【レポート】さとうきび生産者の意識と行動把握の重要性
最終更新日:2013年8月5日
宇都宮大学農学部准教授 神代英昭
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程 今井麻子
調査情報部 中司憲佳
さとうきびは、鹿児島県南西諸島・沖縄県の生産者にとって重要な作物です。また、さとうきび産業にとって重要なことは「効率化」と「安定化」です。
さとうきび生産の効率化について
現在、さとうきびを生産する多くの島では製糖工場やJAなどが中心となって、さとうきびの品種、作型、作付面積、収穫量などの、地域内のさとうきび生産者のデータを収集しています。
これらのデータは直接的には、各生産者に対するキビ料金の支払いに収集され活用されていますが、同時に、地域全体の収穫・搬入・製糖の「効率化」のためにも活用されています。
具体的にいえば、地域全体の畑から工場までの搬入・製糖工程の計画・運用を立てる際の参考データとして活用され、各生産者で収穫されたさとうきびの品質をできるだけ落とさないように、また無駄なく少しでも多くの砂糖を生産することが目指されています。
さとうきび生産の安定化のために
徳之島では生育段階で、台風、干ばつ、病害虫などの影響を受けやすく、生産量や品質がどうしても不安定になりがちです。
このような不安定性は、例を挙げると、干ばつ対策としてのかん水(水やり)、病害虫対策としての農薬散布、地力低下対策としての肥料投入などの個々の生産者の 行動によって、ある程度緩和が可能です。
さとうきびの作付面積や生産量の減少が進むと、製糖工場の操業度・収益性が悪化してしまうので、この負の連鎖を断ち切る必要があります。
このことから、地域全体でさとうきび生産の安定化を進めるためには、さとうきび産業の最上流にあたる各生産者がどのような意識を持ち、どのような行動をとっているのかという状況を把握することが、まずは必要となります。
徳之島でのアンケート調査
そこで私たちは鹿児島県徳之島において、生産者の意識と行動を把握するためのアンケート調査を実施しました。
島内の様々な地区からランダムに抽出した540名に調査票を配布し、138名分を回収しました(回収率は25・6%)。
以下では調査結果の一部を紹介します。
(1)かん水の実施
徳之島の土壌は、主に石灰岩、粘板岩など重粘土壌から成っており、石灰岩土壌は保水性に乏しく透水性(水はけ)が良いので干ばつを受けやすい特徴があります。生育期である夏期には毎年のように干ばつ被害が出ており、安定的な生産のためには、干ばつ時にかん水対策が必要となっています。
かん水行動は固定スプリンクラー方式を中心に実施されていますが、島全体で見ると実施率は22%に留まっており、かん水を実施しない理由に注目すると、「機械・施設が未整備」が非常に高く(74・1%)、インフラ整備の問題から実施率が低くなっています。(表1、表2)
(2)農薬などの使用
農薬に注目すると、数種類の農薬を組み合わせて使用している生産者がほとんどでした。
また、たい肥使用の問題点としては、散布労働の負担と高価格が指摘されており、化学肥料を使用する生産者の割合が高く、有機肥料を使用する場合でも化学肥料との併用が多いことが分かりました。(表3、表4)
徳之島のさとうきび畑
本調査では、生産者の行動の現状を一定程度把握できました。
この次の段階の課題として、こうした生産者の行動がどのような 結果につながっているのか、つまり生産実績との関係を明らかにすることが重要になると考えられますので、本年度も継続して調査を進めています。
なお、機構のホームページに『徳之島におけるさとうきび生産者の意識と行動把握の必要性と現状』と題した詳細なレポートを載せておりますので、こちらもご覧ください。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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