【第一線から】 多様な育種と意欲的な生産者による長崎県のばれいしょ生産
最終更新日:2012年7月25日
◆北海道に次ぐ、全国第2位のばれいしょ産地長崎県
石垣で作られた段々畑
九州の西端に位置する長崎県は、温暖な気候を活かして、1年を通して、多くの野菜の栽培が可能です。一方で、海岸線の総延長が北海道に次ぐ長さがあり、複雑な地形で平坦な土地が少なく、石垣で作られた段々畑が数多く存在するなど、農業に不利な面もあります。こうした中で、長崎県内では、諫早市から島原半島にかけて、古くから暖地ばれいしょの栽培が盛んに行われており、北海道に次ぐばれいしょ産地となっています。ばれいしょは、冬に種いもを植え付けて春に収穫する「春作」と、秋に種芋を植え付けて晩秋に収穫する「秋作」があり、生産者の多くは、春作と秋作の二期作を行っています。
◆暖地栽培に適したばれいしょの育種
彩鮮やかなドラゴンレッド「西海31号」
日本国内のばれいしょ栽培を支える育種場は、北海道と長崎県に置かれています。長崎県では、1950年から暖地向けのばれいしょ品種開発が開始され、これまでの61年間で14品種が育成されました。
1978年には、安定した収量が見込め、現在の栽培の主体となっている「ニシユタカ」が開発されました。近年は、食味のよい「アイユタカ」やアントシアニンが含まれ加工用として期待されている「西海31号」が開発されました。
病虫害に強い「さんじゅう丸」
また、長崎県では、ばれいしょの二期作が可能であることから、連作を行う生産者が多く、以前からそうか病、青枯れ病、ジャガイモシストセンチュウ等に悩まされています。長崎県農業技術開発センター馬鈴薯研究室の中尾室長によると、最近、これらの病虫害に抵抗性を持つ画期的な新品種「さんじゅう丸」を開発し、収量もニシユタカ並みであることから、今後の西南暖地での有力な品種として普及が期待されています。
◆意欲的にばれいしょ生産に取り組む後継者
池田進さん(64)と池田功さん(38)親子
以上のような品種開発が進む中、長崎県では、ばれいしょ生産者の後継者が育っています。
後継者の1人、大規模ばれいしょ生産者の池田功さん。雲仙市愛野町でばれいしょを栽培していましたが、平成 20 年に諫早湾干拓地において営農が開始されると同時に入植し、3・5 ha の農地を活用して、環境保全型農業によるばれいしょ栽培を行っています。
渡部大地さん(32)
諫早湾干拓地は、平坦な農地が広がり、栄養塩類を豊富に含んだ肥沃な土壌で、農業用水も完備するなど、ばれいしょ栽培には適した条件が整っています。功さんは、農林水産省農業者大学校を卒業すると同時に就農し、父母、妻と家族4人で、ばれいしょを中心に、水稲、たまねぎ、花きのスターチスを組み合わせた大規模経営を行っています。干拓地に広がるこの圃場ではばれいしょの連作障害を回避するため、たまねぎや緑肥等との輪作を行っています。また、功さんは父の進さんとともに、野菜部門の長崎県知事賞を受賞するなど地域のトップファーマーとして、活躍をされており、加えて進さんは、諫早地域の「諫早湾干拓環境保全型農業推進協議会」の会長をされるなど、家族そろって第一線でご活躍されています。
一方、南島原市において経営面積2 ha の段々畑でばれいしょを栽培する渡部大地さんは、父母と3人で、ばれいしょ、アスパラガス、たまねぎ等の経営を行っています。たい肥の適正な投入により病害の発生を抑制するなどの取組みを行うとともに、圃場の近くにバーベキューができる施設を自前で建設し、都市部から農業体験に来た実習生に採りたての野菜を振る舞うなど、都市と農村の交流も積極的に行っています。また、有望な新品種の「さんじゅう丸」を試験栽培するなど、非常に研究熱心です。
◆経営安定によるばれいしょの安定供給
天候に左右される野菜生産は、豊作等によって市場価格が著しく低落し、赤字となる場合があります。当機構では、生産者、都道府県及び国が積み立てた資金を財源に、野菜価格の低落が生産者の経営に及ぼす影響を緩和し、消費者への野菜の安定的な供給を図るための「指定野菜価格安定対策事業」を実施しています。池田さんや渡部さんがばれいしょを栽培している長崎県雲仙市や南島原市(旧北・南有馬町)もこの事業の対象地域となっています。
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