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【トップインタビュー】6次産業化の推進について

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最終更新日:2014年7月2日

株式会社農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE) 代表取締役CEO 大多和 巖氏に聞く

地域から日本を元気にする取り組みとして6次産業化が推進されています。
平成25年2月に開業した株式会社農林漁業成長産業化支援機構(A ─ FIVE)で、6次産業化の推進に取り組んでいる大多和社長にお話を伺いました。

A-FIVEが設立された背景と、A-FIVEの果たす役割について教えて下さい。

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農林水産業・農山漁村から日本を元気にするためには、農林漁業者が自らの生産物の付加価値を高めて消費者に届ける取り組み(地産地消や6次産業化)を推進し、地域の活力を引き出すことが重要です。当機構はこのような取り組みに対して出資やマッチング等の経営支援を一体的に行うことを目的に設立されました。
1次産業と2次・3次産業をマッチングさせ、新たな価値を創り出し、原材料となる農林水産物等の価値を高めながら消費者につなげ、1次産業と2次・3次産業がWin─ Winの関係となって成長することを狙いとしています。
例えば、道の駅で地元の農家の方々が色々なものを工夫してジャムにしたり、お菓子にしたりして販売しています。それも6次産業化です。しかし、それらの取り組みをもう一歩進めて、せっかく良いものだから、これを都会の人口の多いところに届ける仕組みを作るため、地銀等が参加しているサブファンドが2次・3次産業の人達を紹介し、農業者が連携して事業を行うことによりパートナー企業が持つ加工技術や販売ノウハウをフルに活用し、大消費地につなげていくようなことができればと思っています。
消費者の皆様からみても、安心・安全な国産の農産物に新たな付加価値が付与された商品が提供されるメリットがあります。更に、このことによって、地域に雇用が確保され若い人が集まることで地域経済が活性化し、ひいては日本経済にもよい影響となると考えています。

サブファンドからの出資のスキームや出資金の使途等について教えてください

6次産業化事業体への出資は、サブファンドを通して出資することを基本としています。サブファンドは、地銀等が主体となって組成されており、A-FIVEもそれぞれのサブファンドに対し、地銀等の出資額と同額を出資することとしています。

現在(6月23日時点)、サブファンド総数は43件、コミット(出資約束)金額の総額は約680億円(A-FIVEは340億円)となっています。このうち36件が地銀主体ですが、JAグループや三大メガバンクが出資する広域的なもの、あらかじめ定めたテーマに対して出資を行う、テーマファンド
と呼んでいるものがあります。
ファンドからの出資は、融資に比べ使途の制約が少なく、設備投資のほか人件費などの運転資金にも活用できるなど自由度の高い資金であり、様々な事業に取り組むことができます。また、出資によって会社の資本金が増え、財務体質が強化されることで金融機関からの融資が受けやすくなるなど、大きな事業に取り組むことが可能となるというメリットもあります。
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農家の方などで、この取組みを利用することを希望する方はどちらに相談するとよいのでしょうか

出資を受けることを検討される場合は、各地のサブファンド又はA-FIVEに相談していただきたいと思います。

具体的に出資を決めた事例としてどのようなものがありますか

A-FIVEが出資を決めた事案は現在(6月23日時点)24件です。畜産関係が5件、野菜関係7件のほか米、水産業、林業など幅広い分野に及んでいます。

畜産関係では、「地域酪農基盤を活用した高品質乳製品の販路拡大プロジェクト」(岩手県九戸郡)があります。この取り組みは、かつて農協がやっていたミルクプラントを活用して、地元の酪農家15戸が主導し、牛乳・乳製品の製造に取り組んでいるのですが、今回、サブファンドの出資を受け、新たな機械設備の導入により高温保持殺菌牛乳等に加え、地域特産品を活用したヨーグルト等の新商品を開発し、地域外のスーパーや高速道路SA、道の駅等への販路拡大を目指しています。

「地鶏の加工販売プロジェクト」(鹿児島県霧島市)は、養鶏事業者が外食企業と連携し、鹿児島県が開発した「黒さつま鶏」の加工のほか、パートナー企業(居酒屋チェーン店)の出店の拡大に合わせ、鹿児島県の農畜産物の販売拡大を目指しています。

野菜関係では、「業務用カット野菜の加工・販売プロジェクト」(広島県福山市)があります。
この取り組みは、農業者が各地の生産者や青果会社と共同で産地リレー体制を構築するとともに、パートナー企業の高品質なカット加工技術や販路を生かし、西日本の大手外食事業者や量販店等への販売促進を目指しています。

6次産業化の推進によって、政府が目指す農業所得の倍増にもつながると考えてよいですか

2次・3次産業事業者の販路とノウハウを活用した取り組みを支援することとしていますが、サブファンドは計画の段階から、パートナー企業と農業者がしっかりとした信頼が築かれるよう支援します。
1次産業の皆さんは、農林水産物を作るのは上手いけれど、どうしても売るのは上手くない、このため、これまでは、2次・3次産業への食材の提供だけにとどまっていたと思います。1次産業の皆さんが主導して価格決定にも関与して、2次・3次産業の皆さんと良い意味で一緒に仕事するというのが、この制度の狙いです。
最初は2次・3次産業の方々からは、以前はもっと安く農林水産物を仕入れられたのにという声を耳にすることがありました。
しかし、産地偽装問題や農薬残留問題等がマスコミをにぎわすと、今度は生産者と直接結び付いていることが強みとなる。そこにWin-Winの関係が出来てくると思います。消費者の中にも多少値段が高くても安心・安全な品を求める人も増えていると思うのです。その結果、農家の所得増加につながればよいと考えています。

6次産業化ファンドの推進(サブファンドを活用した支援)に当たってA-FIVEとしての課題があれば教えてください

6次産業化ファンドの推進に当たっての課題の一つは、制度の普及・浸透です。
特に、1次産業の皆さんに色々な機会を通じて制度の普及に努めていますが、今まで、出資という仕組みに馴染みがなかった。事業を起こす時に、まず悩むのが資金調達ですが、今までは補助金や金融機関の融資が中心でした。出資の利点は使い道が自由なことです。
補助金は使い道が決められており、融資は担保や保証人が必要になります。それぞれに良い点と悪い点がありますが、出資は割と使い方が自由ですから、設備投資のほか人件費などの運転資金にも活用できます。
しかし、農業者にしたら手続きが面倒臭い。
出資者に色々言われるより、補助金もらった方が良いと思う人も、まだまだ多いようです。
A ─ FIVEやサブファンドでは、相談窓口を設けており相談件数も増えてきています。
最近では、サブファンドに出資している地銀等の皆さんが案件を発掘して持って来るケースも増えています。
どんな場合に出資が受けられ、どのような効果があったかを紹介することで、件数を増やしていきたいと考えています。

A-FIVEが出資を決めた事案は現在23件ですが、今後は毎月5〜6件程度のペースで出てくると考えています。
我々としては年度内に100件位になればと思っています。

もう一つご紹介しておきたいのは、サブファンドを全部集めた会合で、実際に出資した3人の社長さんにパネリストとなっていただき、色々な優良事例を報告してもらいました。
一番うれしかったのは、出資の審査は厳しかったが、プロジェクトが上手く立ち上がってみると、3人が揃って信用が付いたとおっしゃるわけです。融資してくれる地銀や海外のバイヤー等から、「この事業には国の関与がある」ということで、自分たちの会社の信用が付いたということを言ってくれています。

これまでのご経験の中で、6次産業化やこれからの日本の農業について感じることがございましたら教えてください

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A-FIVEは「攻めの農林水産業」のフロントランナーのように言われており、皆さんが大変関心を持っていただいているのは良いことですが、それなりにプレッシャーもあります。
とにかく、地域が元気になる。
いかにして、若者が地元に戻るかということ、そのためには働き場所を地域に作るのが大事だと思っています。私はこのA-FIVEの仕事を通じて、日本の優れた農林水産物を世界に輸出することは本当に大切な仕事で、もちろん応援していくわけですが、もう一つはやはり、いかに若者が地元に戻れるか、いかに働く場が出来るかということです。
高度成長の頃は、自動車をはじめ色々な企業の工場が、全国至る所にあって、膨大な雇用を吸収しました。ところが今、そういうのが海外移転などで、無くなっている。
本当に小さい、5人とか10人とかのレベルでも、こういうプロジェクトが出来ることにより雇用が生まれるわけです。A-FIVEが投資決定するに当たって、その事業により雇用が何人生まれるかということは、大変重要な判断のポイントになっています。
ですから、創意工夫することによって、わずかであっても、そこで働く場が出来て、好きな人ができたら、結婚して、所帯を持とうかという世の中にしていかなければならない。
そのために、小さい動きかもしれませんがA-FIVEは大事な役割を担っていると思っています。
これからも、夢のある6次産業化の取り組みを支援していきたいと思います。

株式会社農林漁業成長産業化支援機構(Agriculture, forestry and fisheries Fund corporation for Innovation,Value-chain and Expansion Japan( A - F I V E))

代表取締役CEO 大多和巖

1942年生まれ
1966年 京都大学経済学部卒業、農林中央金庫入庫
2002年 農林中央金庫代表理事副理事長
2004年 株式会社農林中金総合研究所代表取締役社長
2010年 SMBC日興証券顧問
2013年 株式会社農林漁業成長産業化支援機構代表取締役社長CEO

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