【トップインタビュー】野菜の消費と食料自給率
最終更新日:2014年7月14日
東京青果株式会社 代表取締役社長 川田一光氏に聞く
健康な食生活や、食品ロスの削減について関心が高まっています。
日本最大の青果物卸であるとともに、荷受け業務だけではなく、青果物の摂取を通じての健康増進や循環型社会
への取り組みを進める川田社長にお話を伺いました。
まず、日本人を取り巻く食料事情をどのようにお考えですか。
今の食料自給率は39%ぐらいでしょうか。その自給率を将来的に50%にするとの目標が掲げられています。そのために必要な措置があると思います。
その一つの目玉が、大規模農業にしていこうということ。
もう一つは、耕作放棄地を再度耕して、自給率を上げるということ。
こういった方策も必要と思いますが、一方で、なぜ自給率が下がったのかという検証が重要だと私は思います。食料事情から言えば、日本の自給率が下がった最も大きな原因は、食の欧米化だと思います。
日本人の食生活をどのような方向にもっていけばよいでしょうか
野菜について言えば、消費を増やすことによって健康にもなりますし、もう少し
日本本来の食文化へ戻るような形になってくれればありがたいなと思います。
まずは、野菜を食べる習慣をつけてもらおうと思っています。昭和60年頃に110kgあった野菜の摂取量が平成24年度では93kgで、2割程度、野菜の摂取量が減ってきているんです。
元々、野菜の消費の仕方は少量多品目なんです。小鉢でたくさん野菜を食べる。
これが日本食の元々の形で、我々もそういう食生活を送ってきましたが、最近はサラダで野菜を摂る等、欧米化してきています。
野菜消費の面で、特に利便性のみが重要視されているようですが、我々だけでは出来ないのですが、健康を増進していこうという運動、ベジフルセブン運動(末尾参照)などには我々も参加しています。
ベジフルセブン運動についてはいかがでしょうか
これは、単位という考え方で50g×7単位の野菜を摂りましょうという運動のことです。言うは易く行うは難しなんですが、7単位の野菜・果物を採ろうとするとやはり手間がかかります。スーパーでの購買をみても生活単位が小さくなっていることがわかります。
今まで、スーパーではキャベツは小さくても4分の1、通常は2分の1で売っていました。コンビニでは、8分の1とかの小さなサイズで提供して、手間をかけないで、冷蔵庫に貯蔵することなく、その日に使い切る量で販売し、消費を増やしてもらおうと動いています。
消費者が利用しやすい形にするということについてはどのように考えてらっしゃいますか?
カット野菜市場は、どんどん伸びるだろうと思っています。しかし、我々にも問題があるんですが、カット野菜の価格の決定メカニズムは、生で食べる時の野菜の価格がベースになっているんです。つまり、カット野菜の売値は198円と決めたら1年間同じ価格なんですが、本来、野菜は、一年を通して作柄は同じではないので相場は上下に動きます。
生の野菜が高い時は、相対的にカット野菜は安くなります。加工する側は高い原料を仕入れなければいけません。でも、買う方にとっては価格は安く感じるので量は出てしまいます。逆に、野菜全般が非常に安い時は、売値が198円だと買う方は割高に感じて、生を買ってしまいます。
そうすると、本来カット野菜の契約野菜が儲かる時に量が減ってしまいます。こういうジレンマがあって、なかなか飛躍的に量が伸びると言えないんです。消費者の方が、カット野菜は手間をかけて切ったのだから、本来の素材と手間をかけたサービスの価格に連動する、というような意識付けになってくれれば、もうちょっと流れはスムーズになると思っているんです。
消費者の方々の理解が変われば、ミスマッチも改善されると
無選別でバルク(バラバラの状態)で持って来て、それで、店頭に置いて売るという
こともあるんです。そのバラ売りでも、日本の主婦の方って良いもの全部選んでいくんですね。最後は残っちゃう。これはやっぱりロスになるんです。これでは必ずしも
価格を安くしきれません。
食文化の話に戻りますけど、日本人のこだわる「見た目に綺麗、食べておいしい、鮮度が良い」ここを動かせないとしますと、なかなかバルクで持って来てという売り方は、まだ難しいですね。
カット野菜はこれからも伸びるということですが、難しい点などは
市場全体で対応することではありますけど、コンビニ対応はロットが小さいので小分け作業が大変です。
次に、配送頻度ですね。スーパーは朝持って行けば終わりなんですけど、コンビニの場合は2回から3回配送が要求されます。これも、なかなか難しいです。
最後に、各店への配送。スーパーの場合のように、配送センターへの納品で済むということがコンビニの場合は無いんですね。スーパーと違って、コンビニの場合は設備面で鮮度管理が難しいんです。それゆえに配送頻度が高まるわけなんです。その辺、割りきりで行けないかなと。スーパーみたいに欠品が無いということにしますと、労力がいりますし、売り場面積自身がスーパーに比べたら何分の1以下ですから、ロットは小さくなります。
一番大きいのはその物流面ですね。
これからの日本の野菜生産に期待することは?
これは、大いに期待できますね。まず、鮮度という点で、品質の面では日本の野
菜、果物というのは世界に勝っています。決してどこにも負けないと思っていますよ。それを評価するマーケットがある限り日本の野菜が無くなるとか、日本の野菜がダメになることはないと思うんです。だから、日本の野菜の生産農家は、自ら作った野菜の鮮度なんかや品質の管理に自信を持ってやっていただけたら良いと私は思っています。
こういったところを追求していけば、まだまだ日本の青果物は十分に生き残ると思いますね。
我々のこれからの課題は、「鮮度」と「季節感」なんです。そこをどうやって産地と考えて出していくか、我々もそれをネタ出ししていくかだと思いますね。適地でシーズンにコストを安く作れるものを売るとか、地球に優しい環境型農法であるエコファーミングな考え方等がこれから出てるんだと思いますし、そういうことを我々も後押ししていかないといけないなと思っているんです。
野菜の流通に携わる立場で、メッセージがあればお聞かせ下さい
先進国の中でも日本の野菜摂取量っていうのは真ん中より下なんです。これだけ健康志向が高まってサプリメントが売れているときに、本来の機能を持つ野菜を食べて、健康になってもらう、健康になるために野菜を食べるというぐらいの感覚で良いと思っているんです。そういうことを頭に置いて消費をしていただきたいなと思っているんです。
これからは医療費も増えるでしょうし、医食同源という考えもありますので、その観点からも野菜の消費あるいは果物の消費について進めていきたいと思います。
東京青果株式会社 代表取締役社長
川田 一光
昭和26年生まれ
昭和60年10月 東京青果株式会社入社 経理部長
昭和63年6月 同社 常務取締役
平成11年6月 同社 代表取締役社長
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196