消費者コーナー 「食」の安全・安心や食育に関する情報、料理レシピなど

ホーム > 消費者コーナー > 広報誌 > 【第一線から】エコフィード利用でコスト低減と肉質向上!(山形県)〜森谷畜産の和牛肥育の取組み〜

【第一線から】エコフィード利用でコスト低減と肉質向上!(山形県)〜森谷畜産の和牛肥育の取組み〜

印刷ページ

最終更新日:2013年6月25日

◆コストの3割はえさ代

エコフィードに取組む森谷さん
エコフィードに取組む森谷さん
 肉用牛のえさの原料であるトウモロコシや大豆カスなどは、その多くを海外からの輸入に頼っています。
 そのため、これら原料をもとに作られる肉用牛肥育用のえさ(配合飼料)価格は、海外の穀物相場などに大きく左右されることになります。
 肉用牛の代表的な品種である黒毛和牛の肥育にかかるえさ代は、生産費の約3割を占めるため、生産者にとって、それを低減することは大きな課題の一つです。
 現在、この問題を解決する一つの手段として、エコフィードなどを利用した低コストのえさづくりが注目されています。
 エコフィードとは、酒粕や豆腐粕など食品製造工程で発生する副産物や、売れ残りのパンや総菜など、食品として消費されなかったものが、えさとして再利用されたものを言います。農林水産省の推計によると、平成22年度には、全国で発生する食品廃棄物などの約5割に相当する1千万d以上が、えさとして利用されているそうです。
 今回ご紹介する森谷畜産の森谷隆一さんは、山形市北部でエコフィードなどを利用し、市場から子牛を購入して、黒毛和牛100頭(多くはブランド牛である「山形牛」として出荷)を肥育しています。また、米やそばを生産して、畜産との複合経営を行っています。

◆エコフィード中心のえさづくり

ウィスキー廃液などを加えた独自配合のえさ
ウィスキー廃液などを加えた独自配合のえさ
 森谷さんの経営の特徴は、エコフィードを利用したえさづくりにあります。
 えさ代の低減と肉質の向上の両立を目指して、市販の配合飼料を利用せず、えさの配合については、独自に研究を重ね、試行錯誤をしながら、オリジナルの配合をしています。
 まず初めに導入したものはビール粕です。ビール粕は、大麦などを主体としているため、たんぱく質や繊維質が多く含まれており、肉用牛のえさとして適しているからです。
 
ほのかなウイスキーの甘い香りが、牛の食いこみをさそいます。
ほのかなウイスキーの甘い香りが、牛の食いこみをさそいます。
次に導入したものは、ウイスキーを蒸留する際に発生する廃液です。宮城県内のウイスキー工場から出るものを購入しています。飼料穀物の価格が高騰した平成20年から21年頃に利用を開始しました。
 これを配合したえさは、少し湿り気がありますが、ほのかに甘いウイスキーの香りがします。牛もこのえさを気に入っているようで、配合する前と比べて、えさを良く食べるようになったそうです。
 さらに、平成23年からは、山形県内菓子メーカーの工場から出る落花生の薄皮を利用し始めました。薄皮には、赤ワインなどで注目されているポリフェノールが含まれているため、牛の健康にも良いのではないかと考え、給与しているそうです。
 
オリジナルのえさで元気に育っています。
オリジナルのえさで元気に育っています。
現在、黒毛和牛1頭を肥育するためには、約30万円のえさ代がかかりますが、森谷さんは、これらの取組みにより、22〜23万円ほどに抑えることが出来たそうです。
 その一方で、肉質は、平成23年に販売した牛の8割以上が上位(A4、A5)の格付けとなっており、山形県内でも高い成績を収めています。
 森谷さんのえさづくりに対する熱心な取組みが、えさ代を抑えるだけでなく、高い成績を挙げる原動力にもなっていることがうかがえます。
 この他にも、森谷さんは、地域の米農家との稲わらと堆肥の交換や、最近注目されている飼料米を自ら作付けし、試験的にえさ利用を行うことで、更なるえさ代の低減を目指しています。

◆親子3代での経営へ

 これらの取り組みを行ってもなお、黒毛和牛の肥育には、様々な課題があります。黒毛和牛は、子牛を導入してから育て終わるまでに、約2年もの期間がかかり、牛の販売価格、えさ代、子牛の購入価格などは全てそれぞれの相場に左右されるため、結果として収益が大幅に変動する可能性があります。
 そこで森谷さんは、収益がマイナスのときに補てん金が交付される「肉用牛肥育経営安定特別対策事業」(当機構実施・図参照)に参加し、収益の変動に備えています。
 また、とりわけ子牛の購入費用は、えさ代と並び黒毛和牛の生産費の約4割と大きな割合を占めています。
 森谷さんは、これからの経営方針として、子牛価格の変動に対応出来る安定した経営が行えるように、ご自身で子牛の生産を行う計画を持っています。
 子牛の生産については、着々と準備が進んでいます。現在、森谷さんの息子さんは、農業大学校に在学中で、後継者として子牛の生産を担うために、九州の農家でその技術を学ぶ研修を受けています。
 また、息子さんが戻られた後には、農場の近くの休耕田を利用して母牛を放牧できないか、検討しているそうです。
 ゆくゆくは、肥育を手伝っているお父さんや、息子さんと3代で経営することを夢見て、森谷さんは今日も、黒毛和牛の肥育とえさづくりに精いっぱい取組んでいます。
グラフ

前のページ               次のページ

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196