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この人に聞く

【この人に聞く】中国の食品安全と日本産品の今 〜前編〜

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最終更新日:2024年7月5日
広報webマガジン「alic」2024年7月号
前編冒頭
(注1)メラミン混入事案では、1万人を超える乳幼児が入院する事態となり、中国で大きな社会問題となりました。詳細は、内閣府食品安全委員会のHP(中国における牛乳へのメラミン混入事案に関する情報について | 食品安全委員会)をご参照ください。
(注2)農林水産省が外務省やJETRO((独)日本貿易振興機構)などと協力して実施しています。詳細については、農林水産省のHP(農林水産物・食品 輸出支援プラットフォーム:農林水産省 )をご参照ください。

Q 北京を拠点に中国各地の小売店や外食店を数多く訪問されていると伺いました。最近の中国の食品の安全レベルに対する実感を教えてください。

<庶民的な青空市場(遼寧(りょうねい)省大連市>
 私は、北京事務所に農林水産・食品室が設置された2023年6月から、北京市で勤務しています。これまで、上海市のような大都市や、香港と合わせて大規模市場圏を構成する新セン市や広州(市、三線都市と呼ばれる、経済の発展段階のランクが上から3番目のランクに位置づけられる主要地方都市など、中国各地で、小売店や外食店、昔ながらの青空市場、生産・加工現場などを訪問しました。
 実は、2009年に食品安全法が施行された頃の2年間、上海市に住んでいましたが、当時に比べ、現在はどの都市に行っても、食品安全の意識が浸透してきたように感じます。特に、衛生管理が改善され、食べこぼしや野菜くずなどは本当に少なく、床もきれいになりました。店頭でも傷んだ果実が混ざっている、というようなこともほとんど無くなり、店内に飛んでいたハエや嫌な臭いも少なくなりました。
<清潔で整然と整理された高級スーパー(北京市)>
 従来、中国で多く見かけた消費者が必要な分だけ購入する量り売り形式での販売も少なくなり、傷みやすい果物はあらかじめ店側が個包装していることが多くなりましたし、店内に冷蔵庫を設置し、商品の温度管理を行うお店も多くなりました。
 また、高級な食品、例えば単価の高いアルコール飲料などでは、それぞれの商品に二次元コードが付けられ、1本ごとの製造、流通情報を調べることもできるなど、消費者への配慮も見られるようになりました。
 このような食品を巡る変化の背景には、中国国内で食品安全を支える制度の整備とその適切な運用が進んだこと、そして何より、それを支持する中国国民の食品安全への要求が高まったことがあると考えています。

Q 外国人向けのお店と中国人向けのお店では、食品安全のレベルが異なるということはないのでしょうか。

<個包装された果実と販促POP(海南省海南島)>
 確かに中国は広いので、「一線都市」「三線都市」といったような都市についてのものだけでなく、小売店や外食店などの区分や、価格帯や客層などで、ランク分けをして考えることがポイントとなります。
 例えば、上のランクに位置する高級小売店では、商品に産地が表示され、鮮度の良いものだけが並び、店からのお勧めを描いた店頭POPも多く掲げられています。また、日本と同様、惣菜コーナーも急速に充実しています。感覚ではメニューと価格を除けば、日本とあまり変わらないのではないでしょうか。なお、「価格を除いて」というのは、高値では中国の方が日本を上回っているという意味です。値札をよく確認せずに商品を選んでしまうと、レジに行って、桁が違っていて驚いてしまうことになるかと思います。
 
<多様な商品を取り扱う市場(写真は果物売り場) (遼寧省大連市)>
 三線都市に当たる山西省の大同市の果物専門店でも、産地が明示されており、傷みやすい果物はしっかり個包装され、その一部は冷蔵庫で保存されていました。中には、お客が触れることで商品が痛んでしまわないように、箱だけが店頭に置かれ「買いたい方はお声がけください」との案内がなされているものもありました。また、サービス面でも進化を遂げており、上述の果物専門店を夕方に訪れた際、「明日の朝7時にはホテルを出て北京に帰らなければならない」と伝えると、「それなら、今、買う必要はないです。明日の朝、市場から仕入れたばかりの新鮮な物をホテルに届けます」と提案されました。 中国では、携帯電話にインストールしたアプリで買い物をする、出前を頼む、といったことが普及しており、オフライン店と呼ばれる実店舗は、小売店でも外食店でも競争が激しくなっています。競争の激化により、実店舗のサービスも良くなってきたと感じています。
 他方で、下のランクの小売店では、依然として傷んだ果物が平然と紛れていたりする場面に遭遇するなど、2009年当時と変わらず、衛生管理・食品安全の意識が低いように感じます。情報化が進む中国では、買い物のオンライン化などで業界環境が変化し、お店同士の競争も厳しくなっていますので、このようなお店は早晩、無くなっていくのだろうなと感じています。  (続く)

※本稿の後編は、来月号(2024年8月号)を予定しております。
 後編にて「日本産品」について言及されていますので、次月号もぜひご覧ください!
山田 智子 氏
一般財団法人日中経済協会北京事務所 農林水産・食品室 室長
平成16年4月、農林水産省入省
以降、同省において知的財産、デジタル技術、農村振興などの分野のほか、植物防疫交渉業務などに携わる。
令和5年6月、alicに出向。日中経済協会北京事務所にて勤務。
   
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196