消費者コーナー 「食」の安全・安心や食育に関する情報、料理レシピなど

ホーム > 消費者コーナー > 業務などに関する解説・紹介記事 > 業務の解説・トピックスの過去掲載分 > 砂糖の働きと料理

砂糖の働きと料理

印刷ページ

最終更新日:2010年12月2日

チョコ
 (独)農畜産業振興機構(ALIC)から、皆様の食生活に関連した情報をお届けしています。今回は「砂糖の働きと料理」について取り上げたいと思います。
 砂糖は、料理には欠かせない甘味料ですが、料理に砂糖を使うと、甘みを出すだけの働きだけではなく、砂糖を使うことによって、保存性を高めたり、味わいや食感、ボリューム、仕上がりの美しさを演出することが出来ます。このような砂糖の重要な働きについて紹介しましょう。

1 砂糖の親水性

 食品の調理や加工においては、水が大変重要な役割を果たしています。食品には水分があり、砂糖はその食品の中の水を奪い取ったり(脱水性)、あるいは保持したり(保水性)という働きがあります。

・肉をやわらかくする

 ビーフシチューやカレーなどの肉料理の下ごしらえの際に、あらかじめ肉に砂糖を揉み込んでおくと肉が軟らかくなります。砂糖は水によく溶ける働きがあり、「脱水性」「保水性」を発揮し肉の組織の間に入り込み砂糖が水分を引きつけコラーゲンと結びつき料理を美味しく仕上げます。

・泡立ちを保つ

 メレンゲやホイップクリーム・マシュマロを作るときには、卵白を泡立てて作ります。その際に砂糖をたっぷり入れると泡を形成する卵白のタンパク質の水分を砂糖が抱え込み、泡が安定するので、泡立ちがよくなり泡同士のくっつきを抑えてきめ細かな状態を保つことができます。

・でん粉の老化防止

 砂糖にはご飯や餅などのでん粉食品をしっとりやわらかくする働きがあります。ご飯や餅などを放置すると次第に粘りを失い堅くなってしまいますが、これはでん粉の老化によるものです。
 砂糖を加えると砂糖の親水性により糊化状態を保つことができ、羊羹や餅菓子・寿飯が固くならないのはこのためです。

・防腐効果

チョコ
 カビや細菌などの微生物は水がないと増殖できません。ジャムや羊羹などのような砂糖をたくさん使った食品が腐りにくいのは、砂糖が食品の水分を抱え込み微生物が水分を利用しにくくなるからです。

2 砂糖の造形性効果

 親水性のほかに食品の物性を改善する効果を持っています。調理の際に砂糖を加えることにより粘りや硬さを調整するほか、かさやボリューム感、温度による物性の変化をもたせるための食品にも利用されています。

・食感やボリューム感を変える

 小麦粉の生地は練り込まれた砂糖の比率により生地の硬さや粘りが決まります。
 スポンジケーキのように気泡を安定的に一定の体積を保つことやマシュマロ、アイスクリーム、ヌガーのように気泡を取り込み、ボリュームを出すことも出来ます。

・熱凝固性

 タンパク質は加熱により固まりやすい性質があります。卵の白身が加熱により白く固まる現象が代表的です。
 この現象を熱凝固性といいます。砂糖には熱凝固性を左右する力があり、例えばカスタードプリンなどを作るときにも砂糖を加える量によって硬さが変わってきます。
 

卵・牛乳(1:2)(%)

砂糖(%)

硬度

100

0

27.5

90

10

23.0

80

20

14.9

70

30

8.1

60

40

5.2

カスタードプリンを作る際、砂糖の量を多くするに従って凝固力は減少します。

砂糖の濃度が30%を超えるとゲル状になり、形が整わなくなります。

「砂糖百科」より

 
  砂糖を加えることにより卵や牛乳の凝固温度が高くなり固まりにくくなることで、よりやわらかでなめらかな口あたりとなるのです。

3 発酵促進

 パンを作る際には酵母(イースト)を使います。それは糖質を発酵によってできる炭酸ガスで生地を膨らませるためです。この炭酸ガスを小麦粉が閉じ込めてパンが膨らむのです。しかし、小麦粉には酵母が利用できる糖質が少ないので、発酵源として砂糖を加えると酵母の働きが活発化して発生する炭酸ガスによって、ふっくらと仕上がります。
 このように砂糖には様々な働きがあります。
 砂糖の働きを知り、特長を活かした美味しい料理にチャレンジしてみてはいかがでしょう。

参考文献
 「砂糖百科」社団法人糖業協会・精糖工業会
 「砂糖の知識」砂糖を科学する会



(消費科学連合会「消費の道しるべ」(平成22年9月号)に掲載)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196