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ニュージーランドの生乳取引

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最終更新日:2015年7月6日

調査情報部 根本 悠

はじめに

NZの酪農場の様子
NZの酪農場の様子

 ニュージーランド(NZ)は、酪農乳業が非常に盛んなことで知られ、近年も酪農家の戸数は増加しています。このため、日本の酪農乳業に携わる人々からの関心も高くなっています。そこで、今回のレポートでは、NZで生乳(搾ったままの乳)がどのように取引され、どのように農場出荷価格(乳価)が決定されているかなど、NZの生乳取引の動向についてご紹介します。

1 乳価の決定方法

 まざまな面で日本と異なります(表)。
 まず、日本では、指定団体(地域ブロック毎の酪農家の協同組合)と乳業メーカーとの相対交渉を中心に乳価が決定されますが、NZでは、乳業メーカーが酪農家に乳価を提示し、酪農家は複数の乳業メーカーの乳価を比較することで、生乳の取引先を決定しています。ただし、近隣に複数の乳業メーカーがない場合、実質的に酪農家は乳業メーカーを選択する余地がありません。また、日本では、飲用向けやチーズ向けなどといった、生乳の用途別に乳価が設定されていますが、NZでは、そうした考え方はなく、乳業メーカーごとに単一の乳価が設定されています。
 さらに、日本では、国内の牛乳・乳製品の需給動向や生産コストなどを考慮して乳価が決定されますが、NZでは、生乳の 95 %を乳製品として輸出しているため、乳製品の国際価格が乳価決定の最大要因となっています。そのため、個々の酪農家や乳業メーカーにとって、自らがコントロールし得ない要素によって乳価が決定・受容されていることになります。

2 乳価の改定

 日本では、大幅な取引環境の変化が生じない限り、年度当初に決められた乳価の改定は行われません。一方、NZでは、通常、年度内に数回改定されます。これは、NZの乳価が、変動の激しい乳製品の国際価格に左右されるためです。したがって、年度当初に発表される乳価はあくまで暫定値であり、その後、乳製品の国際価格の変動に応じて改定され、年度末に最終的な乳価が確定される仕組みとなっています。このため、NZの酪農家は、年度内の乳価変動に合わせ、飼料設計の見直しや搾乳期間の調整などにより収益を確保できるよう、柔軟な対応が求められます。

表 NZと日本の生乳取引の比較
表 NZと日本の生乳取引の比較

3 乳価の推移

 実際のNZの乳価の推移を見ると、2つの特徴が浮かび上がります。1つ目は、既述のように乳製品の国際価格の変動に左右されること、2つ目は、変動を繰り返しながらも長期的な傾向として上昇傾向にあることです(図1)。近年の乳価上昇は、中国や東南アジア、中東など新興国からの乳製品需要が増加していることが背景にありますが、2014/15年度(6月〜翌5月)は、近年の傾向とは異なり、大幅に下落しています。これは、2014年2月以降、主な乳製品輸出国の生乳生産が増加したことに加え、中国の乳製品在庫過多により乳製品需要が緩和したためとみられています。
 そのため、NZで最大の乳業メーカーであるフォンテラは、2014/15年度に実に5度にわたり乳価の引き下げを行っています。その結果、2015年5月現在、フォンテラの乳価は、年度当初の乳価から3割程度低下しています(図2)。

図1 乳製品国際価格と乳価の推移
図1 乳製品国際価格と乳価の推移

図2 フォンテラの乳価変動の推移
図2 フォンテラの乳価変動の推移

おわりに

 以上の通り、NZの生乳取引の仕組みは日本と大きく異なります。NZでは、生産されるほとんどの生乳を乳製品として輸出しているため、乳価は乳製品の国際価格に対応して変動しており、これは一面では極めて合理的な仕組みです。しかし一方で、年度中に乳価が大きく変動する不安定な仕組みでもあり、計画的な生産が困難となります。一般に農業は、自然という不安定要素への対処が求められる産業ですが、NZの酪農家は、乳製品の国際価格というもう 1つの不安定要素にも対処することが求められています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196