寄稿
【寄稿】今こそ地域の牛乳に大注目。ご当地牛乳の魅力再発見。
最終更新日:2024年12月5日
広報webマガジン「alic」2024年12月号
牛乳といえば、この人!「ミルクマイスター®高砂」様に、今回は特に”ご当地の牛乳”の魅力についてご寄稿いただきました!
ご当地牛乳は街と心の風景
日本全国には、その土地でしかお目にかかることができない「ご当地牛乳」と呼ばれる牛乳がたくさん存在します。地元の方にとっては見慣れた牛乳かもしれませんが、旅行などで初めてその地域を訪れる方にとっては、旅情を一気にかきたててくれる存在です。
例えば、普段都心に住んでいる方が、週末に疲れを癒そうと山間にある温泉に行くとしましょう。車で約2時間、都会の喧騒を離れ、山の小道を登っていくとポツンと眺めの良い温泉が。湯けむりでゆらゆらと霞む絶景を眺めながら、聞こえるのはお湯の音と虫の声。ゆっくりと体の芯まで温まり、脱衣所に戻ると、そこには見たことのないご当地牛乳があるではありませんか。これ以上ないくらい牛乳を飲むためのコンディションは整っています。ポンッと紙栓をあけ腰に手を当て一気に飲み干します。うまい!と思わず声に漏れてしまうくらい牛乳の美味しさが体全体に染み渡ります。
そして日常を離れたことによる開放感とともに、私は今、全力で旅をしている。きっとそう感じるはずです。そこにご当地牛乳があったからこそ、旅の奥行きがぐっと広がるのです。
このエピソードは一例ですが、もちろん私もそんなご当地牛乳に魅了されたひとり。北から南まで牛乳を飲むためだけに旅をするミルク旅を10年以上しています。今では飲んだ牛乳は600種類を超えました。どれも個性的で、1本1本に出会った時のエピソードがあり、その地域の思い出と深く結びついています。
そこで気がついたのが、ご当地牛乳はその街の風景であるということ。先ほどの温泉での牛乳もしかり、スーパーなどにずらっと並ぶ牛乳たちは、その地域でしか見ることができません。そこに住む方たちの心の中にしっかりと焼き付いている風景となっているのです。
そんな場面に出会う度に、この風景がずっと続いて欲しいと心から思います。
日本の酪農・乳業の歴史を振り返ると、元々は東京を中心とした消費地に集中していた牧場ですが、都市開発や、牛乳の需要が増えたことによる牛の飼育頭数の増加によって土地が必要となり都市から農村地域へと牧場が広がっていきました。給食でも牛乳の提供が始まり、地域の子供達に新鮮で美味しい牛乳を届けたいという想いから、全国各地で牧場がどんどん増えていき、47都道府県あらゆる地域で特色のあるご当地牛乳が生まれていきました。世界中見てもこんなにも多種多様な牛乳を味わえるのはとても珍しいと思います。今では海外の方も日本の牛乳の魅力に気がつき、牛乳を飲むことを楽しみに来日する方も多いのだそうです。
ご当地牛乳ブームがやってきた!?
最近、街を歩いていると「ご当地牛乳」という言葉をよく見かけるようになりました。ご当地牛乳をモチーフにしたグッズやカプセルトイが販売されるなど、ご当地牛乳に注目が集まっていることを感じます。
その理由の1つに、コロナ禍に巻き起こった地方ブームがあると考えています。オンライン会議が当たり前になり、必ずしも都市で働く必要も無くなったことから、Uターンや移住する方も増えていると一時期話題になりました。
地方に改めて注目してみると、その土地ならではの豊かな文化があり、ご当地牛乳もその土地の魅力を凝縮した存在としてピックアップされているのだと思います。「〇〇牛乳って〇〇県でしか売ってないんだ!?」と、当たり前のように飲んでいた地元の牛乳が実はその地域でしか飲めないもの、つまりどこでも飲めるわけではない貴重なものだと気がつき愛着が湧いたこともブームの要因かもしれません。
ご当地牛乳という風景をずっと守っていくために
ご当地牛乳を一時的なブームにするのではなく、地域を支える大事な存在として応援し続けてほしいと思っています。
地域の酪農を応援することは、地域の食文化全体を支えることにつながります。地域のお菓子屋がお菓子を作り、パン屋がパンを作る。そのためにも地域の牛乳がたくさん使われています。さらには牛の堆肥は野菜の栽培に役立つなど、地域の循環に欠かせない存在です。その循環が崩れれば、地域の食や経済の安定も危うくなります。
まずは自分の住んでいる地域の牛乳を知り、全国に広がる個性豊かな牛乳にも目を向けてほしいと願っています。
その思いから、2024年9月に「ご当地牛乳トレカ」プロジェクトを全国の乳業メーカーと共にスタートしました。カードを通じて地域の牛乳への愛着を深め、ファンが増えることを目指し、これからも牛乳の魅力を発信し続けていきます。
ミルクマイスター®高砂さん
1983年、山形県寒河江市生まれ。物心ついた頃からの牛乳好きで、飲んだ牛乳は600種類以上。名古屋学芸大学デザイン学科卒業後、広告制作会社勤務を経て独立し、“牛乳をこよなく愛するグラフィックデザイナー”として活動。世界中の牛乳を探索しつつ牛乳の楽しみ方の提案。ご当地牛乳トレカプロジェクトマネージャー。
※高砂様には、令和7年2月18日開催の「alicセミナー特別版及び消費者の方々との意見交換会」にご登壇いただく予定です。ぜひ、こちらもご参加のほどどうぞよろしくお願い致します。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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