でん粉からできる異性化糖
最終更新日:2015年1月6日
清涼飲料水に使われる異性化糖
清涼飲料水の成分表
清涼飲料水の缶の成分表に「果糖ぶどう糖液糖」と書かれているのをご覧になったことがあるかもしれません。
これは異性化糖という甘味料の一種で、砂糖と比べてキレのある爽やかな喉越しが特徴です。
異性化糖には同じような名前の「ぶどう糖果糖液糖」もありますが、こちらはぶどう糖が果糖より多く含まれています。ぶどう糖と果糖のどちらが多く含まれているかで、名前の順序が変わります。
果糖は、りんごや西洋ナシなどの果実や蜂蜜に多く含まれていて、甘味度は砂糖の1.7倍程度です。
ぶどう糖は、動植物の重要なエネルギー源で、ぶどうや柿などに多く含まれています。
砂糖やぶどう糖の甘みは、温度によってさほど変化しませんが、果糖は冷やした方が甘みをより強く感じるので、清涼飲料水には果糖を多く含んだ「果糖ぶどう糖液糖」がよく使われます。
異性化糖の原料
果糖ぶどう糖液糖のサンプル
異性化糖は、砂糖がさとうきびやてん菜から作られるのに対し、とうもろこしやばれいしょ(じゃ
がいも)、かんしょ(さつまいも)などに含まれるでん粉から作られます。
でん粉を分解してぶどう糖にした後、ぶどう糖の一部を酵素で果糖に変換(「異性化」)して異性化
糖は作られます。
植物は、葉緑体で光合成を行い、太陽と空気中の二酸化炭素と水からぶどう糖をつくり、植物の根、幹、種子、果実などにでん粉として蓄えます。ですから逆にでん粉を加水分解すればぶどう糖に戻せるのです。ただ、ぶどう糖は砂糖の7割程度の甘みしかないので、酵素の力を借りてぶどう糖の一部を甘
みの強い果糖に変えるのです。
砂糖の成分のショ糖は、ぶどう糖と果糖の分子が一つずつ結合した結晶です。
これに対し、異性化糖は果糖とぶどう糖の分子が混ざっただけの液体で、砂糖のように粒状ではありません。
ほとんどが飲料などの食品メーカー向けに出荷されますが、アイスコーヒーに加えるガムシロップなどで目にすることができます。
異性化糖の普及
異性化糖は、日本の研究者が砂糖の代替として1960年代後半に発明し、生産技術が開発されました。
当時の日本での評価は高くありませんでしたが、以後さまざまな改良が加えられ、キューバ革命により砂糖を輸入できなくなった米国の大手清涼飲料メーカーがこの技術に着目して、異性化糖を使った清涼飲料を世界的に売り出した結果、広く普及するようになりました。
現在では、異性化糖は、天然甘味料として多くの食品に使われています。
温度が低くなるほど甘みが増す性質から、清涼飲料、乳性飲料、冷菓のほか調味料やパンなど幅広い製品に使われています。
異性化糖は液体でサラッとしているため取り扱いが容易で、タンクローリーで大量に輸送できたり、タンクで安定的に保存できる長所がある一方、熱に弱く、加熱調理すると着色することがあります。
生産者の皆さんを支援
異性化糖は米国では全部とうもろこしでん粉(コーンスターチ)からつくられますが、日本では、輸入とうもろこしから作られるコーンスターチのほかに、北海道で栽培されたじゃがいもや、鹿児島県や宮崎県で栽培されたさつまいもから作られた国内産いもでん粉が原料として使われています。
特に鹿児島県産のかんしょでん粉の主な用途になっています。
異性化糖を出荷するタンクローリー
異性化糖工場の外観
じゃがいもは、北海道の畑作地帯において麦類、豆類、てん菜とともに輪作体系に欠かせない作物であり、さつまいもは、鹿児島県において干ばつの被害を受けやすいシラス土壌で、台風も常襲する厳しい環境のなかで農家の経営を支える重要な作物です。
一方、国内産いもでん粉は、主要な輸出国と比べると原料作物の生産条件や工場の立地条件に大きな差があるので輸入とうもろこしを原料とするコーンスターチや安価な輸入でん粉と比べると大きな
価格差があります。
このため、alicでは、「砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律」に基づいて、コーンスターチ用とうもろこしやでん粉が輸入される際に、調整金を徴収し、これを財源として、でん粉原料用のいも生産者や国内産いもでん粉の製造事業者に交付金を交付することで、国内の生産者の方々を支援し、でん粉の生産・供給体制の安定を図っています。
(特産調整部、特産業務部)
写真撮影協力:日本澱粉工業株式会社
異性化糖の原料とうもろこし・ばれいしょ(じゃがいも)・かんしょ(さつまいも)
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196