【alicセミナー】日本産農産物輸出のプロセスと継続的な輸出拡大のための今後の課題について
最終更新日:2017年5月10日
平成28年11月に政府の農林水産業・地域の活力創造プランが改定され、農林水産物・食品の輸出額1兆円の目標年が平成31年に1年前倒しとなりました。一方で、農林水産物・食品の輸出額は、順調に増加し平成27年には7000億円を超えましたが、平成28年に入りその増加率が鈍化しています。また、韓国など競合国の農産物の品質も向上しており、日本産農林水産物・食品の輸出をめぐる状況は、日々変化しているところです。
そこで、今回はホクレンなどで長年農産物輸出に携り、現在は貿易コンサルティング会社AGLIEN(アグリアン)の代表を務められている坂井紳一郎氏を講師に迎え、「日本産農産物輸出のプロセスと継続的な輸出拡大のための今後の課題」をテーマに、3月2日(木)にalicセミナーを開催しましたので、その概要を紹介します。
輸出継続のための3要件
輸出プロセスの第一は、輸出したい品目に向いた国の選定にあたって、エンドユーザーの嗜好やその国の規制などの十分な事前調査であり、この過程は決して無駄にはなりません。その上で、継続的な輸出を考えていくには、最低でも3つの要件を重視する必要があります。まず、1つは、商品にあった輸入業者(バイヤー)を選ぶことです。バイヤーは、それぞれの事業背景により得意とする分野が異なり、1度バイヤーを決めてしまうと変更することが難しいため、最初に選ぶ時に十分な吟味が必要です。2つ目は、適正な販売価格の設定です。富裕層をターゲットにした例外はあるものの、農産物の輸出の場合、中間層が購入できる価格帯であることが継続的に輸出することの鍵と考えられます。競合国に同じような商品がある場合、日本産の品質が良くとも、3倍の価格差では売れません。そして、3つ目は継続的かつ積極的な営業活動であり、これが今まで最も欠けていた要素と思われます。
取り組むべきはオールジャパンの輸出戦略
今後日本の農産物の輸出拡大を図る上で最も大きな課題は、地域ブランドの活性化のための海外への売り込みが、都道府県や市町村などの関係機関ごとにバラバラに推進され、結果として無益な地域間競争を生み出してしまっている現状です。自分(坂井氏)が以前代表取締役を務めた福岡農産物通商株式会社(現九州農産物通商株式会社)では、始め福岡県産の農産物のみ輸出を行っていたため、輸出時期が限られていました。しかし、輸出品目を日本全体へと拡大したところ、農産物の通年供給が可能となり、輸出金額は3倍に増加し、結果として、福岡県産の輸出額も増えることとなりました。
いちごを例にとっても、ニュージーランドや韓国では通年供給は難しいのですが、日本では可能と考えられます。長期的なビジョンを立て、オールジャパンで対応することで、同様の輸出品目を扱う他国と異なる戦略を立てることが出来るため、最終的には、生産者と地域の活性化につながると考えられます。
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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