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【レポート】欧州連合(EU)の豚肉輸出動向〜デンマークとスペインを中心に〜

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最終更新日:2019年5月8日

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 欧州連合(以下EU)は、全世界の約20%を占める豚肉生産量を誇り、豚肉自給率が110%を超える純輸出(※)地域です。豚肉輸出量は世界最大で、全世界の約35%を占めており、世界の豚肉市場に大きな影響力を持っています。

 こうした中、2019年21日に日EU経済連携協定(EPA)が発効しました。そこで今回はEU豚肉産業の動向について、特に対日輸出量の多いデンマークとスペインを中心に紹介します。

(※)輸出額が輸入額を上回っていること。 

豚肉生産の動向

 2018年の豚肉生産量は、前年に比べ、全体的にはやや増加しました(表)。

 EUでは、家畜排せつ物の処理などに係る環境規制により、飼養頭数の拡大が容易ではない中、子豚を生産する繁殖成績が比較的良いデンマークでは、ドイツやポーランドなどへの子豚輸出を増やす傾向を強めています。スペインやポーランドといった広大な土地を有するなどの理由から環境規制の影響が比較的少ない国では、豚肉産業を今後の成長が見込める基幹産業として、生産基盤の拡大を推し進めています。また、この両国は労働費を含めた生産費が低いため、他の主要国よりも優位性があります。

 今日のEU豚肉業界での懸念は、一般紙などでもたびたび取り上げられているアフリカ豚コレラ(以下ASF)です。ASFは、豚やいのししが感染する致死率の高い伝染病であり、有効なワクチンや治療法はなく、発生した場合の畜産業界への影響が甚大です。我が国では発生が確認されていませんが、昨年8月に中国で発生が確認されており、海外からの侵入防止に努めています。  

 欧州では、ロシアから東欧に侵入した後、昨年ハンガリー、ブルガリア、ベルギーで発生が確認され、EU域内をドイツ、フランス、デンマークなどといった主要な豚肉生産国が多い西方へ進行しており、それら主要生産国での警戒は最大限まで高まっています。今後のEUの豚肉産業の動向は間接的な影響も含め、ASFの発生によって影響を受ける可能性も考えられます。

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対日輸出の状況

 日本の豚肉輸入量が近年増加傾向にある中でEU産も増加しており、日本の豚肉全輸入量のうち、EU産が占める割合は2018年で35%程度となっています(図)。
 なお、日本に輸入されるEU産豚肉は、主に冷凍品で、その多くはハム・ソーセージなどの製造用材料となっています。

 輸入量と輸入割合の増加の要因として、スペイン産の増加が挙げられます。日本最大の豚肉輸入先国であったデンマークでは、子豚輸出を増やす傾向を強めていることから、生産量は低迷しています。一方、スペインはイベ

コ産のイメージが同国の豚肉のイメージ向上にもつながり、着実に輸入量を増やし、日本市場に定着しました。2018年のスペイン産豚肉輸入量は、前年比3・9%増であったのに対し、デンマーク産は同6・3%減となりスペイン産がデンマーク産より多くなりました。これは、日本の輸入業者が、スペインでの生産拡大に伴い、輸入元としてスペイン産を選択することが増えたこと、さらに、日本の要求レベルに応えられるようスペインの豚肉加工技術などが向上したことが要因と考えられます。

 欧州委員会によれば、EUの2019年1月の豚肉輸出量は、前年同月比9・8%増となっており、国別にみると最も増加したのは中国で同18・2%増となっています。

 EUの農畜産物市場は成熟しており、農業政策は自由貿易を柱とした輸出戦略に傾注しています。特に豚肉部門にあってはEUは純輸出地域であり、特にデンマークやスペインのように豚肉産業を基幹産業かつ成長産業と位置付ける国にとって、域外市場の拡大が重要であるとしています。

熱帯種

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EU

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