【業務関連情報】“酪農ヘルパー”地域で活躍!
最終更新日:2017年3月1日
日本では、酪農経営の規模拡大が進んでいます。平成15年の1戸当たりの乳用牛飼養数は57.7頭でしたが、平成28年では79.1頭まで増加しました。中には従業員を何人も雇うような企業型経営もみられるようになりましたが、それでも一般的に大規模経営といわれる100頭以上飼養している農家は12%しかなく、日本の酪農経営は、いまでも家族経営が主体といえます。酪農は、牛という生き物を相手にする仕事です。そのため、えさを与え、乳を搾り、牛舎を掃除し、牛の様子を観察するという仕事は毎日行わなくてはならず、酪農家には休みがありません。しかし、酪農家がけがや病気をしてしまった時、冠婚葬祭でどうしても家をあけなくてはならない時などに、酪農家に代わり作業を行うのが酪農ヘルパーです。家族経営が中心の酪農経営において、とても重要な役割りを果たしている酪農ヘルパーの活躍を、紹介いたします。
酪農ヘルパーは、酪農の専門家
「営農現場に一番近いところで仕事をしているという自覚は僕自身持って仕事をしています」と話すのは、北海道の宗谷南酪農ヘルパー利用組合の阿部富雄さん。酪農ヘルパーとして働き始めて13年目です。現在地域には酪農家109戸の組合員がおり、彼らからの依頼に応じ、阿部さんを含む15名の酪農ヘルパーが対応しています。多くの酪農家で仕事をする酪農ヘルパーは、訪問した酪農家の数だけ経営を知り、それだけ経験や知識が豊富です。それは、搾乳などの技術面から、牛を飼いやすく無駄な作業が発生しない牛舎の構造まで、酪農を行うにあたっての諸々のことであり、酪農ヘルパーだから気づくこともあると、阿部さんは考えています。
また阿部さんは、酪農ヘルパーとして働く以外に利用組合の事務局として、酪農ヘルパー組合の運営業務にも携わっています。そのひとつに、新人ヘルパーの育成があります。酪農家の留守中に酪農家にとっての仕事場である牛舎に入る酪農ヘルパーは、酪農家との信頼関係が重要であり、新人酪農ヘルパーには、人としての基本であるあいさつの重要性から説明します。時には酪農家と本気で意見を交わすこともある酪農ヘルパーだからこそ、人と人との関係を大事にできる酪農ヘルパーの育成に力を注ぎ、将来の専門家を育てています。
酪農ヘルパーから酪農家へ
子どもの頃、「牛を飼いたい!」という夢を持っていた方はいませんか。しかし、現実は、酪農地帯に土地勘もなく、牛を飼った経験もない人が酪農経営を始めるのは至難の業です。このような夢を持った人の中に、酪農ヘルパーを経験して、酪農家になった方がいます。北海道紋別市の平野道教さんは、酪農ヘルパーから転身した酪農家の1人です。生まれも育ちも北海道ではない平野さんは、酪農ヘルパーとして働きながら地域になじみ、酪農家になりました。
「今、自分がここにいるのは近隣農家の皆様のおかげです」平野さんはこう話します。酪農経営は、牛の飼養管理以外にも牛のえさとなる牧草作りも大事な仕事です。広大な牧草地での作業の時期、『大変だ』と思うと、すぐに近隣の方から助けの声が上がってくるそうです。また、同じように平野さんも仲間の酪農家の仕事を手伝います。このような仲間意識ができるまでの信頼関係を築くことができたのも、平野さんが酪農ヘルパーとして地域の酪農家の皆さんの牛を真剣に世話をしてきた結果です。平野さんにとって、酪農ヘルパー時代の経験は、牛を扱う知識だけではなく、今ある近隣農家の皆さんとの信頼関係も得ることのできた貴重なものとなったのです。
これからも活躍が期待される酪農ヘルパー
平成28年4月、熊本県を大きな地震が襲いました。熊本県は、全国でも指折りの酪農県で、多くの酪農家が被災しました。自身も被災しているにもかかわらず、熊本県酪農ヘルパー利用組合の酪農ヘルパーの皆さんは、被災した酪農家へ赴き活躍されました。倒壊した牛舎から牛を出し、興奮する牛をなだめ、搾乳をしなくてはなりませんでした。そこで、いろいろな搾乳施設を利用している酪農ヘルパーの経験をフルに活かし、ブルーシートやロールなど酪農家が持っている資材で必要最低限の搾乳施設を応急的に作るなどの活動をされました。
このように日頃の営農だけではなく、非常時においても、酪農が盛んな地域では、酪農ヘルパーは、欠くことのできない人材です。現在高齢化が進む酪農経営において、酪農ヘルパーの活躍はますます期待されるところですが、一般的にこの仕事は、まだまだ知られていません。国やalicでは、補助事業を通じて、酪農ヘルパーを支援しており、今後も多くの酪農ヘルパーが酪農地域で活躍できるよう応援していくこととしています。
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