長寿と子宝の島でのさとうきび作り 〜鹿児島県徳之島 西彦二さんの取り組み〜
最終更新日:2014年5月7日
鹿児島県徳之島には、島ぐるみでさとうきび増産を目指す「徳之島さとうきび新ジャンプ会」という大規模若手農家で構成される組織があります。今回は、この組織の会長として活躍されている西彦二さんをご紹介します。
徳之島とさとうきび
鹿児島県の奄美群島のほぼ中央に位置する徳之島は、長寿と子宝の島として有名で、また、さとうきび栽培がとても盛んな島です。
冬がやってくると、収穫されたさとうきびで満載になったトラックが島内のあちこちで見られ、島は活気にあふれます。
さとうきびは、島の耕地面積の約6割で作付けされており、農業生産額の約4割を占める重要な作物となっています。
「若い力」を結集して
新ジャンプ会は、町から推薦を受けた大規模若手農家22名で構成され、ハーベスターによる収穫作業の請負を核に、地域の農家が安心してさとうきび栽培を続けられる環境づくりを目的として、平成23年に設立されました。
さとうきび作りが次世代へ確実に受け継がれていくようにと、県・町・JA・製糖会社などが一体となり新ジャンプ会の運営を支援しています。
課題に対して力をひとつに
研修のひとコマ。会員の他、新ジャンプ会をサポートする人々も集まり、課題解決を目指します。
新ジャンプ会では、(1)単収アップのための情報交換、(2)若手会員の育成と募集、(3)高齢農家への支援を柱とし、栽培や機械に関する技術研修会や島外視察のほか、定期的に会報を発行しています。また、今年から研修会で新たにフリートーキングを設けました。
フリートーキングでは、普段の作業の中で課題としていることを会員同士で話し合うことで、互いの問題意識を深く共有できるようになり、その結果、自然に個々の主体性と新ジャンプ会としての一体感が生まれ、課題解決に向けて力がひとつになりつつあります。
新ジャンプ会 会長 西 彦二さん
この新ジャンプ会を率いるリーダーが西彦二さんです。西さんは、「子宝の島」の名のとおり奥さんと6人の子宝に恵まれた8人家族で、自らのほ場約14ヘクタールのさとうきびの管理作業を行いつつ、収穫期には近隣農家の約43ヘクタールもの収穫作業を請け負っています。ハーベスター収穫のほかに、整地作業や植付け作業も行っており、今
後は防除作業も請け負う計画があるそうです。
西さんご一家 夕方からは子ども達も一緒に農作業
育成中の補植用の苗。「将来的にできるだけ自分で栽培したい」と西さん
節約しながら単収向上
島に数台しかない「たい肥散布機」
西さんは、現在、単収向上のため「たい肥の活用」と「苗の補植」に積極的に取り組んでいます。
たい肥はさとうきび植付前のほ場に全面散布せず、生育中のさとうきびの根元にすじ条に散布する「条施肥」という方法でたい肥を散布します。こうすることで苗の発芽が良くなるだけでなく、化学肥料の節約にもなり、結果的に経費を節減することが可能となります。
また、西さんは「芽が出なかった部分への苗の補植は、単収に大きく差が出る作業でもある」と言い、年間雇用している従業員と共に、苗の発芽不良などが原因で芽が出なった部分へ苗を補植する作業を的確に行うことで、単収を向上させています。
おぼらだーに 〜「ありがとう」の力〜
ハーベスターで収穫作業中の西さん。従業員と一緒にさとうきびを丁寧に刈り取ります。
本日の収穫作業完了!今夜も子供達の三線を楽しみます。
さとうきび生産農家の高齢化は年々進行しています。その中で、新ジャンプ会が高齢農家の支援を活動の柱としていることは重要なことであり、さとうきび増産には不可欠なことです。西さんは、自分の仕事がどんなに忙しくても、人に頼まれた仕事は夜遅くなり灯りをつけてでも、その日のうちに確実に作業を終わらせます。その責任感あふ
れる人柄からリーダーとして頼りにされ、地域の人々からは「おぼらだーに(「ありがとう」という意味)」と感謝され、それが力になるそうです。
「さとうきびは自分が汗を流し手をかけてやった分、確実に応えてくれる作物。それが何よりも楽しみ。」と西さんは言います。
そして、もう一つ、別の楽しみが1日の作業の終わりに子供達の三線(さんしる)を聴くこと。毎晩、子供達が練習の成果を聞かせてくれることで日々の疲れが吹っ飛ぶそうです。
今後も頼りになる島のリーダーとして活躍が期待されています。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
Tel:03-3583-8196