【alicセミナー】食品表示を巡る事情と課題
最終更新日:2013年8月5日
財団法人 食の安全・安心財団
事務局長 中村 啓 一氏
平成24年9月26日開催のalicセミナーでは、(財)食の安全・安心財団事務局長の中村啓一氏をお招きしました。食品表示一元化の経緯や、食品表示Gメンとして多くの食品偽装問題を扱った経験に基づく貴重な講演となりました。以下にその概要をご紹介します。
わかりやすい食品表示のために
事務局長 中村啓一氏
消費者庁は食品衛生法、JAS法、健康増進法の3法にまたがっている食品表示に関するルールを分かりやすくするため、昨年9月から一元化の検討を重ねてきました。今年8月、従来は任意表示だった加工食品の栄養成分表示を、ある程度の誤差を許容するなど小零細業者への配慮を行い、5年以内に義務化を目指すとの最終報告書をまとめました。
その際、中食・外食等におけるアレルギー情報の取り扱いも検討されましたが、事業者側に大きな負担となるため義務化をするという結論には至っていません。アレルギー表示が書かれていないということも重要な情報になり得るため、仮に義務化する場合は正確な表示の徹底が必須であると考えられます。
これまでの検討のなかでは、現行の期限表示は期限の設定方法や、消費期限と賞味期限の違いなどが分かりづらいとの議論がありました。また、原料原産地表示の拡大について、消費者側は「消費者の知る権利として全てに表示すべき」、事業者側は「すべてに実効性・真正性が確保できるか」と主張し、結論がつきませんでした。 消費者が必要とする情報を提供することは事業者の責務ですが、実効性の伴わない義務化は違反を誘 発する恐れがあります。
食品偽装事件を調査して
老舗料亭が売れ残りや返品の期限表示を延ばしていた問題など、多くの期限表示違反事件が明らかになりました。また、近年は、BSEの牛肉買い取り制度を悪用した牛肉偽装事件を皮切りに、鶏肉や豚肉、タケノコなど次々と産地偽装事件が露見しました。なかでもうなぎ蒲焼きの産地偽装は手が込んでおり、中国産うなぎ蒲焼きに架空会社の名称を表示し、特産のものとして販売していました。
事故米不正転売事件では1社の販売した米が複雑な流通経路を経て、最終的には320社に転売されていました。このことから消費者だけでなく、生産者や流通過程の事業者も被害者になり得ることが明らかになりました。
一連の食品偽装事件の調査を経験し、偽装による矛盾を見つけ出すためには、物・情報・金の流れを追いかけることが基本だと考えられました。
おわりに
今回の検討会で結論が出なかった原料原産地表示については、50%以上の原料について表示する形から議論を始めると、折り合いもつくのではないかと思います。また、食品表示一元化で法律は一つにまとまりますが、保健所・農水省・自治体の3機関で監視・執行する現在の体制については議論されておらず、今後見直していく必要があるでしょう。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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