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ICT活用で生産量を伸ばし、国内消費が増加してきた韓国のパプリカ

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最終更新日:2025年7月7日
広報Webマガジン「alic」2025年7月号
 食卓を彩るパプリカは、需要の増加に伴い国内での生産量は増加してきていますが、流通の大半は韓国などからの輸入品です。韓国では、日本向け輸出品目としてパプリカの生産が始まり、オランダなど他の輸入先に比べて日本に近いという地理的優位性を生かしつつ、ICT(情報通信技術)の活用などにより生産量を伸ばしています。現在、日本の輸入パプリカの約9割が韓国産となっています。
 輸出品目として生産が始まった韓国のパプリカですが、生産量の増加に伴い国内流通も広がり、現在では生産量の6割が国内向けとなっています。

1 韓国のパプリカ生産概況

地図
 韓国のパプリカ栽培の作型は、冬期が比較的温暖な南部の(けい)(しょう)南道(なんどう)を中心に行われている冬春作型と、夏期が比較的冷涼な北部の江原(こうげん)特別(とくべつ)自治(じち)(どう)を中心に行われている夏秋作型となり、この2つの地域を中心に年間を通じた出荷体制が構築されています。
 ただし、作型別の作付面積を見ると、生産コストの上昇や労働力不足の影響から、収穫期間が長期となる冬作型が増加しているのに対し、短期となる夏作型は減少しています。

2 種子生産大国化を目指し、国産ミニパプリカ品種を開発

 韓国で生産されるパプリカの品種は、オランダ産品種である大玉ベル型が主流でした。政府は、国産種子開発による種子生産大国化を目的に、2013年に「ゴールデンシードプロジェクト(GSP)」を立ち上げました。これを受けてミニパプリカの育種が始まり、15年に高糖度のミニパプリカである「ラオン」(16年品種保護登録)が開発されました。ラオンは同年から国内大手の大型量販店で販売され、翌16年には日本向け輸出も開始しています。その後もパプリカの育種が積極的に行われ、24年までに21品種が開発されています。
 
<韓国の代表的なミニパプリカ品種「ラオン」>

3 ICTなどを活用した「スマートファーム」での生産

 韓国では、生産者の高齢化に加え、農業より他産業で就業した方が高収入を期待できることなどから、農業者人口が減少しています。農業者人口の減少に対応するため、限られた生産者数でより効率的な農畜産物の生産を行うべく、2011年に政府が「ICT融合システム(先端生産技術開発)事業」、14年に「韓国型スマートファームモデル事業」などを措置し、省力化に寄与するICT農業への支援を行ってきました。これらの事業を通じて整備された生産施設はスマートファームと呼ばれており、パプリカやトマトなどの施設園芸品目が多く栽培されています。
 最新のスマートファームでは、ICTとAIを活用し、異なるメーカーの空調設備や施肥機器などを1台の管理端末で統合管理するとともに、施設の外からでもスマートフォンなどでリモート管理できるようになりました。
 
<パプリカが生産されるスマートファーム>
<スマートファームの管理端末や付帯機器>

4 韓国のパプリカ消費量も増加

 韓国では、すべての年代で健康志向が高まっており、パプリカを含む野菜全般の需要が増加しています。家庭での野菜消費は、サラダやスムージーなどの生食が中心となっています。
 パプリカの消費も生食が中心ですが、加熱しても彩りが失われないことから、さまざまな料理でも広く利用されています。また、子どもや辛味が苦手な人向けに、とうがらし粉の代用品としてパプリカパウダーが利用されるなど、韓国ではパプリカの消費が伸びています。韓国農業振興庁が2024年5月に開催した「2024年農産物トレンドプレゼンテーションコンテスト」によると、2010年のパプリカの1人当たり消費量は0.5キログラム(1玉150グラム換算で約3.3玉)であったが、23年には約2倍となる同1.1キログラム(同約7.3玉)に増加するなど、これからもパプリカの消費量の増加が見込まれています。
 
<大型量販店で販売されるパプリカ>
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農畜産業振興機構 総務部 (担当:総務広報課)
Tel:03-3583-8196