国産牛肉の安定的な生産のために
最終更新日:2015年12月15日
冬になるとすき焼きやローストビーフなど、牛肉を召し上がる機会が増えるかと思いますが、みなさんは国内でどのように牛肉が生産されているかご存知でしょうか。
国内で飼育されている肉になる牛(肉用牛)は主に、(1)和牛(黒毛和種や褐毛和種、日本短角種、無角和種)、(2)乳牛として知られるホルスタイン種、(3)和牛と乳牛をかけあわせた交雑種です。
肉用牛の生産は一般的に、使用する施設、飼育技術、飼料等が異なるため、母牛を飼育し子牛を生産する肉用子牛生産者(繁殖農家)と、その子牛を購入し育てる肥育牛生産者(肥育農家)で分業して行っています。
今回は、和牛の肥育牛生産の現場の特徴をご紹介します。
時間と手間が不可欠
肥育農家は繁殖農家が9か月齢程度まで育てた子牛を家畜市場等で購入します。購入された子牛は、肥育農家の様々な管理の下で平均20か月程育てられます。
牛は生き物ですので餌や水が必要です。国内で飼育されている牛は、ほとんどが牛舎で育てられているため、毎日の餌やりが欠かせません。牛の主食となる稲わら等の草類と、おかずとなるトウモロコシ等の穀物類をバランスよく与えます。
また、牛が病気にかからないよう、毎日の体調管理や衛生面の管理等、様々な対策をとることも欠かせません。
こうした毎日の管理に時間と手間をかけ、元気に育つよう、生産者から愛情をたっぷり注がれた牛は、2歳〜3歳頃にようやく出荷されます。
餌を十分与えられ、のびのび育つ肥育牛(黒毛和種)
生産を続ける
出荷された牛は、と畜・解体され、「枝肉」の状態で取引されます。この枝肉の価格が肥育農家の収入を左右します。枝肉価格は、品種、世の中の経済情勢や需要と供給のバランスによって変動します。現在の黒毛和種の平均枝肉価格は1頭あたり100万円超と高水準ですが、4年前の平成23年は70万円程と、今よりも30万円も低い水準でした。
また、牛を育てるためには時間と手間だけでなく、コストもかかります。実は現在、コストの約6割を占める子牛購入費が非常に高騰しています。また、飼料価格も高い状態にあります。繁殖農家の高齢化や離農等の影響から、家畜市場等に出荷される子牛の数が減少傾向にあり、需要が供給を上回っているためです。過去、40万円程で推移していた黒毛和種の子牛平均取引価格は、今年に入ってから60万円を超えています。
今年購入してきた子牛を肥育し、出荷する2年後、枝肉価格がまた下がった場合、、次の牛を育てる資金が足りず、生産を続けることが難しくなってしまいます。
だからといって、一旦牛の頭数を減らしてしまえば、、元の頭数まで回復させるのに長い時間がかかります。飼料費や光熱費などの常にかかるコストがある中で収入も減ってしまうため、新たに牛を増やすための子牛購入に資金を大量投入できないためです。
この先も安心して国産牛の生産を
そこで、肥育農家に安心して継続的に生産を行ってもらうための仕組みが肉用牛肥育経営安定特別対策事業(新マルキン事業)です。全国で販売された肥育牛1頭の枝肉の平均価格が、販売までにかかった平均生産コストを下回った場合、その差額の8割を1頭あたりの補てん金として肥育農家に交付します。当機構では、生産者が継続的に肉用牛を生産できるよう支援し、国産牛肉の安定的な供給を目指しています。
新マルキン事業の仕組み
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