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匠の技術で牛肉を消費者に 〜兵庫県牛肉マイスター制度について〜

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最終更新日:2023年11月20日

 「歩留約36%」、これは、牛(生体)1頭からさまざまな処理過程を経て、普段、私たちがスーパーなどで目にするパックに入ったお肉(精肉)になるまでの出来高の割合です。つまり、牛(生体)1頭で690kgから、精肉は249kgしか得られません。貴重な牛肉を無駄なく効率的に処理し、多くの消費者の皆様に食べていただくためにも、高度な技術を持つ食肉処理技術者の育成は必要不可欠です。
 牛肉は、消費者の手に渡るまでに「生体」、「枝肉」、「部分肉」、「精肉」と形態が大きく変わります(写真1)。まず、牛(生体)を処理(と畜)し、皮・内臓などを除去し、左右を半分に切断して「枝肉(半丸)」にします。この枝肉から骨や余分な脂肪などを除去し、各部分に分割したものが「部分肉」です。
 さらに部分肉から脂肪・すじなどを除去し、切り身・スライス・ミンチにしたものが「精肉」と呼ばれます。
 牛肉はさまざまな筋肉から構成されているため、食肉処理技術者のカット技術によって、精肉として販売できる量が大きく異なります。そのため、カット技術の向上を図ることが大変重要となっています。
 このような中、食肉処理技術者の高齢化が進み、人手不足の問題とあいまって、若手技術者の育成は、重要な課題となっています。
 今回は、この課題の解決に向けて、兵庫県下で独自の取り組みを始めた「兵庫県牛肉マイスター制度」について、ご紹介します。

写真1 牛肉の形態の変化
写真1 牛肉の形態の変化

兵庫県牛肉マイスター制度とは

 兵庫県食肉卸事業協同組合(以下「兵庫組合」という)(注1)が、食肉処理に携わる若手技術者への指導体制の構築・強化を図り後継者不足に対応することを目的として、平成30年度から開始した独自の認定制度です。
 兵庫県牛肉マイスターの認定を受けるためには、(1)指導者養成セミナーの受講、(2)牛部分肉製造マイスター資格の取得、(3)但馬(たじま)牛(うし)・神戸ビーフに関する講義の修了試験合格の3つの要件を満たす必要があります。

(1)指導者養成セミナーの受講

 食肉処理技術者の世界は、職人気質(技術は見て盗むもの)な部分もあり、一人前になるには10年以上の経験が必要と言われています。「指導者養成セミナー」では、熟練技術者が若手の技術者にどのように技術を伝えればいいか、指導方法を習得(教え方を学ぶ)という視点で、カリキュラムが構成されています。受講生は、3日間かけて、座学として、品質、衛生管理や原価計算など、実習として技術指導法を中心に学びます(写真2)。講師は、公益社団法人全国食肉学校(注2)から派遣された食肉の指導のプロが務めています。
 令和5年度のセミナー受講者は、職場(お肉屋さんや食肉卸売会社など)の推薦を受けた8名であり、熱心に学ばれていました。

写真2 骨の形状を確認しながらカットを指導する様子
写真2 骨の形状を確認しながらカットを指導する様子

(2)牛部分肉製造マイスター資格の取得

 原則として食肉処理製造実務経験7年以上の者が受験対象で、食肉処理技術の維持向上を目的として設立された部分肉製造技術者の真のプロに与えられる資格を取得する必要があります(講義2日、筆記試験1日、実技試験1日(主催:全国食肉学校))。

(3)但馬牛・神戸ビーフに関する講義の修了試験合格

 「関西は牛肉文化」と言われますが、その中でも兵庫県は日本を代表する但馬牛・神戸ビーフの銘柄を有しています。世界にも認知されているこの県の特産品のブランド力の向上などに貢献することも兵庫県牛肉マイスターの能力に必要なものとされています。兵庫県農林水産部畜産課から講義を受け、修了試験に合格しなければなりません。
 この難易度の高い兵庫県牛肉マイスターの認定者は15名(令和5年9月現在)です。認定者は、兵庫県牛肉マイスターとしての誇りを胸に、自身の職場でリーダーとして活躍するだけではなく、兵庫組合が実施する「後継者育成セミナー」で他社の技術者に対しても講師を務めるなど、会社の枠組みを越えて若手技術者に自身の技術や知識を伝え、業界全体に貢献しています。
 今回ご紹介した兵庫県牛肉マイスター制度は、「食肉処理に携わる若手技術者の育成」という業界の課題に対する先進的な独自の取り組みであり、alicは、畜産業振興事業によりこの取り組みを支援しています。
注1:兵庫県下の食肉卸 売事業者などの組合員(55者(令和5年9月現在))のために、共同事業を実施する組合
注2:昭和49年に開校した伝統ある食肉分野のわが国で唯一の公的な職業能力開発校
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196