アルゼンチンのトウモロコシ生産動向
最終更新日:2014年11月5日
調査情報部 米元 健太
はじめに
アルゼンチンの中部に広がるパンパ地域は、肥沃な土壌を有し、「世界の食糧庫」とも形容される有望な農業地帯です。同国の2013/14年度(3月〜翌2月)のトウモロコシ生産量は、2400万トンと世界第5位(市場シェア3・1%)と多く、また、肉牛を中心に牧草を利用した畜産が営まれ、飼料としての需要が少ないことから、輸出量は1100万トンと米国、ブラジル、ウクライナに次いで世界第4位(同9・0%)となっています。
日本は、世界最大のトウモロコシ輸入国であり、その90%程度を米国に依存していました。
しかし、2012年に北米で大干ばつが発生し、米国のトウモロコシ価格が高騰した際は、アルゼンチ
ンやブラジルなどからの輸入を増やし、以降、輸入元の多角化が進められています。
こうした状況を受け、機構では平成26年3月、パンパ地域にあるブエノスアイレス州の生産現場・団体
を訪問し、最近の生産・輸出状況等を調査しました。
生産動向
2013/14年度のトウモロコシの生産量は、前年度比11.2%減の2400万トンとなりました。
減産の理由としては、(1)は種適期の降雨量が少なかったこと、(2)好調な大豆の国際相場を背景に、トウモロコシよりも収益性が高い大豆の作付けが進んだこと、等が挙げられます。
輸出動向
トウモロコシ輸出は、政府の輸出管理政策により、まず、国内需要分が確保された上で、余剰分が輸出許可数量として設定される仕組みになっています。2013/14年度の輸出許可数量は、1600万トンに設定されましたが、実際の輸出量は、前年度比45.1%減の1250万トンと大幅に減少しました。
これは、(1)生産量の減少により輸出に回せる余剰分が大きく減少したこと、(2)米国で前年の干ばつから生産が回復して輸出も回復したこと、等が影響しています。
なお、日本は、2009年までは、アルゼンチン産トウモロコシの輸入実績はわずかなものでしたが、その後、一定数量を輸入しており、特に、2013年は米国産の減少を一部補完する形で、191万トンにまで拡大しました。
おわりに
トウモロコシの収穫風景
農場主と収穫前後の農場風景
アルゼンチン政府は、トウモロコシ輸出に対して前述のとおり、輸出許可数量を設定しており、生
産者は、希望する数量を必ず輸出できるという保証はありません。
この他、トウモロコシを輸出する際には20%の輸出税も課せられるなど、政府の輸出管理政策は生産
の足かせになっているとされています。
このため、2014/15年度も、トウモロコシの作付面積は縮小し、大豆の作付面積が拡大する見込みとされています。ただし、生産者は土壌保全目的でトウモロコシの作付けが義務付けられているため、作付面積は大幅には縮小しないとみられています。また、遺伝子組み換え(GM)種の普及で単収は増加しており、今後の生産量は現状の水準で堅調に推移するとみられています。
2014年に入り、米国のトウモロコシ生産、品質が安定していることで、日本は米国からの輸入を増やしています。しかし、アルゼンチンは引き続き有力なトウモロコシ輸出国であり、今後も同国の生産・輸出動向に注目が集まるとみられます。
今回、ご紹介したレポートの詳細は下記URLからご覧いただけますのでご参照下さい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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