【農村研修体験記】〜かんしょでん粉(※)生産法人での研修報告について〜
最終更新日:2020年3月4日
alicでは毎年度人材育成の一環として、生産現場での作業などを通じて農畜産業の生きた知識を得るため若手職員を生産者のもとに派遣する農村派遣研修を実施しています。昨年10月に鹿児島県のかんしょでん粉生産法人で研修させていただいた川口加奈(かわぐちかな)の研修報告の一部を紹介します。
研修期間:令和元年10月10日〜19日
研修場所:鹿児島県南九州市川辺町(かわなべちょう) 上原産業有限会社
(※)かんしょ(さつまいも)を原料としたでん粉
研修先の概要
昭和11年創業の上原産業有限会社は、自社工場でかんしょでん粉のほか、味噌や醤油の製造を行っている。平成22年には農業生産法人を設立し自社農場にて原料となるでん粉原料用かんしょのほか、大豆、大麦を生産している。
今回は工場とほ場の両方の作業を経験させていただき、それぞれの大変さを身をもって知ることができた。
研修内容
(1)ほ場での作業
ほ場は川辺町周辺に点在しており、車でそれぞれのほ場に向かう。ほ場の形はいびつであったり途中で少し傾斜があったりと、ほ場ごとに個性がある。
ほ場では、トラクターを使ったかんしょのつる切り、手作業での収穫、ミニハーベスタ(収穫機)を使った収穫作業を行った。
つる切り作業は、ほ場に植え付けられたかんしょの茎、葉、つるを切り、かんしょを収穫しやすくするために行うものであるが、トラクターの後部につるを切る刃があるため、前進させつつ後ろを向いて刃を下げ、つるが切れているか確認しながら作業を進めていく必要がある。
刃を下げすぎるとかんしょを傷つけてしまう恐れがあり、一方で上げすぎるときちんとつるを切れないため、ミリ単位で調整を行うのが難しかった。また、ほ場ごとに形状が異なるため、作業を行う畝の幅を確認し、刃の下げ加減を調整しなくてはならず、単純なようでとても技術のいる作業だと感じた。
つるを切った後は、トラクターでかんしょを掘り起こし、手作業で収穫を行った。ほ場の数か所にかんしょを集め、ミニハーベスタでまとめてかごに入れていく。機械の操作と同時に、ミニハーベスタ上のベルトコンベアに流れてくるかんしょをかごに入れる作業も行った。小さく細いかんしょはベルトコンベアの隙間からほ場に零(こぼ)れ落ちてしまうため、流れてくるかんしょの大きさを見てかごに入れる順番を判断しながら作業を行った。両手を動かしつつ、頭も使う大変な作業だった。
(2)工場での作業
収穫後、でん粉工場に搬入されたかんしょは水路を通り、加工過程に送られる。
工場ではトラックなどで次々と搬入されてくるかんしょを流し用の棒で押し、スムーズに水路を流れていくようにする作業を行った。水路は自然に流れていく仕組みになっているが、時々かんしょが詰まり流れなくなることもあるので、水路を逐一確認する必要がある。水路の中を動きつつ、詰まりが生じていないか確認しながら作業を行った。かんしょ流しの作業は地味だが、加工過程を滞らせないための重要な役割だと感じた。作業場は外にあるため、季節によっては体にこたえる作業だと思う。今回の研修も10月としては日差しが強く、暑さに耐えながらの作業となり、肉体的疲労が大きかった。
研修を振り返って
ほ場では、同じ作業でもほ場の形に合わせてやり方を変える必要があること、効率的に作業を進めるために常に考えながら行うことの大変さを学んだ。また、天候に左右されて思うように作業が進められない農業の厳しさを知ることができた。
研修中、上原産業で働く方々に気さくに話しかけていただき、とても嬉しく、ありがたかった。農作業の話や鹿児島の話など、地元の方しか知りえないお話を聞くことができ、とても貴重な機会だった。
また、夕食の際に、ふかしたでん粉原料用かんしょを食べさせていただいた。生食用のかんしょとは異なり、強い甘さはなく、噛かむとほのかな甘みを感じられた。食感はほくほくしていて、食べ応えがあった。でん粉原料用かんしょをいものままで食べる機会があると思っていなかったので、貴重な経験であった。
今回現場で経験をさせていただいたことで、生産者と関わる業務を行う際にはより親身に、現場の立場に立って考え、業務に臨むことができると思う。
最後に、受け入れてくださった上原家の皆さま、上原産業の従業員の皆さまをはじめ研修を行うに当たりお世話になった多くの皆さまにこの場を借りて御礼申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196