夢のある畑からゆとりある農業を 「ドリームファーム」〜沖縄県久米島 宇江城昌也さん〜
最終更新日:2015年7月2日
念願の1位に(今年のサトウキビ競作会にて)
沖縄県では、生産技術および経営改善の面で創意工夫し、高単収・高品質なさとうきび生産を行った農家を表彰する「さとうきび競作会」が行われています。
平成 27 年4月 24 日に多量生産の部の生産法人の部第一位となり、「独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞」を受賞した久米島町の農業生産法人有限会社ドリームファーム代表宇江城昌也さんをご紹介します。
◆久米島とさとうきび
久米島は、沖縄本島から西に100km、飛行機で30分のところに位置する人口約8,200人の島です。さとうきび生産は島の耕地面積の約8割を占め、農家の殆どが携わる重要な産業となっています。
◆出身地久米島へ思いを形にするために
宇江城さんは久米島で生まれ、3歳からは那覇で育ちました。税理士事務所に勤務し、税理士を目指していたところに、久米島で島を上げてのさとうきび生産法人設立とハーベスタ導入の話が舞い込み、平成 12 年に 40 歳を目前に久米島に戻り、父・弟と3人でドリームファームを設立しました。
宇江城さんは、「久米島に夢のある畑を作る」という思いを法人名に託し、「ドリームファーム」と名付けました。
その思いを実現させる第1歩として、収穫面積 16 ・5 ha を目標に規模拡大を図り、その後、順調に生産量を伸ばした結果、平成 20 年にはさとうきび競作会の同部門で第 2位を受賞しました。
◆省力化とはいえ大事なことは
自宅の車庫にあるハーベスタなど
使用中のトラクター
溶接の練習で自作したごみ箱
現在、ドリームファームは、経営面積 21 ha でさとうきび栽培を行いながら、収穫期には 16 ・5 ha にも及ぶ収穫作業を受託しています。ドリームファームの特徴は、「植付けから収穫まで、所有する機械での機械化一貫体系による省力化栽培」です。
例えば、植付け作業は通常、苗の切断 → 植付け → 施肥 → 薬剤散布 → 覆土 → 転圧の行程を機械または人の手で別々で行うのを、ドリームファームでは植付け機を用いてそれらの作業を一工程で行い、省力化を図っています。
また、適期に薬剤散布を行うことで、雑草や害虫の防除などその後に必要な作業を最低限に抑え、農薬代の節減にも繋げています。
しかし、宇江城さんは、「作物は水が命」との考えから、スプリンクラーで十分に散水されない部分を探しては、時間と労力をかけて人力で自ら水撒きをし収量向上に努めています。
◆ 上手い人のまねをするのに誰にも損はない「聞きつ聞かれつ」
笑顔が印象的な宇江城さん
「さとうきび栽培はわからないことがわかると楽しくなってくる。わからないことは先輩たちにいろいろ教わることができる。いいと感じるところはどんどん聞く。そして、自分がやっていいと感じたことは「上手くいったよ」と周囲に話す。」。
人と人とのつながりを大事にして、競争ではなく、共存してみんなでさとうきびと島を守っていくのだと宇江城さんは言います。
また、宇江城さんは、「さとうきび栽培は生活」だと言います。
「さとうきびが台風でダメになれば生活はつらいけど、収益が上がれば嬉しい。そのために周囲の人とたくさん話をして情報交換をする。」。
いい時も悪い時もその延長線上にゆんたく(皆でおしゃべり)があって、結局は楽しみを感じるのだそうです。
◆受賞が家族にとって生きる力に
競作会での第1位受賞は、宇江城家に大きな喜びをもたらしました。今年の初めにお母さんが病気で倒れたさなかの朗報でした。「母に良い報告ができた。これで元気になってくれる。」と、しみじみとお話をしてくれた昌也さん。
受賞によって、ずっとやってきたことが認められて、「ドリームファーム=夢のある畑」を作り上げると胸を張って言えるようになり、ゆとりある農業の懸け橋になれるのではないかと喜びから期待へと心は移り変わったようです。
順調に生育しているさとうきび
◆久米島のために
「島の活性化のためには、若い人にさとうきび栽培をやってみようと思ってもらうことが必要。そのために、常に適期を意識して作業することで、生活時間にゆとりを生みだしていく。自分がゆとりある生活をすることで、若い人が農家に魅力を感じ、興味を持ってくれたら。ここまでできれば最高さぁね。」と宇江城さんは言います。
「夢のある畑」を魅力あふれるものにするために、宇江城さんは今日も笑顔いっぱいで作業に励みます。
(特産業務部)
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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