エネルギー源といっても、特にスポーツはしていないし、もう大人で成長しないから、そんなに必要ないんじゃない?と思われるかもしれません。しかし、ただじっと寝ていても、食べたものを消化吸収していても、呼吸するときにも、頭の中で何かを考えるだけでも、さらには、体温を調節したりするなど、生きるためにエネルギー源は必要です。食べた炭水化物は唾液、胃などで大まかに分解され、小腸で単糖に分解されると同時に吸収されて肝臓に運ばれます。ブドウ糖はそのまま、他の糖質は肝臓でブドウ糖に変換されて血糖(血液中のブドウ糖)になり、各細胞に運ばれてエネルギーになります(図3)
8)。脂質もエネルギー源にはなりますが、脳・神経細胞、赤血球は、基本的にブドウ糖だけしか利用できません。一方、筋肉ではブドウ糖も脂質もエネルギー源として利用できます
9)。ヒトは自動車ではないので、生きるためにエネルギー源が必要です。
図3の摂取割合とは、一日に摂取する総糖質量に対する各糖質の大まかな推定値で、「日本食品標準成分表(八訂)」1)および「日本人の食事摂取基準」2020年版7)を基に計算しました。糖質が含まれる食品は、主食としてコメ、パン、麺などがあり、ジャガイモやサツマイモも含め、これらは水分を除くと7、8割またはそれ以上が糖質であり、糖質のほぼ100%がデンプンです。砂糖や異性化糖は調味料として使用される分がほとんどで、家庭で使われる砂糖もありますが、いずれも菓子だけでなくさまざまな加工食品や飲料に配合されたものを摂取しています。乳糖は牛乳と乳製品由来の糖類です。ブドウ糖、果糖、麦芽糖、その他の糖が野菜や果物に含まれますが、野菜や果物100グラム当たり5%に満たないものがほとんどであり、食べる量もそれほどたくさんではないので、摂取されているものはおおむねこの図に示すものになります。
それでは、炭水化物(糖質)が足りなくなったらどうなるのでしょうか?まずは、筋肉などのタンパク質が分解されて糖に変換されます。次に、脂肪を分解して、ケトン体ができていきます。脳の重さは体重のわずか2%(1200〜1500グラム)ですが、摂取エネルギーのうち約20%を消費します。脳のエネルギー貯蔵量は10〜15分でなくなってしまうので、安定した血糖値(空腹時でも70−109mg/dL)が必要です。糖質制限をすると、頭がぼーっとしたり、考えがまとまらなくなったりするのは、脳に糖(エネルギー源)が足りなくなっているからです。