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〜中西部を中心とした供給力と関連産業の拡大余地〜

ブラジルにおけるトウモロコシ産業の動向(前編)
〜中西部を中心とした供給力と関連産業の拡大余地〜

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最終更新日:2026年9月10日

ブラジルにおけるトウモロコシ産業の動向(前編)
〜中西部を中心とした供給力と関連産業の拡大余地〜

2026年9月

調査情報部 石井 清栄
原田 祥太

【要約】

 ブラジルは、トウモロコシの世界的な生産国、そして輸出国であり、日本にとっても重要な輸入先である。ブラジル国内外の需要は堅調で、今後も生産拡大が見込まれており、作付面積に関しては、荒廃牧草地を農地転用することにより、今後も拡大する余地があるとみられている。

 一方で、同国は肥料の輸入依存度が高く、生産コストは国際価格や為替相場の影響を受けやすいという特徴があり、これは増産に向け今後解決すべき問題の一つと捉えることができる。また、近年はバイオエタノール燃料需要の拡大を背景に、トウモロコシ由来エタノールやその製造過程の副産物であるDDGS(トウモロコシ蒸留かす)などの生産が増加しており、関連産業の広がりも今後の注目点となる。

はじめに

 ブラジルは、トウモロコシの生産量が米国、中国に次ぐ世界第3位、輸出量は米国に次ぐ第2位と、世界の穀物需要を支える上で不可欠な存在である(表1)。トウモロコシを輸入に依存するわが国にとっても、国際市場への影響力を持つ同国のトウモロコシの需給動向は注視する必要がある。

 同国産トウモロコシは、わが国では飼料用に加え、異性化糖などの糖類の原料となるコーンスターチ用としても輸入されており、幅広い用途で利用されている。

 こうした背景を踏まえ、同国のトウモロコシ生産および輸出の現状と今後の拡大余地などを把握することを目的として、2026年5月に現地調査を実施した。本稿では、その調査結果を踏まえ、米国産やサトウキビ生産との比較もしつつ、同国のトウモロコシ産業の動向について報告する。

 なお、本稿では、前編で「生産」、後編で「輸出」に焦点を当て整理する。
 
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1 トウモロコシの生産動向

(1)生産の概要

 ブラジルでは、地域によりトウモロコシ栽培時期が異なっており、第1期作(主に南部・南東部)、第2期作(主に中西部)、第3期作(主に北東部)に分けられる(図1)。また、不耕起栽培の普及や品種改良、栽培技術の進歩により、大豆収穫後にトウモロコシ(第2期作)を播種(は しゅ)する二毛作体系が確立され、生産を支える重要な柱となっている。



 

 なお、生産量の大宗を占めるのは中西部で、中でもマットグロッソ州(以下「MT州」という)の生産量が最も多く、ブラジル全体の4割を占める(図2)(注1)

 (注1)詳細については、『畜産の情報』2020年8月号「ブラジルの大豆・トウモロコシをめぐる最近の情勢(前編)
    〜生産はマットグロッソ州を中心に今後も拡大の見込み〜」
    (https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_001275.html)をご参照ください。

 
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(2)品種および製品基準

 米国農務省(USDA)によると、ブラジルではトウモロコシ作付面積の96%で遺伝子組み換え品種(GMO)が導入されている。これについて、ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)への聞き取りによると、GMOの種類は多岐にわたるものの、用いられている遺伝子技術の多くは、世界の種子および農薬市場で圧倒的なシェアを持つドイツのバイエル社が保有するとしている。

 販売時の製品基準は、ブラジル農牧供給省(MAPA)の規範指令によって定められており、トウモロコシは、1)穀粒の硬さや形状によるグループ分け、2)穀粒の色によるクラス分け、3)品質によるタイプ分け―がなされる。

 硬さ・形状グループでは、「フリント種」、「セミフリント種」、「デント種」および「これらの混合」の4種類がある。米国ではデント系統が主流だが、ブラジルでは耐虫性を重視する傾向からフリント系統が主流となっており、セミフリント種が54%、フリント種が25%を占める一方、デント種は6%にとどまる(注2)。品質タイプは4種類に分けられており、「規格外」と分類された場合でも、その許容限度割合の範囲内であれば、規格外である旨を明示することで販売が認められている(表2)。

 ただし、広範なカビの発生や有毒種子の混入など、品質上の重大な異常が認められる場合は販売することができない。また、水分含有率については14.0%以下が推奨されているが、これを上回る場合であっても販売は可能とされている。輸出に際しても、これらの基準が準用される。

 (注2)デント種は、穀粒の側面が固いでん粉層からなり、冠部は柔らかいでん粉層からなる。粒が成熟するにつれて柔らかい部分が収縮して冠部にくぼみ(デント)ができ、馬歯のようになる。一方、フリント種は、硬いでん粉層が穀粒の全体に広がり、粒の冠部にくぼみがない。また、害虫抵抗性があり、低温でも受粉が可能である。

 

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(3)今後の生産量の見込み

 近年、ブラジルのトウモロコシの生産量は増加傾向で推移しており、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)は、2025/26年度(9月〜翌8月に播種されるもの)の生産量を1億4172万9000トン(t)と見込んでいる(図3)。




 2024年に公表されたMAPAの長期見通し(以下「長期見通し」という)によると、今後もトウモロコシの飼料およびバイオエタノール向けの国内外の需要が拡大していくものとして、33/34年度には、1億5314万tに達すると予測している。

 そこで、同国における生産能力向上の可能性について、次の三つの項目に分けて説明する。

ア 作付面積
 
ブラジルでは、今後のトウモロコシの作付面積において、荒廃牧草地(注3)の農地転用が、今後のトウモロコシの生産拡大を支える重要な要素とみられている。EMBRAPAによれば、同国の牧草地は約1億7700万ヘクタール(ha)あり、そのうち、農業適性(注4)が高く、農地転用の可能性がある荒廃放牧地の面積は、牧草地全体の約16%に相当する約2800万haとしている。このような農地転用可能な荒廃放牧地は、主に、MT州(512万ha)、ゴイアス州(468万ha)、マットグロッソ・ド・スル州(434万ha)、ミナスジェライス州(401万ha)、パラー州 (注5)(209万ha)の5州に集中している。

 長期見通しによると、トウモロコシの作付面積は、23/24年度の2100万haから33/34年度には2300万haまで拡大すると予測されている。

 ただし、業界団体によれば、荒廃牧草地を農地として利用するには、土壌改良などの初期投資が必要であり、黒字化するまでには2〜3年を要するという。従って、荒廃牧草地の農地転用は、ブラジルの穀物生産量拡大に向けた潜在的な余地を有する一方、実際の転換には投資負担や収益化までに一定の期間を要するといった制約が伴う点に留意が必要である。

 (注3)過放牧、不十分な施肥、雑草・害虫管理の不足、不適切な管理などにより、牧草の生産力や家畜収容力が低下している牧草地。
 (注4)土壌の深さ、肥沃度、透水性および地形(平坦性)を考慮した適性。
 (注5)各州の位置は図2をご参照ください。

イ 単収
 
ブラジルのトウモロコシの単収(1ha当たりの収穫量)は、米国の半分程度にとどまっている(表3)。CONABによれば、このトウモロコシの単収差は、使用品種の品質差によるものではなく、主に土壌条件および栽培時期の違いによるものとされる。米国コーンベルトの中核地域では、モリソルと呼ばれる有機物に富む肥沃な土壌が広く分布している一方、ブラジルでは酸性かつ低肥沃な強風化土壌(注6)が多い。また、米国では夏季に栽培されるため十分な日照時間を確保できるのに対し、ブラジルのトウモロコシ生産量の大半を占める第2期作は冬季に栽培されることから、日照時間が相対的に短い。さらに、米国では厳冬により病害虫の発生が抑制される一方、温暖な気候のブラジルではその発生リスクが比較的高いことも、単収差の一因とされている。

 (注6)長い時間をかけて風化が進み、養分を保持・供給する力が弱くなった土壌。



 

 こうした条件の違いがある中、今後の単収増加に向けた取り組みとして、EMBRAPAが開発した早期播種システム「Sistema Antecipe」について紹介する(図4)。この技術は、大豆・トウモロコシの二毛作に際して、降雨が不安定かつ不足する時期に入る前に、大豆の収穫を待たずしてトウモロコシを播種するものである。これにより、作柄不振のリスクを低減させ、さらに生育期間を最大20日間長く確保できる。しかし、この技術には、収穫前の大豆を傷つけることなくトウモロコシを播種する専用の機械が必要であり、これが導入への障壁となっている。現在、EMBRAPAがメーカーと連携しつつ提供している機械は、中小規模生産者向けに限定されるが、大規模生産者からの問い合わせがあり、今後の普及拡大が期待されている。
 
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ウ 生産コスト
 
ブラジルでは、セラード(注7)のような地域については土壌改良が必要となり、施肥需要も大きい。また、熱帯・亜熱帯気候下では、病害虫や雑草の発生・繁殖が活発であるため、防除に必要な農薬投入量が多くなる。このため、同国の大豆およびトウモロコシ生産コストは、肥料費および農薬費が占める割合が高い。一方で、大豆とトウモロコシの二毛作体系により、土地や機械設備などに関する固定費(減価償却費や機会費用など)が分散されるという特徴がある。この点について、マットグロッソ州農業観測所(IMEA)とUSDAの資料を基に、ブラジルのMT州と、米国のコーンベルト地域を形成する中西部の生産コストの構成割合を比較することで、両国の主産地における違いを確認することができる(図5)。

(注7)ブラジル中央部に広がる熱帯サバンナであり、土壌は酸性が強く、肥沃度が低い。





 なお、ブラジルは肥料の8〜9割を輸入に依存しているため、国際肥料価格や為替相場、物流コストの変動は、生産者のコスト負担に大きく影響する。こうした背景から、ブラジル政府は、2023年11月に国家肥料計画(Plano Nacional de Fertilizantes:PNF)を改定し、50年までに肥料需要の45〜50%を国内で賄うことを目標に掲げた。また、EMBRAPAでは、肥料および農薬の使用量削減による生産コストの安定化などを目的に、バイオインプット(注8)の研究開発と普及拡大に取り組んでいる。

 しかしながら、CONABによると、25年の肥料輸入量は4551万t(主要な内訳は窒素系肥料1712万t、リン酸系肥料565万t、カリウム系肥料1380万t)と過去最高を記録しており、現時点ではブラジル農業における肥料の輸入需要が高水準にあることがうかがえる。

 (注8)植物、微生物、天敵生物などを活用した生物由来の農業資材。

エ サトウキビ生産との兼ね合い
 
このように、今後、トウモロコシの生産拡大が見込まれている中で、サトウキビ生産との兼ね合いについて触れる。

 なお、荒廃牧草地の農地転用による生産の拡大余地がトウモロコシとサトウキビで重なる可能性が挙げられるが、上記の通りトウモロコシの生産はMT州が主体であるのに対し、サトウキビの生産はサンパウロ州が主体となっている。このため、拡大余地が重なる可能性は少ないとみられる(図6)(注9)

 (注9)詳細については、『砂糖類・でん粉情報』2024年9月号「ブラジル砂糖産業の現在と未来〜砂糖とエタノールの二本の柱〜(前編)」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_003199.html)をご参照ください。
 



 


 長期見通しによると、サトウキビの作付面積は、23/24年度の860万haから砂糖・バイオエタノールの国内消費や輸出需要の増加などにより、33/34年度には1000万haまで拡大すると予測されている。

 これに伴い、世界最大の生産国であるブラジルの砂糖生産量は、今後の気候条件の変化や同国の砂糖・バイオエタノール政策により生産量に変動があるものの、年平均2.2%増で成長し、23/24年度の4560万tから33/34年度には5520万tにまで増加すると予測されている(図7)。
 

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【コラム1】MT州のトウモロコシ生産者

 今回の現地調査において、MT州のトウモロコシ生産者Célio Riffel氏から農業経営の現状について聞き取りを行った。同氏の家族は、もともとリオグランデ・ド・スル州で100年以上続く生産者であったが、新たな可能性を求めて所有地を売却し、37年前にMT州へ移住した。入植当時は電気もない環境の中で一から農地を開拓し、当初20haであった農地を、現在の900haまで拡大させた。それでも、近隣では平均的な規模であるという。

 現在は、同氏と息子を含む計5人で農場を運営し、トウモロコシと大豆の二毛作を行っている。単収は、トウモロコシが1ha当たり9.0t、大豆が同4.2tと、いずれも国や州平均を上回っており、同氏はこれを長年培ってきた経験と技術の成果と語る。

  一方で、近年は国際情勢の影響により、肥料価格が高騰しているのが悩みの種という。同州ではバイオエタノール需要が増加しているため、トウモロコシの収益性は維持されているものの、大豆の収益性は低下しているという。今後は施肥量の削減などにより収益性を確保しつつ、現在の二毛作体系を継続していくとの考えであった。

 また、同国におけるバイオエタノール需要の拡大は、同氏の地域においても新たな事業機会を生み出している。同氏を含む地元生産者36戸は、共同出資により穀物バイオエタノール製造会社「EVERMAT S.A.」を設立し、同社工場は2026年4月に稼働を開始した。

 なお、訪問時に撮影したトウモロコシは、20日後に収穫され、同工場に原料として搬入する予定とのことであった(コラム1―写真)。




 

2 バイオエタノール(トウモロコシ・サトウキビ)の生産動向

 ブラジルのバイオエタノール生産量は、サトウキビ由来が大宗を占めているが、USDAによると、近年はサトウキビ由来のエタノール(以下「サトウキビエタノール」という)よりもコスト効率に優れたトウモロコシ由来のエタノール(以下「トウモロコシエタノール」という)の生産が拡大しており、このことが生産者のトウモロコシ作付け意欲を高めているとされている。

 また、これに伴い、トウモロコシエタノール製造の副産物であり、飼料として利用されるDDG(Distillers Dried Grains)およびDDGS(Distillers Dried Grains with Solubles)(以下「DDGS等」という。)の生産も拡大している。

 同国では、国家バイオ燃料政策(RenovaBio(レノバビオ)政策)(注10)の下、ガソリンへのバイオエタノール混合率が、2025年8月に27%から30%へ引き上げられた。さらに、26年8月からは、180日間に限り(1回限り180日間の延長が可能)、32%へ引き上げることとなった。

 こうしたバイオエタノール需要の拡大が見込まれる中、ブラジルトウモロコシエタノール協会(UNEM)によると、現在、国内では29カ所のトウモロコエタノール工場が稼働しているが、さらに13カ所の工場が建設中であるほか、14カ所で建設計画が進行しているという。

 生産能力の拡大を背景に、UNEMは、25/26年度のトウモロコシエタノール生産量を99億7000万リットル(L)と見込んでおり、34/35年度には25/26年度比で約2倍強の217億6000万Lに達すると予測している(図8)。

 (注10)2015年に採択されたパリ協定の温室効果ガス(GHG)削減目標を達成するためにブラジルで20年から本格運用されている、世界最先端の市場連動型バイオ燃料促進制度。補助金などの財政負担に頼らず、市場メカニズム(カーボンクレジット(注11)取引)を用いて脱炭素化とバイオ燃料(エタノール、バイオディーゼル、バイオメタン)の増産を両立させている点が大きな特徴。詳細については、『砂糖類・でん粉情報』2024年10月号「ブラジル砂糖産業の現在と未来〜砂糖とエタノールの二本の柱〜(後編)」
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_003215.html)をご参照ください。
 (注11)GHGの排出削減や吸収量を「価値」として認証・市場で取引できる仕組み、削減量や吸収量を証書化して売買可能にしたもの。

 
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(1)エネルギー研究公社(EPE)による需要予測

 また、ブラジル鉱山エネルギー省(MME)傘下のエネルギー研究公社(EPE)が2025年12月に公表した報告書「エタノール供給シナリオと自動車(内燃機関)向け燃料需要:2026年〜35年」によると、ブラジルのエタノール需要は、今後の同国の経済成長および所得向上を背景に、自動車燃料向けの増加が見込まれている。具体的には、26年の398億L(輸入分を除く予測値)から35年には443億〜573億Lに達すると予測されている。

 このうち、トウモロコシエタノール生産は、26年の112億L(全体の28%)から35年には154億(同35%)〜244億L(同42%)となると予測されている。一方、サトウキビエタノール生産は、26年の286億L(同72%)から35年には289億(同65%)〜338億L(同58%)となると予測されている。

 トウモロコシエタノールの大幅な増加予測について、EPEは農地開拓を伴わず、荒廃牧草地の転用や大豆収穫後の「二期作」トウモロコシの利用増によって達成されるとしている。

(2)成長の方向性

 EPEの報告書では、今後のトウモロコシおよびサトウキビエタノール生産について、次の通り成長の方向性が示されている。

ア トウモロコシ
 
トウモロコシエタノールは、2035年までのブラジルのエネルギー供給を実質的に支える「量的な成長」の役割を果たす。

 (ア)二期作トウモロコシの利用増
 
(1)の通り、農地開拓を伴わずに、荒廃牧草地の転用や大豆収穫後の「二期作」トウモロコシの利用増により、トウモロコシエタノールの原料を確保することができるため、持続可能性を担保する。

 (イ)フレックス工場などの普及による「通年操業」
 
サトウキビエタノール工場は、サトウキビの収穫期(4〜11月)だけ稼働しているが、乾燥貯蔵が可能なトウモロコシからもエタノール生産が可能なフレックス工場やトウモロコシ専用工場が中西部を中心に増設されている。これにより工場を通年操業することができるようになり、価格の安定化を図ることが期待されている。

 (ウ)DDGS等の利用によるアグリビジネスの統合
 
国内の家畜飼料として、今後生産が大幅に増加することが予測されるDDGS等を利用することにより、農業と畜産業が地域内で完結する循環型経済の成長システムをけん引する。

イ サトウキビ
 
サトウキビエタノールは今後、大幅な生産拡大は見込めないものの、バイオリファイナリー (注12)としての高付加価値化の構造に転換する「質的な成長」に進む。

 (ア)砂糖生産へのシフト
 
今後予想される砂糖の国際需給のひっ迫およびこれによる価格上昇を背景に、サトウキビはエタノール原料から砂糖生産へシフトする。このため、サトウキビエタノール生産は、伸びが鈍化する。

 (イ)エタノール生産の進展
 
上記によるサトウキビエタノールの生産量の不足を補うため、サトウキビの搾りかす(バガス)やわら(セルロース:繊維)を酵素分解して製造するエタノール生産を進める。これにより、作付面積を増やすことなく、(砂糖生産と)同じサトウキビからエタノールを生産する。

 (ウ)脱炭素プレミアム(注13)の獲得など
 
サトウキビエタノールは、トウモロコシエタノールよりもGHG排出削減率が高い(レノバビオ政策におけるCBIO(注14)創出効率が高い)ため、国内のカーボンクレジット取引上で利益を多く獲得する。また、国際的なSAF(持続可能な航空燃料)原料としての競争力を高める。

 (注12)再生可能なバイオマス(動植物から生まれた有機資源)を原料に燃料や化学品を生産する技術・産業。
 (注13)GHGを排出しない製品やサービスを選ぶ際に発生する追加コスト。
 (注14)Crédito de Descarbonização:ポルトガル語で脱炭素化クレジットの意。CBIO1単位が二酸化炭素1トン分に相当する。

【コラム2】トウモロコシを原料として扱う関連企業の動向

 今回の調査にて、トウモロコシを原料として扱う関連企業を訪問したので、その概要について紹介する。

 (1)穀物バイオエタノール製造会社大手:INPASA社
 
INPASA AGROINDUSTRIAL S.A.(INPASA社)は、世界最大規模の生産量を誇るシノップ工場(MT州)を含め、ブラジル国内に6工場、パラグアイに2工場を有する大手の穀物バイオエタノール製造会社である(コラム2―写真1)。全工場を合わせた2026年のエタノール生産量は63億L、DDGS生産量は310万tを見込んでいる。また、26年12月にゴイアス州、27年2月にMT州で新工場の稼働開始を予定しており、今後さらなる生産拡大が見込まれる。

  なお、原料の大部分はトウモロコシであるが、一部の工場ではソルガムも使用している。

  同社は、DDGSを「FortiPro」というブランド名で商品展開し、販売拡大に取り組んでいる(コラム2―写真2)。たんぱく質含有量が32%である同商品について、サンパウロ大学で実施された肥育牛への給与効果に関する研究で、その有効性が確認されたとしている。この研究では、肥育牛に給与する飼料のうち、綿実、トウモロコシおよび柑橘類の果肉の一部を同商品に置き換え、その効果を検証した。飼料全体に対する同商品の割合を、10%、20%、30%、40%と段階的に増やして検証したところ、配合割合を10%増加するごとに、と畜時の枝肉重量が2.62キログラムずつ増加することが示されたとされる。






 

(2)トウモロコシエタノール製造会社大手:FS社
 
FS Fueling Sustainability(FS社)は、ブラジル国内で最初のトウモロコシエタノール工場とされるルーカス・ド・リオ・ヴェルデ工場を含め、MT州内に3カ所の工場を有する大手のトウモロコシエタノール製造会社である(コラム2―写真3)。全工場を合わせた2026年のトウモロコシエタノール生産量は25億L、DDG生産量は200万tを見込んでいる。また、同州内に2カ所の新工場を建設中であり、1カ所目は26年12月、2カ所目は27年12月の稼働開始を予定しており、今後さらなる生産拡大が見込まれる。

  同社の工場では、エタノール発酵の前にトウモロコシの繊維を分離するFST(Fiber Separation Technology)という技術が採用されており、その過程で製造されるDDGには繊維が含まれないため、たんぱく質含有量を41%まで高めることができる。




 
 後編(『砂糖類・でん粉情報』2026年10月号に掲載予定)では、ブラジルのトウモロコシの「輸出」に焦点を当てて報告する。
 
【参考文献】
 1)Seven Editora, 386-402.「CULTIVARS AND CHARACTERISTICS OF CORN GRAIN. Arcanjo, A. H. M., Cunha, G. de P., da Silva, E. A., Franco, F. O., Rodrigues, J. G., Pereira, M. de G., Theodoro, G. de F., & Fagundes Neto, A. (2025).」(2025年3月31日発表)
https://sevenpubl.com.br/editora/article/view/6874〉(26年6月26日閲覧)

 2)EMBRAPA「Potential for Agricultural Expansion in Degraded Pasture Lands in Brazil Based on Geospatial Databases」(2024年2月6日発表)
https://www.mdpi.com/2073-445X/13/2/200〉(26年6月26日閲覧)

 3)CONAB「Anuário Agrologístico 2026」(2026年5月公開)
https://www.gov.br/conab/pt-br/atuacao/logistica/anuario-agrologistico/anuario-agrologistico-2026〉(26年6月26日閲覧)

 4)University of São Paulo“Luiz de Queiroz” College of Agriculture「Inclusion of dried distillers’ grains with solubles in feedlot diets containing flint corn and citrus pulp: metabolism and performance of finishing Nellore bulls」(2024年発表)
https://inpasa.com.br/fortipro/resultados〉(26年6月26日閲覧)

 
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8678