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【この人に聞く】人がつながる酪農〜見て、来て、触って、食べてみて!〜 柿澤牧場(茅ヶ崎市)

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最終更新日:2025年1月6日
広報webマガジン「alic」2025年1月号
神奈川県茅ケ崎市の住宅街、角を曲がるとそこに牛舎がありました。
牛舎の前には、牛乳、飲むヨーグルト、アイスクリームが売られている可愛い店舗、そして、笑顔が素敵な柿澤美里さんの姿がありました。「聞いてみたい、触ってみたい、食べてみたい」そんな気持ちが湧いてくる「柿澤牧場」にお話を伺ってきました。

Q1 “牛と共に楽しく暮らす”がモットーの柿澤牧場、具体的にどのようにされているのですか?

<昼下がりの牛舎、牛たちがのんびり過ごしています。>
 牛に「ありがとう」と伝えるようにしています。「ありがとう」だけではなく、朝、牛舎に入ったら、まず「おはよう!」と声を掛け、夜には「じゃあ、おやすみなさい。今日も一日、お疲れ様!」と声を掛けています。一緒に働く社員だと思っています。
 そして、よく触ります。餌をあげている時、搾乳をしている時、顔からお腹、お尻までよく触るようにしています。触りながら「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えています。
 うちの牛達は触られるのが大好きなので、牛とのコミュニケーションの方法として、声掛けに加えて、触るをしています。
 これをするようになって、1頭、1頭の個性が分かるようになり、そして、可愛くなってきました。これが、「楽しく」に繋がっていきます。
 不思議なんですけど、声を掛けるようになったら、病気などのトラブルが減りました。
 

Q2 牧場が住宅街の中にあり、臭いもほとんどしなく、そして、たいへんきれいですが、これはどのようにされているのですか?

<固液分離機>
 臭いは、全くゼロというわけではないです。出るときは出ます。ただ、極力出ないように努力をしています。一番大きな対策は、ふん尿を処理する装置「固液分離機」を使っています。これは、ふん尿を固形分と液状分に分離させ、固形分は、たい肥化へ、液状分は下水道へと分けてくれる装置で、臭いの低減につながっています。液状分を下水道へ流せる環境であることは、都市近郊で酪農をしているメリットかもしれないです。
 固形分は、完全発酵して、たい肥にします。野菜農家や畑をやられている近隣の方がたい肥として持っていかれます。
 もう一つは、飼料です。乳牛を飼養するので、飼料の基本は「草」です。乳牛は、飼料が「草」なので、臭いが少ないです。小学生が見学で来た時に「牛さんは、草食動物だから、出すうんちの量は多いけど、そんなに臭くないんだよ。肉食動物や人間の方が臭いんだよ。」と話すと納得して帰っていきます。このようなコミュニケーションも大事ですね。

Q3 小学生との対話の話が出ましたが、地域との交流はどのようにされているのですか?

 小学校などに、乳牛を連れて行き乳搾り体験や酪農の仕事の話をする「モーモースクール」という講座が各地域で行われています。それに、私も参加しています。
 小学生くらいでの体験は、その後の人生にも大きく関わってくると思います。なので、この時期に牛と触れ合ってもらう、酪農を知ってもらうことは、とても大事だと思っています。酪農の仕事の面白さや楽しさ、牛の素晴らしさを知ってもらった方が、結果的に支えてもらえると考えています。
 実際に、講座の後は、給食の残食が減ったり、牛乳をちゃんと飲むようになったりしているようです。知ってもらう、近くに感じてもらうことが、大事だと感じています。

 現在、防疫のため牛舎の中に関係者以外が入ることは法律で禁止されているのですが、外から見えるようにオープンにすることを意識しています。何をしているのか、いつなら触れ合うことができるのかを事前に案内し、知ってもらい、触れ合う機会を作っています。隠すと不安や不信が生まれやすいですが、オープンにしていれば安心につながるのではないでしょうか。

 「地域交流牧場全国連絡会(こうぼくれん)」とのつながりは、私にとっても大きく変わるきっかけとなりました。ここでの人との出会いがあるから、今の私がいると思います。酪農だけでなく、農業は、個人で頑張って経営している方が多いと思いますが、「こうぼくれん」は、全国、様々な地域の人が参加して、年齢も性別も関係なく広くつながり、一緒に勉強をし、意見交換をします。「こうぼくれん」で出てくる話題は、自分の牧場が良くなる話だけではなく、酪農業界全体の話、そして、地域全体の話が出てきます。私たち夫婦は、まさに、そのようなことが考えたかった、話がしたかったのだと感じました。世界は、もっと広いし、楽しいってことを知りました。
 
<一般の方が見ることができる場所が設けられています>

Q4 6次化(アイスクリームなど製品化)はどのようなきっかけで始められたのですか?

 これも人とのつながりで始まりました。随分前から、主人が作った乳を、味わって欲しいなという思いがあり、6次化について考えていたのですが、なかなか実現できずにいました。そうこうしているうちにあっという間に10年ぐらい経ってしまいました。コロナ禍となり、いよいよ難しいと思ったのですが、対策も徐々に見えてきている中で、市内のアイスクリーム屋「プレンティーズ」から生乳が欲しいとの話があり、丑年の2021年に生乳の出荷が始まりました。さらに、2022年4月に牧場横に売店をオープンしました。
 プレンティーズの社長さんが、アイスクリーム製造用の生乳を飲んだ時、とてもおいしく感じ、これをそのまま製品にしたいとの思いがあり、2023年8月には、「Plenty’s Milk&Cheese Factory」ができ、牛乳、飲むヨーグルト、モッツァレラチーズ、ソフトクリーム、ホエイなどを使った製品を販売するお店が出来ました。
 柿澤牧場のふれあい体験で来てくれるお客様から「ここの牛乳は飲めないのですか?」とよく聞かれていたので、プレンティーズさんが製造をしてくれていることにありがたく感じています。

 やはり搾りたてで、そして、目の前の牧場の牛乳であるということは、「おいしい」をさらに強く思ってくれるようですし、私たちも「うちの牛乳」と言えることが嬉しいです。
 茅ヶ崎で搾った生乳が、茅ヶ崎のアイスクリーム屋さんでアイスクリームとなり、茅ヶ崎の人が食べてくれる、正に「茅産茅消」です。地域活性の一端を担えていることを願っています。
 そして、お客様と話せる機会があると、酪農業を含めた畜産業の理解が生まれるのではと、期待しています。
<柿澤牧場の生乳を使ったプレンティーズのアイスクリーム、後ろに牛舎が見えます>

Q5 最後に一言、お願い致します!

 うちの両親は牛乳が大好きです。今、92歳ですが、二人とも健康で元気です。義母も84歳で元気です。持病もない、通院もしていない、1年に1回健康診断を受けるだけです。
 牛乳を飲んでいたからかは分かりませんが、事実、牛乳は大好きでよく飲んでいます。
 
 ぜひ、牛乳を楽しく、おいしく飲んでもらいたいです。そして、見学ができる機会があればぜひ参加してみてください。乳搾りやってみてください。
 そして、もし良かったら、ぜひ牧場の人とお話してくれたら嬉しいです。
<最後まで笑顔が素敵な柿澤美里さん>
柿澤牧場(酪農教育ファーム認証牧場)
 (神奈川県茅ケ崎市天沼245)
 柿澤 美里さん
 ・結婚を機にご主人と酪農を始める。
 ・地域交流牧場全国連絡会(関東ブロック)理事
 ・酪農教育ファーム ファシリテーター
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196