この人に聞く
可能性が広がる氷温®技術
〜長く、そして、美味しくなる貯蔵〜
最終更新日:2026年1月5日
広報webマガジン「alic」2026年1月号
冷蔵庫の普及によって、私たちの食生活は大きく広がりました。そして、その進化は「冷やす」機能にとどまらず、鮮度や栄養価を守り、さらには美味しさを引き出す方向へと進展しています。
身近なものですと、家庭用冷蔵庫に野菜の鮮度を長期保持する機能や、ビタミンなどの栄養素を増やす機能、雑菌を減らす機能など、さまざまな技術が搭載されるものも出ています。
野菜や果物、畜産物において、長期保存ができること、鮮度が維持されること、さらには貯蔵により美味しくなる技術は、求めてやまないものです。 |
1 はじめに
野菜や果物は、収穫したときから、お肉は枝肉となった時から、どのように保管・保存・貯蔵をするかで食味は大きく変わってきます。野菜や果物は、収穫されてもなお生きておりますので、呼吸をし、代謝が行われています。また、お肉も、酵素の働きによりその組成物の構成は変化していき、適切な貯蔵によって熟成が始まります。
冷蔵庫に、冷蔵室、チルド室、パーシャル室、冷凍室があるように、食品によって、最適な貯蔵温度は異なります。最適な温度に加え、食品の生理機能、特性をコントロールすることで、より長期の保存が可能となり、また、美味しくする技術が発展してきています。例えば、不活性ガス(窒素や炭酸ガス)を加えて野菜などの呼吸を抑えてエネルギーの損失を抑える技術、電圧を加えて凍結温度を下げる技術、高湿度により水分の蒸散を抑えて鮮度を維持する技術、オゾン発生による菌の増殖を抑える技術など、さまざまな研究が進み、また、活用されています。
今回は、現在、注目されている貯蔵方法である(公社)氷温®協会の氷温®の技術をご紹介します。また、 「氷温®」は、(公社)氷温®協会が定める基準や技術を正しく実施し、かつ、食味数値も含む認定基準を満たした場合に交付され使用することができます。
2 氷温®技術とは (公益社団法人氷温®協会)
食品は、凍り始める温度(氷結点)がそれぞれ異なります。例えば、サラダ菜は-0.5℃、ジャガイモは約-2℃、サクランボは、-3.8℃、牛肉は、-1.6℃などとなります。この食品が凍り始める温度から0℃までの間の未凍結温度域を「氷温
®域」としています。
この氷温
®は失敗から発見された技術なのです。1970年、梨の長期貯蔵の研究をする中で、冷蔵庫の故障によって貯蔵温度が設定より低くなってしまい、梨が凍ってしまいました。しかし数日後、再び梨を確認してみると凍らずに貯蔵できている梨がありました。0℃を冷蔵と冷凍の境界にすることに疑問を感じ、0℃と氷結点の間にこそ未知の世界があるのではないかと考え、冷蔵より長い期間保存が可能となるこの温度帯の研究が始まりました。
氷温®により、貯蔵期間は通常の冷蔵と比べると長いもので約3倍まで伸びることが分かりました。さらに、成分を調べたところ、牛肉では
呈味※1の指標となる「遊離アミノ酸含有率」
※2が増加していることが分かりました(氷温熟成®)
※4。また、食品の貯蔵において重要な細菌数は、冷蔵と比べると格段に低い数値で維持できることも分かってきました。
※1呈味(ていみ)とは、食べ物の味。甘味、塩味、酸味、苦味、うま味など。
※2牛肉は、枝肉の状態で、「歩留等級」と「肉質等級」を組み合わせた15段階で格付が行われています。そのうち、肉質等級は、脂肪交雑で行われており、第9回全国和牛能力共進会において、脂肪酸の一つであるオレイン酸の割合(オレイン酸は、牛肉に含まれる不飽和脂肪酸で、オレイン酸が多く含まれていると、牛肉は風味と口当たりがよいとされます。)※3が審査項目に入るなど、化学成分への関心が高まっています。同様に、うま味の指標として、グルタミン酸などアミノ酸の含有量も測定されるようになってきています。
※3 【レポート】 豊後牛にもっとセールスポイントを 〜ブランド確立に向けた大分県の取組み〜(2013年) を参照。
※4 )氷温熟成®とは、(公社)氷温®協会が認定する氷温®技術の一部です。食味数値を含む 認定基準を満たした場合のみに氷温®協会から認定され、「氷温®」「氷温熟成®」 「氷温®貯蔵」などの商品表示を付すことが可能となります。
この原理は、寒い地域で昔から行われている、雪の下に野菜を保存する方法と通じます。
「雪の下にんじん」、「雪の下キャベツ」などの名称で売られる野菜は、雪の下で保存すると、凍らないように自ら糖度を上げることでぐっと甘みが増すことが知られています。これを現在の技術で、食品ごとに適切に温度管理することを可能としたのが氷温®技術です。
この冷蔵でもなく、冷凍でもない氷温®で貯蔵すると、野菜・果物などは、冷蔵より長く鮮度を維持することが可能となり、劣化を防ぐことができるようになります。また、お肉では、冷凍では進まない熟成が、この氷温域では進むことから、甘みや旨みが増し、美味しいお肉となります。
3 おわりに
野菜の生産は、気象の影響を受けてなかなか計画通りにはいきません。豊作の年もあれば、不作となってしまう年もあります。価格も数日で変動することもあり、鮮度を落とすことなく貯蔵ができたら、生産者にとっても、また、消費者にとっても安定した食品供給、食品ロスの削減に大きく貢献するのではないでしょうか。
また、この氷温®貯蔵により、畜産物や魚介では、熟成が進み美味しくなるとのこと、ぜひ試してみようと思います。
氷温®技術の研究は今も続けられており、今後ますます幅広い分野で、さらなる美味しさへの活用が期待されます。
公益社団法人 氷温®協会
鳥取県米子市大篠津町3795-12
HP:https://www.hyo-on.or.jp/
※氷温®協会が、認定した食品には左記の認定マークが付けられています。
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このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 総務部 (担当:総務広報課)
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