【第一線から】意欲ある若手農業者が育つ夏ほうれんそう産地 〜岐阜県JAひだ「飛騨ほうれんそう」〜
最終更新日:2015年11月5日
◆高標高で育つ『飛騨ほうれんそう』
岐阜県の飛騨地域は、標高600〜1000mの高冷地で夏季も冷涼な気象条件を活かして、野菜指定産地として品質の良い夏ほうれんそうを生産 しています。JAひだ管 内で生産されるほうれんそうはその名も 『飛騨ほうれんそう』です。
ほうれんそうは、気温が下がる夜から朝にかけて糖分を貯めるため、昼夜の寒暖差が大きいこの地域で栽培されたものは、みずみず しく、厚みのある葉肉が特長です。
現在、同管内の生産者は420名で、栽培面積は212 ha です。播種後約 30 〜 40 日(気温、日射量などによって日数は変 動)で収穫できるため、3月上旬から 12 月上旬の期間 に、平均4.4回の作付けが行われています。このため、延べ栽培面積は923 ha に達し、生産量約7 2 0 0 t( 約 2 0 0 万ケース)、 約4000万袋分の夏ほうれんそうが主に関西、中部、関東、北陸各地へ出荷され ています。
◆「雨よけハウス」の導入
飛騨地域でのほうれんそう栽培は、昭和 30 年代に始 まりました。ほうれんそうは、もともと暑さに弱く雨が多いと品質が低下するため、夏に作るのは難しい野菜とされてきました。夏が涼しいこの地域でも、雨が降ると「ズルケ」と呼ばれる腐りや立枯病の発生が避けられません。
そこで、昭和 45 年頃から全国に先駆けて、パイプハウスの天井部のみをビニー ルフィルムで、側面は防虫 ネットで覆った「雨よけハ ウス」と呼ばれる施設を導入しました。この施設は雨による泥はねや浸水を防ぎ、病気の発生が軽減され、農薬使用回数も減らせ ます。また、側面の防虫 ネットを開放すれば日中は冷涼な外気を取り入れられます。
この施設の導入により、 収穫量が安定し、生産者数 も徐々に増えました。
また、農機具メーカーと共同で収穫機を開発し、13 年前に本格導入してからは経営の大規模化が進みまし た。現在では1 ha 以上の栽 培を行う農家の方もいます。
さらに、収穫機で効率的に収穫するためには、ほう れんそうの株をまっすぐ育 てることや生育を揃えるこ とも不可欠であるため、その結果、管内の栽培技術の 向上にもつながりました。
◆全国有数の指定産地に育った飛騨地域
このような取り組みを通 して、飛騨地域は全国のほ うれんそうの指定産地の中でも、その位置づけが高まっています。
例えば、ほうれんそうの全国の指定産地( 40 産地: 平成 25 年)と飛騨地域(飛 騨市、高山市)の作付面積を平成 15 年と 25 年で比較すると、この間に、指定産地全体では5%減少する一方、飛騨地域は 27 %増加しています。
また、全国の指定産地の面積全体に占める飛騨地域の割合をみると、平成 15 年の 11 ・8%から、平成 25 年の 15 ・8%へと上昇してお り、飛騨地域が全国屈指のほうれんそう産地に育って いることがわかります。
◆若い生産者が育つ「若菜会」の活動
雨よけハウスの導入や、 収穫機の導入、栽培技術の向上など生産者の努力と熱意で産地は大きな発展を遂げてきました。
その発展の中で、意欲的な若手生産者が数多く育ち、平成 25 年にはJAひだの「飛騨ほうれんそう 部」の若手が集ま り「若菜会」が発足しました。
若菜会には現在 38 名が参加しており、平均年齢は 28 歳と若く、メン バーひとりひとり が、将来を担うとの意欲を持って、栽培や販売に関する「夜間勉強会」 の開催や、市場での着荷状態の確認、市場担当者との意見交換会など、日夜、積極的な活動を行っています。
若菜会の顧問を務める飛騨ほうれんそう部副部長の今井さんは、「自分が就農 した頃は、多くの魅力的な先輩がいたことで、ほうれんそう栽培への意欲が湧い た」そうです。また「自分 の使命は、かつて自分が受けたほうれんそう栽培への前向きな影響を、次の世代へ伝えて行くことです」と話されていました。
若菜会は、次世代の担い手育成の場として、さらなる活躍と産地の一層の活性 化が期待されます。
また、飛騨地域の夏ほうれんそうは、alicが実 施している指定野菜価格安定対策事業(※)に加入し ており、価格が低落した場合に交付金が出るため、農家の方々は安心して栽培ができています。
(野菜需給部)
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