークに減少傾向で推移し、従来の人口増加を基盤とした経済成長が崩れつつある(図1)。そのため、多くの産業で人材確保が難しくなり、大企業は賃上げや福利厚生の充実などによって人材確保を図る動きがみられる。一方で、中小企業や地方企業では、待遇の改善を進めてはいるものの、その経営体力には限りがあり、大企業との人材獲得競争に苦戦するケースも多く見られる。

 沖縄県は、全国でも比較的若い人口構成となっており、出生率も高いものの、若年層の進学・就職による県外流出や、観光業中心の産業構造、離島地域特有の事情から、慢性的な人材不足が顕在化している。

 沖縄県の基幹産業の一つである農業も例外ではなく、農業産出額のうち大きな割合を占めるサトウキビでは、生産者の高齢化や収穫期の人手不足が深刻な問題となっている。

 特に、離島地域である宮古島市や石垣市などでは、観光需要の増加により雇用機会は拡大している一方、住宅不足や物価上昇の影響から労働者の確保が難しく、製糖期に大量の労働力が必要となる製糖工場では、外国人労働者が重要な役割を果たしている。

 こうした背景の下、沖縄県農業協同組合(以下「JAおきなわ」という)が進めている外国人労働者の受け入れは、地域産業の持続可能性を左右する重要な取り組みとなっている。

 本稿では、JAおきなわの取り組みについて、現場への取材を基に、製糖工場における外国人労働者の雇用実態とその意義、課題、そして今後の展望を探る。

 なお、今回の現場取材に当たっては、JAおきなわが指定管理を行う工場のうち、操業期間中に工場担当者だけでなく外国人労働者への取材が可能であった伊江製糖工場にご協力いただいた。
 
1

1 伊江島の概要

(1)地理、気候および農業

 伊江島は、沖縄本島北部の本部(もと ぶ)半島から北西約9キロメートルに位置し(図2)、八つの集落からなる1島1村(伊江村)の離島である。面積は22.77平方キロメートル、人口は4175人(令和8年5月末現在)で、島の中央には標高172メートルの城山(通称「伊江島タッチュー」)がそびえ、島のシンボルとなっている。

 亜熱帯海洋性気候に属し、年間を通じて温暖であることから、農業に適した自然条件を有している。かつては水資源の確保が課題であったが、地下ダムやため池などの整備により農業用水が確保され、安定した営農が可能となった。

 島の農業は、サトウキビを中心に、葉たばこ、花卉(か き)、島らっきょう、冬瓜、ゴーヤなどが栽培されている。また、肉用牛の繁殖や小麦・大麦の生産なども行われており、多様な農業が展開されている。中でもサトウキビは、島を代表する農作物の一つであり、その生産を支える製糖工場は地域農業に欠かせない存在となっている(表1、図3)。






 
2

(2)サトウキビ生産

 伊江島におけるサトウキビの収穫面積の推移を見ると、豊作であった平成28/29年期(年を跨ぐ表記については10月〜翌9月、以下同じ)を除き、令和4/5年期まで緩やかな右肩上がりで推移し、近年は90ヘクタール程度で横ばいとなっている(図4)。生産量についても、収穫面積同様、平成28/29年期を除けば、夏植えの増加に伴い、概ね右肩上がりに推移している。一方、生産農家戸数は、年によって波はあるものの、全体的に緩やかな減少傾向にある(図5)。



 
3

コラム 地理的表示(GI)保護制度に登録された「沖縄黒糖」

 「沖縄黒糖」は、沖縄県内の離島で生産されるサトウキビを原料とした伝統的な黒糖であり、令和7年11月に地理的表示(GI)保護制度(以下「GI制度」という)に登録された。GI制度は、地域特有の自然条件や伝統的な製法によって生み出された農林水産物の名称を保護する仕組みであり、「沖縄黒糖」はその品質や地域性が高く評価されたことを意味している。

 「沖縄黒糖」の最大の特徴は、原料となるサトウキビの搾り汁をそのまま煮詰めて作られる点にある。このため、サトウキビ本来の風味やカルシウム・カリウムなどのミネラルが残り、濃厚な甘みと豊かな香りを楽しむことができ、昔から沖縄の食文化に欠かせない食品として親しまれてきた。

  GI制度の登録対象となった「沖縄黒糖」は、伊平屋島、伊是名島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、与那国島、波照間島の八つの離島で生産されている(コラム−図)。島ごとに気候や土壌条件が異なるため、同じ黒糖であっても風味や色合いに個性があり、産地ごとの違いを楽しめることも魅力の一つである。

  近年、沖縄の離島では人口減少や高齢化が進み、サトウキビ栽培や黒糖製造の担い手不足が問題となっている。そのような中、GI制度への登録は、「沖縄黒糖」のブランド価値向上や販路拡大につながるだけでなく、地域産業の維持・発展にも大きな役割を果たしている。「沖縄黒糖」は、離島の自然や文化、伝統技術を象徴する特産品として、今後もその魅力と価値が国内外へ広く発信され、持続可能な地域づくりにつながることが期待されている。



 

2 JAおきなわの製糖工場を支える人材確保の現状と課題

(1)製糖工場における人材確保の現状

 沖縄県内の離島に位置する製糖工場では、近年、人材確保を巡る環境が大きく変化している。背景には、冒頭で述べた労働力不足の深刻化に加え、外国人労働者に関する制度の厳格化と人件費の高騰がある。

 製糖工場は、サトウキビの収穫期に合わせて毎年12月から翌3月ごろまでの限られた期間に24時間体制で操業するため、短期間に多くの労働力を確保しなければならない。しかし、離島地域では、人口規模そのものが小さく、高齢化や若年層の島外流出が進んでいることから、地域内だけで必要な人員を確保することは年々難しくなっている。

 これまでJAおきなわでは、島内外から日本人の季節工員を募集するとともに、派遣会社を活用することで、操業に必要な人員を確保してきた。しかし、近年は派遣料金の上昇や人材確保の不安定さから、従来の方法だけでは安定操業を維持することが難しくなってきた。

(2)離島の製糖工場が抱える課題と深刻化する人材獲得競争

 JAおきなわが運営管理する製糖工場は、分蜜糖工場1、含蜜糖工場5の計6工場であるが、いずれも小規模離島に立地している。

 そのような中、近年は日本全体で労働力不足が深刻化しており、建設業や物流業、観光業などでも人材獲得競争が激化し、より高い賃金や働きやすい条件を提示する企業が増えてきている。12月から翌3月ごろまでという短期間の勤務に加え、昼夜交代制を伴う製糖工場は、他産業との人材獲得競争において厳しい状況に置かれるようになった。

 こうした状況は、令和6/7年期に一層顕著となった。働き方改革による時間外労働の上限規制への対応により、これまで以上に多くの人員を確保する必要が生じたためである。

 製糖工場は地域にとって重要な施設であり、操業が停止すれば、サトウキビの品質低下や農家経営への影響だけでなく、地域経済全体にも大きな支障を及ぼしかねないため、人材不足は単なる雇用問題ではなく、地域経済の持続性をも左右する重要な問題となっている。

 こうした経験を通じて、JAおきなわでは「従来と同じ人材確保の方法では、今後の安定操業は難しい」という認識が強まり、新たな人材確保策の検討が本格的に進められることとなった。

3 外国人労働者受け入れへの挑戦

(1)JAグループだから実現できた特定技能制度を活用した新たな人材確保

 人材確保が年々難しくなる中、JAおきなわが新たな解決策として採用したのが、特定技能制度を活用した外国人労働者の直接雇用である。

 特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野において、一定の技能と日本語能力を有する外国人の就労を認める制度である。JAおきなわでは、沖縄県農業協同組合中央会(以下「中央会」という)を登録支援機関として活用し、派遣会社を介さずに外国人労働者を直接雇用する体制を構築した。これにより、派遣会社に支払う委託費などの抑制と安定した人材確保の両立を目指している。

 手続きとしては、各製糖工場が必要人数や勤務条件などを取りまとめ、JAおきなわ(さとうきび振興部)を通じて中央会へ報告することから始まる。中央会はインドネシアの政府認定送出機関と連携し、候補者の募集や外国人労働者の渡航のサポートまで一連の業務を担う。

 来日後は各製糖工場が受け入れや生活環境の整備を行い、就労開始後も中央会が定期的な面談を実施し、仕事や生活面を継続的に支援している。また、面談内容は必要に応じてさとうきび振興部へ共有され、問題があれば迅速な改善につなげる体制が整備されている(図6)。

 このように採用して終わりではなく、就労開始後も継続的にフォローする仕組みが構築されている点は、JAグループならではの特徴と言える。令和7/8年期には、138名の特定技能外国人(農業および飲食料品製造)を採用したほか、農閑期と農繁期の違いを活用した他県企業との「特定技能外国人リレー採用」により28名を受け入れた(注)。現在では、JAおきなわの製糖工場における全労働力の約3割強を外国人労働者が占めるほどになっている(図7)。

 (注)JAおきなわ栗国製糖工場のみの人数



 
4

(2)製糖工場を支える外国人労働者

 製糖工場において、外国人労働者は、搬入されたサトウキビから葉や異物を取り除く脱葉作業などを行う前処理施設や、製造された黒糖の袋詰め・箱詰めを行う製品詰め場で活躍している(写真1)。いずれも製糖工場の操業には欠かせない重要な工程であり、作業は24時間体制で行われる。

 勤務形態は4勤2休を基本とした交代制で、日勤(午前8時から午後8時)と夜勤(午後8時から翌朝8時)を担当する。雇用期間は、製糖期に合わせた12月から翌3月までを基本としており、生産状況に応じて多少前後する。

 賃金は、日本人労働者と差異はなく、工場によっては食費手当なども支給される。外国人であることを理由に待遇を区別することはなく、同一労働同一賃金の考え方に基づいた雇用が行われている。
 
5

(3)日本人職員との連携による現場運営

 製糖工場では、日本人労働者と外国人労働者がそれぞれの役割を分担しながら操業を支えている。

 日本人の季節工員には、長年勤務するリピーターも多く、機械設備や前処理・製品詰め場のリーダーとして現場全体を統括している。一方、外国人労働者はリーダーの指示の下、各工程の業務に従事し、役割を明確に分担することで、安全性を確保しながら効率的な操業を実現している。

 また、JAおきなわでは、能力や経験に応じて責任ある仕事を任せる方針も掲げており、将来的には期間雇用から周年雇用へ移行し、各種資格や免許の取得支援をしながら工場運営の中核人材へと育成する構想も描いている。このように外国人労働者を単なる「人手」として捉えるのではなく、将来の製糖業を支える重要な人材として育成しようとしている点に、JAおきなわの受け入れ方針の特徴が表れている。

3 安心して働ける職場づくりと取り組み

 外国人労働者を受け入れる上で重要なのは、人員の確保だけではなく、言葉や文化の違いがある中でも、安心して働き、能力を十分に発揮できる環境を整えることである。JAおきなわでは、受け入れ初年度から「特別扱い」するのではなく、「ともに働く仲間」として迎え入れる姿勢を重視し、さまざまな支援体制を構築している。

(1)来日前から始まる準備
 
これまでに受け入れた外国人労働者は、インドネシア出身者が中心である。来日前に現地の日本語学校で学び、日本語能力試験など特定技能制度が求める基準を満たしているため、日常会話や基本的な業務指示は理解できる水準にある。

 そのため、来日後に語学研修などをすることはなく、工場の概要や安全管理、勤務上のルールなどを説明するオリエンテーションを実施し、その後は現場での実践を通じて仕事を習得していく。

(2)現場で育てるOJT
 
製糖工場の仕事は、機械設備や工程が多く、現場で経験を積みながら知識や技能を習得する必要があるため、教育は正職員や経験豊富な季節工員が中心となって行われている。

 簡単な作業から始め、段階的に工程を増やし、分からない点はその場で説明し、実践を重ねながら技術を身に付ける体制となっている。短期間の操業であっても、「現場全体で人を育てる」という意識を浸透させていることが、JAおきなわの大きな特徴である。

(3)言葉の壁を乗り越える工夫
 
外国人労働者の受け入れにおいて、「言葉の壁」が最も大きな問題の一つとされる。特に製糖工場では、大型機械が稼働しており、安全管理に関わる指示を正確に伝えなければならない。

 JAおきなわでは、危険箇所や立ち入り禁止区域、注意事項などについて、日本語だけでなくインドネシア語でも掲示し、作業現場に入った際、誰もが視覚的に理解できるよう、多言語表示を積極的に取り入れている(写真2)。



 

 さらに、日本語能力の高い外国人労働者を特定技能外国人の「リーダー」として配置し、日本人職員の説明を他の外国人労働者へ母国語で伝える橋渡しの役割を担ってもらい、情報共有を円滑にしている。この仕組みは、安全管理だけでなく、日常のコミュニケーションにも役立っており、仕事や生活面で困ったことも、リーダーから日本人職員へ伝えることで、双方の意思疎通がスムーズに行われている。

(4)生活面を支える受け入れ体制
 
外国人労働者が安心して働くためには、生活面の支援も重要であり、JAおきなわでは、各工場が自治体の住居などを借り上げ、家賃を給与から控除する仕組みを採用している(写真3)。今回の取材対象地域では、個室型のバス・トイレ付きのアパートが用意され、プライバシーが確保されている点は、労働者の満足度向上に寄与していると考えられる。近隣にはコンビニエンスストアやスーパーも存在し、生活インフラも整っている。



 

 また、社会保険への加入や行政手続きもJAおきなわなどが支援し、必要な医療が受けられるよう整備している。加えて、離島では、住民向け割引制度が利用できる「島人カード」の取得手続きも支援することで、日常生活での負担軽減につなげている。今回取材を行った伊江島においては、島内に居住している外国人が生活面の手助けをしてくれることもあるという。

 さらに各製糖工場では、島内イベントへの参加などを通じて地域との交流を進めており、こうした交流は、外国人労働者にとって異国での生活を支える大きな安心感となるだけでなく、地域住民にとっても異文化への理解を深める好機ともなっている。

 このことから、仕事だけではなく、「安心して暮らせる環境づくり」にも力を入れていることがうかがえる。

(5)外国人労働者の声―期待と現実―
 
今回取材したマワル氏とアユ氏は、製糖工場での仕事や島での暮らしについて、「同僚が優しく、働きやすい」、「仲間と一緒なので楽しい」と笑顔で話してくれた(写真4、5)。また、生活面では、母国の食材を取り寄せて自炊を楽しむほか、空手教室へ通うなど、地域での生活も積極的に楽しんでいるという。

 また、将来について尋ねると、「日本で働き続けたい」という思いと、「技能を身につけ、母国で活かしたい」という両方の夢が語られ、JAおきなわが目指す「ともに働く仲間」という考え方が、現場に着実に根付いていることがうかがえた。

 彼女らは、製糖期終了後、大分県でトマト栽培に従事する予定となっている。これは、農繁期の異なる地域をつなぐ「特定技能外国人リレー採用」の取り組みによるものであり、外国人労働者の安定した就労機会の確保や周年雇用の実現にもつながっている。
 


 
6

4 外国人労働者とともに築く製糖業の未来 ―成果と今後の展望―

(1)安定操業を支えた人材確保

 外国人労働者の受け入れは、JAおきなわの製糖工場に大きな成果をもたらした。その最大の成果は、製糖開始から必要な人員を確保し、安定した操業体制を実現できたことである。

 令和6/7年期は、製糖開始後も十分な人員が確保できず、正職員が長時間の残業を余儀なくされる状況が続いた。製糖工場は24時間体制で稼働するため、一部の職員に負担が集中し、安全面や健康面への影響も懸念されていた。

 しかし、7/8年期は、特定技能外国人の採用により操業開始時から必要な人員を配置できたことで、正職員の負担が大幅に軽減された。

 これは、単に労働時間が短くなったというだけではなく、十分な人員配置が可能になったことで、各工程に余裕が生まれ、安全確認や品質管理にもより多くの時間を割けるようになったことを意味し、結果として、製糖工場全体の安定した操業につながった。

(2)「まじめによく働く」―現場からの高い評価―

 担当者によれば、多くの外国人労働者は目的意識が強く、勤務態度は真面目で責任感があるという。決められた時間を守り、指示された作業にも前向きに取り組む姿勢は、多くの工場で高く評価されている。

 操業期間は短いが、経験を積むことで仕事の理解も深まり、作業効率は着実に向上していく。そのため、各製糖工場では、「来年もリピーターとして戻ってきてもらえれば、非常に大きな戦力になる」と期待を寄せている。

 経験者が増えれば教育時間の短縮につながり、日本人職員の負担もさらに軽くなるため、こうした好循環を生み出すことが、今後の製糖工場運営における重要なポイントとなる。 

(3)持続可能な受け入れに向けた課題

 成果が見え始めた一方で、今後解決すべき事項も少なくない。まず挙げられるのは、円安傾向による日本で働く魅力の低下である。多くの外国人労働者は、家族への仕送りを目的の一つとして来日しているため、円安傾向が続くと仕送り額が減り、将来的には、より条件の良い国へ人材が流出する可能性もある。

 また、製糖工場では、観光業や建設業など他産業との人材獲得競争が続く中で、賃上げが難しいために人材の確保に向けた別の対策が課題となっている。さらに、外国人労働者の受け入れまでには、在留資格取得までに時間を要することや言葉の壁があるなど、制度運用上の課題も依然として残されている。

 他方、外国人労働者同士が、SNS(インターネット交流サイト)でそれぞれの働く工場の働きやすさなど待遇や職場環境に関する情報を共有していることも分かってきた。今後は、工場ごとの住宅環境や各種手当などに大きな差が生じないよう、待遇の標準化も検討されている。外国人労働者に選ばれる職場づくりが、安定操業の実現には欠かせないとの認識が現場に広がっている。

 現在、JAおきなわでは、住環境や福利厚生の充実、地域との交流機会の創出などを通じ、「また来年も働きたい」と思える環境づくりを進めている。

(4)製糖業の未来を見据えて

 JAおきなわでは、外国人労働者を無制限に増やしていく方針ではなく、今後は製造ラインの自動化や省力化設備の導入を進めることで必要人員を抑制し、一人ひとりが高度な役割を担える体制づくりを目指している。

 その中で、能力の高い外国人労働者については、期間雇用から周年雇用への移行も視野に入れ、フォークリフトやボイラーなどに関する資格取得を支援しながら、製糖工場の中核を担う人材として長期的に育成していくことを今後の大きな目標としている。

 また、燃料費や資材価格、人件費の高騰が続く中、製糖工場の安定的な運営には行政の支援も必要である。機械設備の更新や修繕、人件費上昇に対する行政の支援制度の充実は、地域農業を支える製糖工場の運営をさらに持続可能なものとすることが期待される。

 JAおきなわの採用担当者は、外国人労働者への感謝の言葉を次のように語っている。

 「言葉や文化、生活習慣が異なる中でも、真面目に勤務していただき、無事に製糖期を終えることができました。本当に感謝しています。ぜひ来期も戻ってきていただき、各製糖工場で再び一緒に働けることを楽しみにしています。」

 この言葉には、外国人労働者を単なる労働力としてではなく、ともに製糖業を支える仲間として迎え入れている現場の思いが込められている。

おわりに

 全国的な労働力不足が進む中、製糖業は大きな転換期を迎えている。とりわけ沖縄の離島では、製糖工場の安定操業は地域の農業と暮らしを支える生命線であり、人材確保の解消は喫緊の課題である。

 JAおきなわが進める特定技能外国人の受け入れは、単なる人手不足対策にとどまらない。直接雇用による安定した人材確保、丁寧な教育・生活支援、地域との共生、さらには将来を見据えた人材育成へと発展しつつある。

 一方で、円安傾向や人材獲得競争、自動化への対応など、新たな課題も見えてきた。これらを一つ一つ乗り越えながら、「人」と「技術」の両面で持続可能な製糖業を築いていくことが求められている。

 沖縄のサトウキビ産業を未来へつなぐために――。

 その歩みを支えているのは、生産者や製糖工場の日本人職員だけではない。国境や文化の違いを越え、同じ目標に向かって汗を流す外国人労働者もまた、地域産業を支える大切な存在となっている。彼らとの協働は、沖縄の製糖業の新たな可能性を切り開く一歩となるだろう。

 最後になりますが、本稿の執筆に当たり、ご多用にもかかわらず取材にご協力いただいたJAおきなわの仲里洋希さまをはじめとする関係者の皆さまに、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
【参考文献】
1)農林水産省HP「農業分野における外国人の受入れについて」
https://www.maff.go.jp/j/keiei/foreigner/index.html

2)内閣府「令和4年版高齢社会白書」p.4
3)総務省統計局「令和2年国勢調査」
4)沖縄県HP「雇用状況概要」
https://www.pref.okinawa.lg.jp/kensei/tokei/1016315/1016317/index.html

5)沖縄県HP「農業関係統計」
https://www.pref.okinawa.lg.jp/shigoto/nogyo/1010506/1010526/index.html

6)農林水産省HP「登録の公示(第172号)」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/0172/index.html

7)厚生労働省沖縄労働局HP「沖縄労働局における「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」
〈https://jsite.mhlw.go.jp/okinawa-roudoukyoku/jirei_toukei/tokei-siryo_00001.html〉

8)りゅうぎん総合研究所 調査レポート
「沖縄県の労働需給問題について〜人手不足は深刻化、労働力確保に向けた公労使一体での取組強化が必要〜」
http://www.ryugin-ri.co.jp/wp-content/uploads/2025/08/2508roudojyukyu-1.pdf#page=1〉(2026/3/25アクセス)

9)内閣府沖縄総合事務局HP「農業分野における外国人受入制度」
https://www.ogb.go.jp/nousui/keiei/foreigner

10)JA沖縄中央会 農業労働人材支援センター「特定技能外国人の受入状況について」
11)沖縄県伊江村役場 移住定住ガイドブック「伊江島ぐらし」

 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8678