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【第一線から】さとうきびの生産に生きる 〜与論十五夜踊りの祈りとともに〜

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最終更新日:2017年9月6日

地図

 与論島は、鹿児島市から南へ約592km、沖縄本島の北約23kmに位置する、隆起珊瑚礁で形成された島です。
 温暖な気候が特徴である島ではさとうきびの生産者が農家戸数の過半を占め、さとうきびの出荷額は畜産に次いで二番目となっています。

与論島伝統の踊り ―「与論十五夜踊り」

 与論島には、国の重要無形民俗文化財の指定を受けた「与論十五夜踊り」という島の安寧、五穀豊穣を祈る奉納踊があり、毎年旧暦の3月、8月、10月に神社に奉納されます。その踊り手として活躍する町 繁一(まち しげかつ)さんは、自身もさとうきびの生産者として、島のさとうきび生産振興のための取り組みを行っています。

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さとうきび生産者を支える作業受託

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 作業受託とは、生産者からの依頼を受けて、生産者の所有するほ場でさとうきびの植付け、収穫作業などを代行する仕組みのことです。
 繁一さんの父繁栄(はんえい)さんは、45年前に与論島初のさとうきび生産の機械化、作業受託を始めた先駆者です。それまでトラクターやブルドーザーなどの機械類を保有しているのは製糖工場のみでした。繁栄さんは、生産者を支えたいという思いから島に適したトラクターを自ら購入し、作業受託を始めました。そして、繁一さんは、繁栄さんの下で作業受託のノウハウを積み上げてきました。

ハーベスターの導入へ

 繁一さんは、収穫方法が手刈りから機械化に移行している状況を踏まえ、平成17年に生産者の組合である「ユンヌ結(ゆい)さとうきび生産組合」を設立し、さとうきびの収穫機であるハーベスターによる収穫の受託を先進的に始めました。ユンヌとは、島の言葉で「与論島」を意味し、そこに助けあいを意味する「結」をつけました。

導入時の取り組み

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 与論島は10a以下の小さなほ場が7割を占めています。小さなほ場ではハーベスターが入り収穫することが難しいため、収穫方法は手刈りが中心でした。しかし、繁一さんは生産者の高齢化が進む中、収穫の機械化はますます必要になると考えました。そこで手刈り用で栽培しているほ場でも、さとうきびを植える前からハーベスターでの収穫にも変更できるように畝(うね)立てするなど、生産者のほ場に応じた工夫を行い、ハーベスター導入を進めました。
 また、ハーベスター導入には土壌踏圧の影響を心配する声もありましたが、繁一さんの丁寧な仕事ぶりが信頼を得て、現在ではハーベスターによる収穫が定着し、ユンヌ結さとうきび生産組合は53haの収穫を受託するようになりました(平成26年産実績)。
 今では島全体で12台が稼働し、効率的な収穫作業を行っています。

次世代を担う人材育成

 ハーベスターを運転するオペレーターなど、さとうきびを生産する働き手は、作業依頼数の増加や高齢化により不足しています。繁一さんの他、1名の常時雇用者と、20名の臨時雇用者で作業を行っていますが、収穫と春植えが重なる1月〜3月は特に人手が足りず、近所の人にお願いして手伝ってもらうなどの状況にあります。そこで、繁一さんは、雇用者が継続して働けるよう、深夜・雨天時の作業を中止することなどにより、安全や健康に配慮した働きやすい環境を整えました。
 また、次世代を担う島のさとうきび生産の人材育成という点からも、彼らには、作業用機械類の基本的な運転・操作に加え、「生産者のほ場を大切に、生産者の喜ぶ仕事をする」という父の教えを伝えています。

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今後の展望

 繁一さんは、今後の展望として、「作業受託への対応をしつつ、人材育成に励み、担い手確保に目途がついたら、自分のほ場でのさとうきび生産にも注力したい」と、意欲を語りました。人材を丁寧に育てる取り組みが、繁一さんがさとうきび生産を続ける原動力となっています。
 日々、さとうきびの生産に生きる。繁一さんは、今年も与論十五夜踊りで、島のさとうきびの増産を願い、踊り手として大役を務めあげます。
 
(特産業務部)

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