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【第一線から】農場HACCP(ハサップ)(※1)で安全を確保し、より高品質の和牛を生産〜(有)中林牧場〜

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最終更新日:2019年11月6日

 皆さんは伊賀牛をご存知ですか?伊賀産肉牛生産振興協議会の会員農家31戸が、最終飼育地と最長肥育地が伊賀地域(伊賀市・名張(なばり)市)でかつ12か月以上肥育して出荷される黒毛和種の未経産牛で、年間出荷頭数約1200頭、その8割が地元で消費されるという希少な牛肉です。
 (有)中林牧場は、伊賀市で長年にわたり高品質な伊賀牛の生産に尽力するとともに、和牛子牛の産地である宮崎県児湯(こゆ)郡に30年前に支場を開設して繁殖経営も開始しました。児湯支場で子牛生産、伊賀本社農場で伊賀牛肥育を複合的に行う経営スタイルを確立し、両地域にまたがるリーダーとして活躍しています。

(※1) 農場の衛生管理向上により畜産物の安全を確保するため、管理ポイントを設定、監視・記録の継続実施によって、農場段階で危害要因をコントロールする手法

(有)ベジタブルセンターUFOの皆さん

健康で高品質の伊賀牛を

地図

  代表の正悦(まさよし)さんは伊賀牛生産農家の2代目として昭和41年に就農して以来、伊賀牛生産に携わってきました。
伊賀牛の大半は、農家の庭先で地域の精肉店と生体取引されます。中林牧場の牛は、地域の平均より常に1頭当たり10万円ほど高値で取引されます。父親の代からの信頼関係に加え、店で販売される牛肉を必ず自身でも食べて確認し、さらに消費者の意見も取り入れて飼料の配合を変えるなどの努力を重ねてきた結果です。
 しかし、何より大事なのは牛を健康に育てることだと正悦さんは言います。体型や四肢を見て健康な子牛を選び、肥育中は牛がぐっすり眠れる環境を作るなどし、たくさん食べて健康的に太る牛を育てるよう努めています。
 

和牛繁殖農場として 初の農場HACCP認証

 平成22年に宮崎県で発生した口蹄疫では、発生の中心地であった児湯地域全体で牛の殺処分が実施され、中林牧場の児湯支場でも感染牛は出なかったものの全頭殺処分されました。
 正悦さんは一度は支場をたたもうと考えましたが、従業員から「再建させてほしい」との声が挙がり、やり直すなら世間にない安全・安心な取り組みをと従業員と話し合い、牛白血病などの病気のない農場にすることと農場HACCPを導入することを決めました。
 農場HACCP取得の準備には半年ほど要し、平成26年10月に児湯支場は和牛繁殖農場として国内初の認証農場となりました。取得後、農場全体の意識が変わり、小さなことでも問題発生時にはすぐに従業員と会議を行うようになり、問題解決する土壌ができました。
 たとえばこんなエピソードがあります。児湯支場に導入する牛が夜、到着しました。受け入れ後はまず獣医師が予防接種をしますが、牛の体内に注射針が残留するのを防ぐため針の使用状況を記録した際、1本の紛失に気付き、夜中まで探しました。この後、正悦さんと従業員とで話し合い、再発防止のために牛の受け入れは明るい日中に行って、接種には必ず立ち会うと決めました。
  「中林牧場にとって口蹄疫の発生は悪いことばかりではなかった。」と正悦さんは言います。経営者の自分と従業員との風通しがよくなり、双方が納得して和牛生産に携われるようになりました。
現在は、本社農場でも農場HACCP認証を取得し、児湯支場ではJGAP(※2)も取得しています。
 
(※2) 食の安全や環境保全、労働安全等に取り組む農場に与えられる認証で、農林水産省が導入を推奨する農業生産工程管理手法の1つ。
 

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和牛の増頭に貢献するために

 平成27年度には国やalicの事業を活用し、本社農場に畜舎を新設して繁殖雌牛を100頭増頭し、さらに作業の効率化を図るため堆肥処理の機械も導入しました。同時に、肥育途中にある未経産の伊賀牛から採取・作製した受精卵を近隣酪農家の乳牛に移植して和牛子牛を生産し、雌子牛は本社農場の素牛(もとうし)(肥育牛として飼養される前の生後6〜12か月の子牛)にする取り組みも始めました。これは、未経産牛を肥育する伊賀牛生産者としても、口蹄疫以降、繁殖雌牛の減少により和牛の飼養頭数が低迷する中、少しでも和牛の頭数増加に貢献したいと始めたものです。
 自社の経営だけでなく、日本の和牛生産全体に思いを巡らせる中林牧場は、今後も日本の畜産業を支える存在であり続けます。
(畜産振興部)
 

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このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196