アルゼンチン及びブラジルの牛肉生産事情
最終更新日:2015年5月13日
alic調査情報部では、最近の農畜産物の需給状況を把握するため現地調査を実施しております。
今回は、調査情報部の山崎良人(アルゼンチン)及び米元健太(ブラジル)より調査結果を報告しま
したので、その概要を紹介します。
アルゼンチン・ブラジルの農業概況
アルゼンチン、ブラジル両国から日本への牛肉輸出は行なわれていません。しかし、牛肉の生産量の世界ランキングをみるとアルゼンチンは第6位、ブラジルは第2位、輸出量ではブラジルは世界第1位となっており、国際需給に大きな影響を与えている国々です。
両国とも飼料作物であるトウモロコシ及び大豆かすの大生産国であり、安価な飼料を確保できること、さらに、近年、従来の放牧肥育から穀物肥育による牛肉生産が増加しており、今後も国際市場での存在感は高まるとみられています。
内需志向のアルゼンチンと外需志向のブラジル
アルゼンチンは、政府による輸出規制(輸出税)等により、国内供給を優先しています。牛肉生産
は、国内の牛肉需要が堅調な中、安定した生産が行われています。
世界三大肥沃土の一つであるパンパ地域での大豆など飼料原料生産の拡大に伴い、放牧地は減少し、肉牛生産は放牧肥育から穀物肥育に移行しています。このように飼料原料の生産増加により穀物肥育の増産は期待できますが、昨年繁殖地帯を襲った洪水により、繁殖雌牛が減少しているため、天候に問題がなければ、数年後から生産は拡大すると見られています。
輸出は、中国・ロシア向けのシェアが増加していますが、政府の輸出規制等により、2005年をピークに2014年にはその4分の1まで減少しています。こうした中、EU向けの輸出に、新たに高級牛肉無税枠を獲得したので、輸出量増加の可能性はありますが、輸出規制などの対応を見極める必要があります。
一方のブラジルは、従来の放牧管理から集約的で回転率の高いフィードロットへの移行が進展し、単位面積当たりの生産性向上が持続しています。さらに、国内外の旺盛な需要、豊富で安価な飼料穀物、好調なもと牛生産等の好条件を背景に牛肉生産は増加が見込まれています。
ブラジルの生産コスト(特に、飼料費、肥育もと牛価格)は世界的にみて低水準にあり、国際競争力は極めて高いと言えます。輸出傾向としては、冷蔵品よりも冷凍品が圧倒的に多いという特徴から、質よりも量を求める近隣各国やアフリカからの引き合いが強くなっています。米国、中国、サウジアラビア等の新市場獲得に加え、肉質改善による既存市場での需要の喚起も見込まれます。世界的に牛肉増産可能国が限られているなかで、ポジティブな特徴を多く有するブラジルは、国際市場での存在感をさらに強めていく可能性が高いといえますが、道路・港湾などインフラ整備に係る課題の解消が求められます。
参加者からは、情報の少ない南米の状況を知ることができ有益だったというご意見をいただきました。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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