【第一線から】口蹄疫復興のシンボル〜西米良(にしめら)種雄牛センターの整備を支援〜
最終更新日:2013年9月4日
◆種畜改良施設「西米良種雄牛センター」の竣工
宮崎県における口蹄疫からの復興のシンボルと位置付けられた一般社団法人宮崎県家畜改良事業団(以下、「事業団」といいます。)が整備した「西米良種雄牛センター」の竣工式が、平成 25 年5月 13 日に江藤農林水産副大臣、河野宮崎県知事ほか、県内の多くの畜産関係者等の出席のもと行われました。
この竣工式の模様は、現地のマスコミでも大きく取り上げられ、宮崎県内における同センターへの期待の高さがうかがえました。
その後、西米良種雄牛センターでは、 20 頭規模による(種雄牛(候補種雄牛を含む))運用が始まり、高鍋の種雄牛センターと2ヵ所で種雄牛の管理を行っています。
現在、事業団では行政や関係団体と一体となり、新規種雄牛の早期造成に取り組んでいます。
◆口蹄疫畜産再生基金事業
平成 22 年4月 20 日に宮崎県都農町で発生が確認された口蹄疫は、その後5市6町に広がり、県内家畜の4分の1近くにあたる約 29 万頭が殺処分される事態となり、宮崎県の畜産業に甚大な被害を与えました。
この事態を受け、alicは、平成 22 年度から平成 24 年度にかけて、口蹄疫対策特別措置法(平成 22 年6月4日法律第 44 号)の趣旨を踏まえ、口蹄疫畜産再生基金事業として、口蹄疫の発生により殺処分された種畜の再興に向けた種畜の造成及び改良施設整備を始め、農場再開に向けた安全・安心確保に係る支援、地場産畜産物の需要拡大のためのPR活動など8つの事業を実施し、宮崎県の畜産業の復興・再生の支援を行ってきました。
この口蹄疫畜産再生基金事業の補助を受け、事業団が整備したのが「西米良種雄牛センター」です。
◆事業団について
竣工式で挨拶する岩下事業団理事長
宮崎県においては、昭和 40 年代、種雄牛は県内の八つの地域ごとに管理され、改良と増殖が図られていましたが、種雄牛管理の合理化と凍結精液の全県利用及び検定事業等の強化を図るために、昭和 48 年3月 28 日に社団法人宮崎県家畜改良事業団が設立されました。(平成 24 年 10 月1日に一般社団法人へ移行)
これにより、全国に先駆けて県内種雄牛の一元管理を実施し、全国における黒毛和種の優良な因子の把握に努め、遺伝的多様性を具備した優秀な種雄牛の選抜・造成を行ってきました。
こうして造成された事業団の種雄牛は、県内の多くの繁殖農家からの支持を受け、県内における凍結精液の供給シェアは約 98 %に達し、肉質や産肉性に優れた「宮崎牛」の発展に大きく寄与してきました。
このような取り組みは、近年においても着実に成果を上げており、平成 19 年に開催された第9回全国和牛能力共進会では、宮崎県は団体賞を始め、多くの賞を獲得しています。
◆口蹄疫の発生からその後の種雄牛管理体制
平成 22 年の口蹄疫発生時、高鍋町にある事業団の種雄牛センターは、第1例目発生から搬出制限区域に入り、翌 21 日には移動制限区域に入ったため、ここで一元管理をしていた種雄牛を避難させることができませんでした。
こうした中、「種雄牛だけは絶対守る」という信念のもと、第1例発生当初から感染防止に向け、事業団役職員は全力を尽くして対応してきましたが、5月下旬に口蹄疫の感染が確認されたことから、同施設で管理されていた多くの種雄牛が殺処分され、 55 頭いた種雄牛(候補種雄牛含む。)は、結果的にエース級5頭のみとなってしまいました。
この経験を踏まえ、事業団は、種雄牛及び凍結精液の一元管理を見直し、予めリスクを回避するため、もう一つ種雄牛センターを整備し、今後は、この分散農場と2ヶ所で種雄牛を管理していく体制を構築する必要があると考え、その整備に当たっては、口蹄疫畜産再生金事業(種畜改良施設整備)を活用することとしました。
◆建設用地の選定・工事
完成した西米良種雄牛センター(平成25年3月)
建設用地の選定については、特別委員会を設置して検討しました。
この中で、整備する分散農場は、既存の種雄牛センター等から一定の距離を置いた場所であって、口蹄疫等の病原体の侵入リスクが極力少ない場所であること。また、万が一の緊急時には、道路封鎖が容易であること等の建設予定地に係る条件が示されました。
この条件のもと、県内 39 ヵ所の候補地を選定の上、検討した結果、既存の種雄牛センター等から一定の距離があり、周辺5 km の範囲内に家畜が極めて少ないこと。また、緊急時には建設用地に面した村道の封鎖を村が約束してくれたことから、西米良村小川地区に決定しました。
工事は、平成 24 年8 月から着工し、工事期間中は事業団をはじめ、関係機関・工事関係者が密に連絡、調整を行い、計画どおり翌 25 年3月に完了することができました。 (総事業費3億4381万円、うちalicからの補助金額2億1548万6千円)
◆今後の取り組み
種雄牛の管理状況(平成25年8月)
口蹄疫の発生から3年が経過しましたが、被害を受けた畜産農家の経営の再開状況を見ると、戸数ベースで 62 %、頭数ベースで 69 %となっています。
この間、宮崎県は、平成 24 年に開催された第 10 回全国和牛能力共進会において2連覇を達成するなど、口蹄疫からの復興・再生をアピールすることができました。
今後、宮崎県では、畜産農家が安心して経営を再開し、県全体の畜産農家が経営を維持・発展させるため、中長期的な視点で、「全国のモデルとなる安全・安心で付加価値や収益性の高い畜産の構築」に向けた取り組みを進めることとしており、新たに「畜産新生プラン」を策定し、取り組みを進めて行くこととしています。
今回整備した西米良種雄牛センターは、このプランに基づく「復興から新たな成長」に向けた取り組みの中で、重要な役割を果たしてくれるものと期待しているところです。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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