九州を元気に!〜JR九州グループの「トマトJr.農園・玉名」を訪ねて
最終更新日:2015年3月4日
◆JR九州グループの取り組み
JR九州グループは、収益の多角化と併せて、九州各地を巡る観光をセットにした「ななつ星in九州」をはじめとする観光列車の運行や、ウォーキングイベント等を通じて「九州のいいところ」をPRし、九州全体を元気にする取り組みを行っています。
その一環として、担い手不足である農業の分野に平成22年から参入し、地元の農協と共に農業に取り組み地元の方々の雇用も確保することにより地域農業の活性化に貢献しています。
◆トマトJr.農園・玉名のミニトマト栽培
ミニトマトを栽培する大型のハウス
JR九州グループが農業参入する適地を探して各県に相談していたところ、熊本県庁から「玉名市の大浜農協に協力してもらえる」との紹介があり、玉名市がトマトの一大産地として知られていることに着目し、平成23年にこの地で「トマトjr.農園・玉名」として新たに農場を開き、ミニトマトの栽培を開始しました。
この農場の大きな特徴は、安定的な栽培が可能な「ポットファームシステム」を大規模なミニトマトの栽培としては国内で初めて導入したことと、当初から地元の大浜農協から全面的な協力を得て栽培に取り組んできたことの2点です。
大浜農協からは、農地の確保に関する地権者との仲介や栽培の技術指導などの全面的な協力を得ることで、生産を軌道に乗せることに成功しました。
ミニトマトは農協を通じてほぼ全量出荷され、約1割はJR九州グループ内の飲食店等へ提供されています。
「ポットファームシステム」は、岐阜県農業技術センターで開発された「培養液循環栽培システム」で、室温の維持、培養液の循環と殺菌を自動制御する装置であり、農業の
経験が浅い人にとっても、肥培管理の大きな手助けになることが利点です。
また、ハウス内で1鉢ずつ独立したポットでトマトを栽培するため、病害の伝染を抑制することができます。
設備の単位は、複数のハウスを連結して1つにしたもの(40〜60m×80m)で、これが全部で5棟あります。
収穫期間は10月〜翌年7月で、今期は220〜230tの収穫を見込んでいます。
ハウスの入り口の前にもう一つ部屋があるため、密閉性が高く農薬が飛散しにくいこと、白いマルチをハウス内の床一面に張ることにより、害虫の侵入を抑制するとともに、果肉への光線量を確保する工夫がされており、県内ではあまりみられないものです。
栽培しているミニトマトは、6割が新品種である「アンジェレ」です。
ヘタを取り除いた状態で出荷・販売されること、果肉のゼリー質が少なく歯ごたえがしっかりしていることと、高糖度ですっきりとした旨味が特徴です。
大切に育てられ実った「アンジェレ」
◆駅長から農場の所長への転身
農場の所長である朝田広之さんは、新八代駅の駅長から、全くの異業種である農場の所長へ転身されました。
「ポットファームシステム」販売会社の圃場での研修や大浜農協の方々からの指導を受け、試行錯誤を重ねて栽培技術を習得しました。
初期投資に費用が掛かっていましたが、これまでの取り組みが実り、今年からようやく採算ベースに乗るとのことです。
JR九州グループでは、この農園での栽培開始以降、新たな地域で農業に参入する場合は、その地域に合った栽培方法を習得するため、農協の部会の生産者の方々と同社が技術指導の契約をして栽培の指導を受け、地域に密着した農業経営に取り組むこととなりました。
「1人では何も分からないところから始まりましたが、従業員には的確な指示を出さなければいけなかったため大変でした。」と朝田さんはおっしゃっています。
当初は農業経験が浅かったため、作業が遅れがちになる等、苦労が絶えなかったとのことです。その後、栽培技術の習得や経験を重ねることにより、今では効率的で安定し
た栽培ができるようになり、設備も当初の3棟から5棟に規模拡大しました。
◆将来への期待
少しずつ規模拡大を行ってきたこちらの農場は、指定野菜価格安定対策事業に加入しており、価格が低くなった時に交付金が出るため、「安心して栽培ができて助かっている。」と朝田さんは安堵の表情です。
農場の従業員は朝田所長を含め34人ですが、平成27年4月からは新入社員を迎え入れる予定とのことで、「新しい仲間とも良いチームワークが取れるといいですね。」と将来への期待を語っておられました。
◆指定野菜価格安定対策事業とは
この事業は、当機構で実施しており、平均販売価額が一定の水準より下がったときに、その差額の一部を交付し、生産者の経営安定に貢献しています。
(野菜業務部)
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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