【第一線から】北海道の砂糖生産〜農事組合法人オホーツク網走26の取り組み〜
最終更新日:2013年7月31日
北の大地に育まれる国産糖の原料・てん菜
白い身の部分だけでも1kg弱にもなるてん菜
砂糖の原料であるてん菜(別名「ビート」「さとう 大根」)はアカザ科の二年生植物で、肥大した根部に多くの糖分を含みます。ロ シア料理のボルシチに使用される赤い皮のビーツは親戚です。
寒冷な気候を好むため、日本では北海道でしか栽培されていません。平成21年1月〜12月の産出額は469億円と北海道畑作の主要品目であるたまねぎやばれいしょと並び基幹作物となっています。
多角経営でてん菜を生産
北海道の中でも道東のオホーツク地域は、てん菜生産が盛んな地域です。同地域におけるてん菜の収穫量は、北海道全体の約4割です。同地域の年間平均気温は5〜6度ですが、農耕期間の気温は15 〜 16度となるため、畑作を中心とした低温に適応する農作物が生産されます。
てん菜生産者のひとつである北海道網走市の「農事組合法人オホーツク網走26」(渡辺孝市代表)は、7戸の農家で構成され、約300ha の農地のうち、80 ha (東京ドームの約17 倍)でてん菜を作付けするほか、たまねぎや肉用牛生産など多角的な経営を行っています。
平成17年に設立された「農事組合法人オホーツク網走26」
テクニックの見せ所は苗床作り(播種〜幼苗期)
てん菜の生産は、通常まだ雪の深い3月上旬、ペーパーポットという紙の筒に種をまき苗を作る作業から始まります。
今年の網走地方は、春先の気温が低く雪どけが遅れました。同法人では例年より少し早い2月下旬に種まきを行い、ハウスの中で育てた苗を畑に移植する2週間前に寒さに慣れるよう外に出す工夫をしました。
これが丈夫な苗を作る秘訣でもありますが、一冊約50kgにもなる苗床を運び出す作業は想像以上に重労働とのことです。
厳しい寒さのなか始まる苗床作り
大型機械で広大な土地に苗を植える
自動ビート移植機
気温が上がる4月中旬は移植の季節です。ペーパーポットごと畑に移植するのですが、ここで活躍するのが「自動ビート移植機」です。
自動ビート移植機は、コンピューター制御により、ペーパーポットの苗を自動で振り分け、一度に複数の畦に苗を移植することができる機械で、トラクターでけん引します。同法人では、6畦同時に移植ができる大型の移植機を2台使用することで作業を効率化し、一日あたり8ha に移植しています。
苗の運搬、機械の操作、苗の仕分け等移植作業に要する人員は総勢14人に及びます。移植の遅れは、てん菜の成長や糖度に影響を与えるため、構成員が協力し合い行っています。
移植後の重要な作業の一つに水まきがあります。
渡辺代表によると、6月になりてん菜の葉が大きくなってくると、土に直接陽があたらなくなるため、5月に水をまくことで、よほどの干ばつがない限り、水をまかなくても土が乾かないとのことでした。
渡辺代表は、「以前、てん菜はあまり防除に気を配らなくても良い作物だったが、最近は他の作物よりも気を配らなくてはならなくなった」と話します。
近年、集中豪雨や台風、農耕期間の高温・低温等の異常気象による被害を受けることが多くなりました。
特に、夏場の高温多雨により、褐斑病が発生し、収穫量に大きな影響を及ぼすようになったため、病害虫に対する防除も重要な作業となっています。
防除の強化には、輪作体系を守り土の力を強くすることも大切だそうです。同法人では肉用牛生産を行い、自らたい肥も生産し利用することで土壌を強化しています。
収穫が終われば「ほっと一息」
てん菜は、夏の終わりから、昼夜の寒暖差によって糖分を蓄えていきます。
雪が降る前に収穫する必要があるため、てん菜の収穫作業は、10月中旬から11月にかけて一気に行われます。
種まき、育苗、移植、そして、防虫、収穫における生産者の皆さんの努力が、丈夫で糖度の高い国産てん菜を支えています。
「一年の畑作業は、てん菜に始まり、てん菜で終わる」と語る渡辺代表。収穫が終わるとやっと一息つくことができるとのことでした。
てん菜から砂糖へ
厳しい冬を迎える北海道では、これから製糖工場が本格的に稼働します。
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