【第一線から】土足禁止の牛舎で飼養される子牛〜衛生証明書付き黒毛和子牛出荷の取り組み〜
最終更新日:2018年9月5日
株式会社渡辺農場のある北海道日高郡新ひだか町は、北海道の中央下部にあり、南西部は大平洋に面し、日高山脈を背にしています。また、太平洋に面していることから、北海道でも冬の降雪量が少なく、冬の平均気温もマイナス5℃ 程度で、比較的過ごしやすい気候の地域です。
新ひだか町は、サラブレッドなどの軽種馬の生産でも有名で、オグリキャップなどの名馬を輩出しています。
また、渡辺農場は、日本の道1 00選に選ばれ日本一の桜並木と称される二十間道路に面した場所にあります。
渡辺農場のあゆみ
渡辺農場は、黒毛和牛の繁殖雌牛(子牛を産むことを目的とする母牛)を飼養し、生まれた子牛を9〜 10 カ月齢になるまで飼養して家畜市場に出荷するいわゆる肉用牛繁殖経営を営んでいます。
代表取締役の渡辺隆(わたなべたかし)さんは、昭和60 年に渡辺さんの父親から経営を継承しました。当時は、軽種馬用の牧草生産が主で、黒毛和牛の繁殖雌牛の飼養頭数はわずかでしたが、平成13 年頃、牧草生産だけでない複合経営を図ろうと、九州の200頭規模の肉用牛繁殖経営の牧場を見学し、自身も同じ規模の経営を目指すことにしました。現在、繁殖雌牛を280頭飼養し、年間160頭ほどの子牛をホクレン南北海道家畜市場に出荷しています。
現在は、渡辺さんご夫婦のほか従業員を5名雇用して、牛の飼養管理を行っています。牛舎6棟と放牧場を合わせて10 ha 、牧草などの飼料作付地が172 ha あります。現在は、肉用牛繁殖経営が主ですが、牧草の生産も続けており、ペットのウサギ用の牧草を販売しています。
渡辺農場代表取締役の渡辺隆(わたなべたかし)さん
土足禁止の牛舎
渡辺さんは、子牛の購買者に安全・安心を提供することにより他との差別化を図ることができると考えて、飼養環境や、衛生管理に配慮しています。
渡辺牧場では、子牛を健康に育てるために、予防衛生に重点をおき、ワクチン接種、駆虫等を実施し、1頭1頭の健康状態を見ながら管理をしています。また、ゆとりあるスペースと牛の運動場を確保するため、牛舎と放牧場の間の扉は1年中24 時間開放しており、牛が自由に移動できてストレスがかからない環境にしています。
さらに、牛舎の除ふんと敷料(※1) の交換を毎日、朝夕の2回行うので、牛舎内に敷かれている稲わらは常に清潔な状態に保たれており、こうしたことも牛のストレス軽減に繋がっています。
(※1) 牛の寝床に敷くもののことで、稲わらやおがくず、もみがらなど。
渡辺農場では、生まれた子牛を飼養する育成舎に土足で入ることを禁止しています。他の牛舎で除ふんなどの作業を行った長靴はふん尿や菌が付着しているため、これらの汚れや菌などが育成舎に入ることを防止するためです。
飼養環境や衛生管理に配慮した結果、渡辺農場の中はふん尿などの臭いがありません。
渡辺農場では、飼養方法や衛生環境をアピールするため、O15 7やサルモネラなどの状況を記載した独自の「衛生証明書」を作成し、販売時に子牛に添付しています。これらの取り組みの結果、渡辺農場が出荷する子牛は安全・安心を確認することができると肥育生産者(※2)に評価されたため、特定の購買者も定着し、全国の様々なブランド和牛として肥育されています。
(※2) 子牛を肥育し食用として出荷する生産者。
今後の展望
渡辺さんは今後、繁殖雌牛の飼養頭数を300頭程度まで増やし、子牛の出荷頭数を年間250 頭程度にしたいと考えています。
また、将来的には肥育や6次産業化の取り組みを通じて消費者と直接つながりを持ちたいと考えています。
(畜産経営対策部)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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