【レポート】世界のトウモロコシ需給動向と見通し
最終更新日:2017年9月6日
日本は家畜の餌となるトウモロコシなどの飼料穀物の多くを輸入に依存しています。このため、世界の需給情勢を把握することはとても重要です。そこで、今回は、アメリカ、中国およびブラジルといった、世界のトウモロコシ需給に大きな影響力を及ぼす3カ国の、最近の動向と今後の見通しを紹介します。
最大生産・輸出国のアメリカ
アメリカはトウモロコシの生産量、消費量、輸出量の全てで他の国を大きく上回っており、世界的なトウモロコシ需給の鍵を握っています。そのため、同国が深刻な干ばつに襲われ、記録的な不作となった2012/13年度には世界の穀物市場は大きな影響を受けました。しかし、翌年度以降は4年連続で豊作となり、価格も安価に推移していることから、輸入国にとって好ましい状況が続いています。
また、同国内の消費動向も世界に影響を及ぼします。2005年にはエネルギー政策法によって、飼料用と同じトウモロコシも原料となる燃料(バイオエタノール)に関する「再生可能燃料基準」が定められ、ガソリンにこれらを一定量混合することが義務化されました。これによってトウモロコシがエタノールへ向けられる傾向が強くなり、現在では飼料等向けとエタノール向けが同程度となっています。今後も、トランプ政権によるエネルギー政策次第でトウモロコシの需給バランスに変化が生じる可能性があり、大きな関心が寄せられています。
政策転換により減産を目指す中国
生産量と消費量において世界第2位の中国は、食料安全保障などの観点から生産を増加させていたものの、備蓄在庫が積み上がり、政府の財政を圧迫したことから、2016年に政策転換を行い、今日では他品目への作付け転換とトウモロコシの減産が図られています。
一方、経済成長に伴い畜産物需要が年々増加しているため、全体的には飼料需要も高まっています。市場規模が巨大であるため、中国の変化が国際穀物市場などへ及ぼす影響は大きく、今後の動向には注目が必要です。
ブラジルはインフラ整備が課題
生産量と輸出量がともに世界第3位のブラジルでは、温暖な気候を生かして穀物や豆類などを年に2回生産することが可能です。近年の作付パターンは、同じ土地で大豆を生産した後にトウモロコシを生産するケースが増えてきています。そのため、冬期に収穫され る第2期作トウモロコシの生産量は増加傾向にあり、2011/12年度以降は、夏期に収穫される第1期作の生産量を上回って推移しています。
同国では今後の生産拡大が期待されていますが、その一方で、景気低迷による公共工事の停滞も相まったインフラ整備の遅れなどが指摘されています。このため、政府は民間資本を呼び込みながら主要輸出港の能力増強や新興生産地域のインフラ整備に力を入れてい るものの、政治経済の混乱から、計画通りに進展しているとはいえない状況が続いています。
今後の見通し
アメリカやブラジルの増産に支えられ世界のトウモロコシ生産量は2016/17年度に過去最高を記録しました。2017/18年度は、アメリカの中央北部地域で最近発生している干ばつなどにより一部の作柄が懸念されているものの、生産量はおおむね堅調で、輸出量も高水準で維持されることが見込まれています。しかし、この先、豪雨や洪水などが発生して生産現場に深刻な影響を及ぼす可能性を完全に否定することはできません。また、一般的に所得が増えると牛肉や豚肉など畜産物の消費が増える傾向にあるため、開発途上国の経済発展が大幅に進めば、トウモロコシの調達競争が激化する可能性もあるでしょう。
トウモロコシの供給を輸入に頼っている日本は、世界のトウモロコシ需給動向を注視するとともに、調達先の多角化などでリスクを減らし、分散させていくことが重要となっています。
(調査情報部 野田 圭介)
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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