米国のトウモロコシ生産動向
最終更新日:2015年3月4日
調査情報部 山神 尭基
米国は、世界のトウモロコシ生産量の約4割を生産しており、世界のトウモロコシ価格を左右する大きな存在です。同国の2013/14年度(9月〜翌8月)のトウモロコシ生産量は、3億5100万t世界第1位となっており、その大半が自国での肉牛、豚、鶏などの飼料やエタノール生産の原料として消費されるほか、輸出量も5000万tと世界第1位(世界シェア39.0%)となっています。
日本は、世界最大のトウモロコシ輸入国であり、輸入量の80%以上を米国から輸入しています。このため機構では、米国のトウモロコシ生産状況について主要生産州の中でも、輸出向けが多いアイオワ州を訪れ調査を実施しました。
生産動向
作付後のトウモロコシ畑(5月初旬)
米国農務省(USDA) が2015年1月に公表した国内外の主要農作物需給見通しによると、2014/15年度のトウモロコシの生産量は、前年度比2.8%増の3億6100万tと、2年連続の豊作となりました(図1)。
増産の理由としては、主に受粉期(7〜8月)にかけて生育に適した天候に恵まれ、高温障害による子実の不形成を回避できたことから、単位当たりの収量が増加したことが挙げられます。また、近年では、耐乾燥性種子などの種子改良が進んだことや、農業技術の進歩により密植が可能となったことなども単収増加に寄与しています。
実際、5月初旬にアイオワ州を訪問した際も、多くの農家で密植が行われ、大型の播種機で作付を行う光景を目にしました。
価格動向
この豊作により、2014年11月のシカゴ先物相場のトウモロコシ価格は、前年同月比9.5%安の1ブッシェル当たり3ドル76セント(447円:1米ドル=119円 2014年11月末日TTSレート)と、かなりの程度下落しています。干ばつにより減産した2012/13年度の価格が、1ブッシェル8ドル(952円)を超えた時期もあったことを考えると、その当時から半値以下に下落していることが分かります(図2)。
また、現在、トウモロコシ価格が下落しているため一部のトウモロコシ生産者は、収穫したトウモロコシを自家保留しています。そのため、来年度のトウモロコシの生産が始まる前にこれらの保管しているトウモロコシを放出するとみられるため、更に価格が下落する可能性もあります。
輸出動向
トウモロコシ圃場の様子
こうしたトウモロコシ価格の下落は、日本を含むさまざまな国々からの需要増に対応
した輸出を後押しします。
USDAによると、2015/14年度の輸出量は前年を下回るものの4千万t以上を維持しています。これは、2012年/13年度に干ばつによる減産で、輸出量が大幅に減少した際の2倍以上もの量になります。
おわりに
トウモロコシの収穫風景
この2年連続の豊作により、2014/15年度のトウモロコシの需給が、さらに緩和されるため、価格も低水準での推移が見込まれています。一方で、2015/16年度はこうしたトウモロコシ価格安を受け、生産者が収益を確保するため大豆への転作が進むとみられていることから、生産量は減少見通しとなっています。
このような中、農業技術が進歩した現在でも、米国では干ばつをはじめとする異常気象などが発生し、減産となる年があることから、今後も天候や生産動向については注目していく必要があります。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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