【特別寄稿】包括的かつ一元的な食品表示制度の創設
最終更新日:2013年5月8日
消費者庁長官 阿南 久(あなん ひさ)
昭和25年2月17日生
昭和47年3月 東京教育大学体育学部卒業
平成3年6月〜平成19年6月 生活協同組合コープとうきょう理事
平成11年6月〜平成15年6月 東京都生活協同組合連合会理事
平成13年6月〜平成19年6月 日本生活協同組合連合会理事
平成15年8月〜平成19年8月 全国労働者共済生活協同組合連合会理事
平成19年10月〜 全国消費者団体連絡会 事務局
平成20年5月〜 全国消費者団体連絡会 事務局長
食品表示制度の一元化に向けた検討
複数の法令により規定されている食品表示制度の改善は、長期にわたり課題とされてきました。平成21年9月の消費者庁の設立により、食品衛生法や農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)など食品表示に関する法令に基づく表示基準の策定事務を同庁が一元的に所管することとなり、食品表示に関する法制度を一元化する環境が整ってきています。
平成22年3月30日に閣議決定された消費者基本計画では、「食品表示の関係法令を統一的に解釈・運用を行うとともに、現行制度の運用改善を行いつつ問題点等を把握、検討し」、食品表示に関する一元的な法律について、「平成24年度中の法案提出を目指す」ことが決定されました。このことを受けて、食品表示一元化検討会が開催されました。
本検討会では、次のような点について議論を行い、報告書を取りまとめました。(図1)
・食品表示の一元化に当たって予め決めておくべきこととして、食品表示制度の基本的な考え方
・食品表示の一元化の機会に、より多くの消費者が実際に商品を選ぶ際に役に立つ分かりやすい食品表示の実現を目指すために併せて検討事項とされた事項
図1 食品表示一元化検討会報告書の概要
食品表示法について
食品一般について、その内容に関する情報の表示ルールを定めた法律として、現在、食品衛生法、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)、健康増進法の3法があります。
これら3法に基づいて複数の表示基準が定められ、それらの基準に従って表示が行われていますが、制度的に複雑であるとともに、用語の定義が異なるなど分かりにくいものとなっていました。
このため、新たに食品表示法を制定することにより、3法の複雑なルールを統合するなど食品表示に関する包括的かつ一元的な制度を構築し、食品の摂食時の安全性確保、一般消費者の食品選択の機会確保に資する適正な食品表示のための基盤を整備することとしているのです。
まず、食品表示法の目的は、消費者基本法の基本理念を踏まえて、表示義務付けの目的を統一・拡大することにあります。
また、現在、任意表示である栄養表示については義務化することとし、原則として、全ての食品、事業者を対象とすることとしています。
さらに、不適正な表示を是正するための行政庁の指示の対象の拡充、行政庁の調査権限への書類提出命令等の追加などを行うこととしています。
このほか、現行JAS法の申出制度の対象の食品表示全体への拡大、適格消費者団体の差止請求制度の導入等についても、検討を行っています。なお、食品表示法案については4月5日に閣議決定され、国会に提出されたところです。(図2)
図2 食品表示法案の骨格
おわりに
日々の食生活を通じて健康を維持していくことは多くの消費者の願いであり、これを担う食品に対して、大いに期待するものです。消費者が安心して食品を購入する上で、事業者からの正確な食品表示や適正な情報の提供は不可欠であり、消費者の関心が高い健康食品の適正な情報の発信等は切に望まれるところです。
「農畜産業及び関連産業の健全な発展と国民消費生活の安定を目指して」(同機構HPより)、様々な事業を展開されてきた独立行政法人農畜産業振興機構におかれても、さらなる御支援、御協力をお願いしたいところです。
消費者庁が発足し、4年目に入りました。前述した課題への対応をはじめ、これからも引き続き、消費者や事業者など各関係者の皆様からの御意見・御助言をいただきながら、国民の大きな期待に応えられる食品表示制度の実現に努めてまいります。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196