【第一線から】ジェラートの製造・販売で6次産業化に取り組む酪農家 〜神奈川県伊勢原市〜
最終更新日:2013年11月6日
日本では酪農家2万戸で145万頭の乳用牛が飼養され(平成 25 年2月現在)、年間763万トン(平成 24 年1〜 12 月実績)の生乳が生産されています。牛乳や乳製品といえば、北海道を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、国内生産の半分は都府県で生産されています。
石田牧場3代目 石田 陽一さん
酪農家の中には、生乳を生産( 一次)するだけではなく、自ら加工(二次)し販売(三次)する6次産業化に取り組んでいる方もいます。6次産業化で経営の多角化を図ることにより、所得の向上だけではなく、地域農産物のPR効果も期待されています。
今回、ご紹介する石田牧場の石田陽一さんは、神奈川県伊勢原市で酪農を営み、自身の牧場で生産した生乳を使ってイタリア風アイスクリームと言われるジェラートの製造・販売を行っています。
◆昭和46年に酪農経営を開始
新宿から電車で一時間の距離にある伊勢原市で石田さんは、祖父母、両親、本人の5人で乳用牛約 45 頭を飼養しています。周りは畑が広がる田園風景で静かな場所です。石田さんの祖父は、昭和 46 年に酪農経営を開始し、石田さんは3代目となります。品質の良い生乳を生産するため、牛舎内を清潔に保ち、牛の居心地が良い環境作りを心掛けています。
年間の生乳生産量は320トンで、そのうち 12 トンをジェラート製造に使用し、残りは乳業メーカーに出荷しています。
◆ジェラート販売を通じて地域農業を活性化
季節の旬の野菜や果物を使用したメニューを取りそろえている。
石田さんは、平成 23 年3月にジェラートを製造・販売する「めぐり」を開業しました。奥様がジェラート部門を担当し、開業前には石田さんと奥様の二人で全国のジェラート屋をめぐり、計画の参考にしたそうです。店舗では、地元で採れたトマト、かぼちゃ、スイカなど、季節の旬の農産物を使った 12 種類のジェラートが販売されています。
ジェラート販売を始めたきっかけの一つに、伊勢原の農業を盛り上げたいとの想いがあったそうです。石田さんは、「伊勢原には若い農業者も多く、そうした農業者と連携しながら地域を活性化したい」と語り、他と差別化を図るため、「搾りたての生乳+新鮮な農産物=高品質なジェラート+生産者の思い」をコンセプトに、メニューにはジェラートに使用する農産物の生産者の名前を入れ、その生産者の写真付パネルを店舗内に掲示して紹介しています。農産物の仕入れ先は 11 者で、そのうち8 者は伊勢原市の農家です。
年間を通じて一番売り上げが多い月は4月で、1日に500人が来店することもあるそうです。また、毎週日曜日には店舗前の駐車場で、伊勢原市の農家が集まって農産物の販売を行う「めぐ市場」を開催しており、生産者と消費者をつなぐ機会を設けています。
平成 23 年の開店5日後に東日本大震災で被災し、停電の影響で3月中は営業ができず、本格的な営業開始は4月となりましたが、営業できなかった間は作業・接客マニュアルを作り、従業員教育やミーティングを重ね、有意義に時間を使うことができたそうです。「何事も前向きに考えることが大事」と石田さんは語ります。
「ジェラートで伊勢原市の農産物の魅力を伝えるという筋が通ったコンセプトがあればお客さんは来てくれる」という石田さんの言葉を裏付けるように、めぐりは開業後1年目から黒字を計上しているそうです。
今後は、ジェラート販売を通じて伊勢原市の農業をアピールすることはもちろん、地域で無二の存在になり、石田牧場のファンを増やしていきたいと語ってくれました。
石田牧場に隣接する「めぐり」。毎週日曜日には「めぐり市場」に来る人でにぎわう。
◆酪農家の経営安定のための事業
安全で、品質の優れた国産農畜産物を消費者の皆さまに安定的に供給するためには、生産者の経営安定を図ることが必要です。農畜産業振興機構では、各種の制度や補助事業を通じ、農畜産物の生産者の経営安定を図っています。
日本の酪農家で生産される生乳のほとんどは、乳業メーカーに出荷されます。乳業メーカーとの生乳取引は、生乳の使用用途別に取引価格が異なります。機構では、飲用牛乳向けに比べて価格が安いバターや脱脂粉乳などの原料となる生乳(加工原料乳)を販売した酪農家に補給金を交付し、酪農家の経営を支援しています。
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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