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【レポート】 豊後牛にもっとセールスポイントを 〜ブランド確立に向けた大分県の取組み〜

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最終更新日:2013年5月8日

 調査情報部 柴崎 由佳

はじめに

全国各地で数多くのブランドがつくられ、より一層の差別化が求められる中、大分県は肉のおいしさに関係があるオレイン酸をブランド牛認定の基準に設けました。

大分県の新たなブランド確立に向けた取組みの背景・経緯と、その課題解決に向けた取組みを報告します。 

新たなブランド誕生の背景・経緯

大分県では豊富な草地資源を背景に、歴史的に県の中部に位置する久住飯田高原で繁殖経営を中心とした肉用牛生産が行われてきました。

図1 に示すとおり、大分県の肉用牛飼養頭数は、肥育牛1万4500頭、繁殖雌牛1万9200頭となっており、肥育牛の割合が低くなっています。豊後牛の生産を強化するために、大分県は近年肥育牛の増頭を進めてきました。

大分県は、豊後牛の認知度を高めるため、平成19年12月、「The・おおいた豊後牛」というブランドを誕生させました。

ブランドの定義は、「大分県で生まれ、肥育された黒毛和牛で肉質等級3等級以上の牛肉」とされました。ただ、このブランドの確立に取り組む中で、さらにもう1つ、豊後牛にセールスポイントを作り、他県産和牛との明確な違いを作り出せないかと考えました。産地間競争が厳しい中、ブランド力の強化は必要だと考えたのです。

注目したのが「オレイン酸」でした。 
肥育牛と繁殖雌牛の飼養頭数割合の県別比較

おいしさを「見える化」

オレイン酸は、牛肉に含まれる不飽和脂肪酸という脂肪の成分で、血中コレステロールを低下させる働きがあるといわれています。また、オレイン酸が多く含まれていると、牛肉は風味と口当たりがよいとされます(図2)。 
ブランドの定義
「The・おおいた豊後牛」のブランドマーク
「The・おおいた豊後牛」のブランドマーク
豊後牛の消費拡大や流通促進を目的とした県内関係団体が設立した、豊後牛流通促進対策協議会が県内で開催した試食会では、消費者が感じる味の違いはオレイン酸含有量の差と一致することが判り、これがきっかけの1つとなって「豊味( うまいの証(あかし)」が誕生しました。 

このブランドは、これまでのブランド「The・おおいた豊後牛」に「オレイン酸55%以上」という新基準を加えたもので、平成23年2月9日より販売が始まりました。
「豊味いの証」のブランドマーク
「豊味いの証」のブランドマーク
県内でと畜される豊後牛すべてがオレイン酸の計測対象となり、計測の結果基準を満たす枝牛には証明書が発行されます。店頭販売では「豊味いの証」のブランドマークが貼られます。「豊味いの証」は「The・おおいた豊後牛」の基準も満たすため、両方のブランドマークが貼られます。 

このように、消費者からみて牛肉のおいしさがブランドマークで分かるだけでなく、生産者にとっても出荷した豊後牛がブランドで流通したのかどうかが見えるようになっています。  

課題と今後の取組み

「豊味いの証」販売開始から2年、販売量の確保と消費者へのPRという課題がみえてきました。

現在、「豊味いの証」として認定される豊後牛は「The・おおいた豊後牛」の2割弱と非常に低く、PR効果が薄れ、「豊味いの証」の消費拡大につながりにくくなっています。

このため、「豊味いの証」の流通量とのバランスを考えながら、消費者に認知してもらうため、飼料米やライスオイル(米胚芽油にシリカなどを加えて乾燥させた粉末)を牛に給与することで、オレイン酸含有量がどう変化するかといった試験や、小売り現場での「豊味いの証」導入の動きが進められています。  
写真:1頭1日当たり200グラム給与されるライスオイル。3ヵ月給与して、オレイン酸含有量の変化を調べる。
写真:1頭1日当たり200グラム給与されるライスオイル。3ヵ月給与して、オレイン酸含有量の変化を調べる。
量を確保し、積極的なPRを展開し、生産者の生産意欲を高めるだけの価格設定へと転嫁するにはまだ時間が必要ですが、おいしさがみえる化された県の新しいブランド確立に向けた各現場での役割に応じた地道な取組みを通じて、少しずつ認知度が高まっている状況であり、「豊味いの証」がもつ可能性の大きさを感じさせます。  

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