各工場では農林水産省の事業などを活用し長時間労働の是正に向けた取り組みを実施しています。取り組み例についていくつか紹介します。
ア.多能工化の取り組み
多能工化とはさまざまな作業が可能な作業員を育成し、人材の流動性を向上させるものです。
製糖工場で時間外労働が多い要因の一つとして、特殊技能を持つ特定の人物が操業する上で欠かせないこと、その技能を持つ者の人数が少ないことが課題となっています。この課題の解決のために、(1)資格取得のための講習会やOBを呼んでの技術講習などを通じた職員の能力向上(2)資格取得者に対して給与面での優遇や正社員での登用などのインセンティブを用意することで、資格取得の意欲向上−の取り組みを行いました。これらの取り組みによって5人の職員が2級ボイラー技士免許を取得し、ボイラーと電気の管理が行えるようになったことで、人数の少なかったボイラー技術者の交代勤務が可能となりました。
イ.施設整備などによる必要人員を削減する取り組み
(1)集中制御室(写真1)を整備し、圧搾から分離までの各監視制御を1カ所に集約することでそれぞれに必要だった監視制御要員をより少ない人数に削減する取り組みがあります。
整備前は各工程の制御装置の近くに1〜2人、合計10人ほどの配置が必要だったところ、集中制御室を整備することで5人ほどに減らすことができます。
(2)一定時間ごとに製品(粗糖)のサンプルを採取して水分量を測定する作業が必要であり、自動水分測定が可能なセンサーなどを設置することによってサンプリング作業を大幅に削減する取り組みもあります。
整備前はサンプリング作業を行う職員が1人必要でしたが、整備後はほぼすべてのサンプリング作業が自動化され、職員1人分の作業が削減できます。
(3)清浄工程で使われる石灰混和層(写真2)では定期的に付着したごみなどを洗浄する作業が発生しますが、ごみなどを自動で排出することができるように改良、整備することでこの洗浄作業を大幅に削減しています。
整備前は104時間かけて行っていた清掃作業の8割が削減され、およそ83時間分の労働時間が削減できます。
ウ.労働環境を見直すことで長時間労働を是正する取り組み
労務管理を徹底し、不必要な長時間労働を削減することと、労働時間が基準に迫るような職員に対して定時での退社を促すような取り組みで長時間労働を是正しています。定時での退社を促した場合、各工程で1人少ない状態での作業になってしまいますが、監視作業以外の先にできる作業を終わらせておくなどの工夫を行い、少ない人数での稼働を可能にします。
また、農作業を行う期間や工場施設の洗浄を行う期間などを計画的に設定し、製糖を止めることで休日を作る取り組みも行っています。