昨今はケーンハーベスタで採取した苗を植え付けるビレットプランタの導入が進む一方で、収穫したサトウキビから手作業で選別・調整(
調苗)した二芽苗を植え付ける、簡易プランタを利用した従来の植え付け方法を希望する生産者も依然として多い。しかし、調苗・植え付け作業は、春植えにおいてはサトウキビ生産の工程の中でも収穫作業の繁忙期に行われるものであり、夏植えにおいては夏場に作業が行われるなど労働負荷が高い側面を有している。こうした中、沖永良部島では、通称「東内会」と呼ばれる沖永良部さとうきび調苗・植付受託組合が、島内の重要な受託組織として大きな役割を果たしている。
調苗作業は、手作業が中心の手間のかかる工程であり、かつては家族労働によって支えられ、夏休み中の子どもらが担うことも珍しくなかった。しかし、現在では、同組合が調苗を受託することにより、生産者の労力軽減に大きく寄与している。
受託料金は、組合の定める単価によるが、過去に単価を引き上げた際、委託件数に大きな変化は見られず、委託した作業を自らの実施に戻すのは難しいことも含め、受託のニーズは高い状況にあるとみられる。
なお、「東内会」という名称は、鹿児島県沖永良部事務所に勤務していた県職員の名前に由来する。当初は、和泊町内の生産者への苗供給を目的としていたが、良質な苗を供給する組織であるとの評判が広がり、現在では沖永良部島全域の生産者から供給依頼を受けている。
この東内会の組合員で最も多く調苗作業をしている秋田茂保氏は、和泊町に拠点を置く南栄糖業株式会社の元職員で、同社で勤務していた頃は試験研究部門などに従事していた(写真1)。退職後、自分が長年砂糖生産に携わってきたことから、サトウキビ生産の道へ本格参入したという。また、糖価調整制度による甘味資源作物交付金により、収入の見通しが立てやすいことも、その参入理由の一つであるとのことであった。
現在、秋田氏は、自己所有地1ヘクタールに加え、借地6ヘクタールの計7ヘクタールの農地でサトウキビを生産している。そのうち30アールは、調苗用の品種栽培に充てられている。調苗は、春植え20件、夏植え30〜40件程度を受託しており、調苗する品種も農林8号、27号、30号など、生産者の要望に応じている。調苗作業は、サトウキビの収穫時期と重なるが、収穫作業は別の大規模生産者へ委託しており、その時間を調苗作業に充てている。サトウキビ生産における作業受委託の仕組みを有効に活用し、自らの労力を集約することで、効率的な経営を実現している姿が印象的であった(写真2)。
秋田氏の経営では、現在、千葉県の農業高校出身の若者を1人雇用している。自身も70代半ばを迎え、「これまで培ってきた知識や技術を若い世代に引き継ぎたい」と考えているという。また、「自分で育てた苗だからこそ、良いサトウキビになってほしい。委託してくれた生産者に対する責任も感じている」と話す。一方で、後日、自ら調苗したものが植え付けられた圃場を見た時に、十分に管理されず粗雑に扱われているサトウキビの様子に、非常に残念な気持ちになることがあるという。その言葉から、単なる受委託作業としてではなく、サトウキビ生産に対する温かい思いと生産者としての強い責任感が感じられた。秋田氏をはじめとする東内会の取り組みは、島内のサトウキビ生産を支える重要な基盤となっているものと考えられる。