【第一線から】定時定量出荷を基礎に道産ブランド確立を目指す 〜北海道苫小牧市樽前 有限会社ビィクトリーポーク〜
最終更新日:2016年1月6日
北海道苫小牧市は、新千歳空港や苫小牧港といった空と海の玄関を有し、札幌都市圏に最も近い都市として、道経済発展のための大きな役割を担ってきました。また、同市は天然資源も豊富で、樽前山麓の広大な森林と厚い火山礫層によってろ過された清水が湧き出ており、「水道水のおいしいまち」ともいわれています。
道内で、年間5万頭を超える豚を生産している有限会社ビィクトリーポークは、「社会への貢献と豚への愛情」を理念に、昭和62年に北海道余市郡に設立されました。その後、平成15年に苫小牧市内に肥育農場を増設して以来、ミネラル豊富な湧き水や道産飼料など、地域で入手できる資源を活用した豚肉生産に取り組んでいます。
ビィクトリーポーク樽前肥育農場
◆衛生管理の徹底で病気の発生を防止
ビィクトリーポークでは、農場内に病原体を持ち込ませないためにさまざまな対策を講じています。その一つがシャワーや消毒ゲートの設置で、農場に出入りする作業員や車両の消毒を行っています。それ以外の関係者の入場は制限されていて、取材した私たちも豚舎に立ち入れませんでした。
また、豚を出荷する際に一度豚舎を空にした状態で、洗浄・消毒を行うオールイン・オールアウト方式を取り入れるなど衛生管理は徹底されています。このように、同社では病気の発生を未然に防いで、健康な豚を安定的に出荷できるように取り組んでいます。
農場入口の車両消毒ゲート
授乳中の母豚と子豚
◆エコフィードを活用した環境への配慮と飼料自給率の向上
エコフィードを混ぜ合わせた液状飼料
ビィクトリーポークが苫小牧市で肥育農場開設に至った理由の一つに、同市は食品製造工場が多く、そこから発生する製造ロス(スナック菓子やチョコレートなどの製造過程で得られる副産物)を入手しやすいという利点がありました。畜産の分野では、こうした製造ロスを飼料に加工したものを「エコフィード」と言います。エコフィードは、食品リサイクルによる資源の有効利用や飼料自給率を向上させるための方法として、近年注目されています。
このほか、同社で使用される飼料原料は、小麦や飼料用米、トウモロコシ、ジャガイモなど道内で調達可能な穀物です。このうちトウモロコシは、輸入品を少量使っていますが、安定的に飼料を調達するため、将来的には飼料原料の全量を道産にこだわっていきたいとのことです。
さらに、仕入れた飼料原料は粉砕され、液状にして混ぜ合わされたものが豚に給与されます。これは「リキッドフィーディング」と呼ばれ、飼料を液状にすることで豚の消化吸収が向上し、肉質の良さや脂の甘さにつながるとされる給与システムです。液状なので、水分の多い製造ロスも利用でき、飼料を乾燥させる必要がないため、CO2の削減にも寄与しています。
◆ 給与飼料の変更によって複数のブランド豚肉を生産
樽前湧水豚の豚肉
リキッドフィーディングの導入は、給与飼料の原料やその割合を簡単に変更することができます。ビィクトリーポークでは、これを利用して、豚舎内のグループごとに飼料原料の割合を変えて給与し、それに応じて「樽前湧水豚」、「樽前ジャガ豚」、「樽前ホエイ豚」、「小樽美米豚」の4種類のブランド豚肉を生産しています。豚肉は給与される飼料の種類によって、脂肪組成や融点に影響すると、一般的に言われています。同社のブランド豚肉は、消費者のニーズに合わせて生産され、精肉店をはじめ飲食店やスーパー、小売店で取り扱われています。また、豚の飲み水に地元の湧き水を与えているため、消費者からは豚肉に臭みがないとの評価を得ています。
◆「道産」としての豚肉生産の確立
紹介してきたビィクトリーポークの徹底した衛生管理やエコフィード、道産原料の活用は、安全・安心でおいしい国産豚肉を安定的に生産するためのものです。同社では、こうした定時に定量出荷できる生産基盤があってこそ、付加価値をつけたブランド豚肉としての販売が可能だと考えています。また、消費者の声を大事にし、飼料の調達や調製などの研究を続けて、道産ブランド豚肉のイメージアップに努めています。
alicでは、生産者が安心して肉豚生産を継続できるよう、販売の収益が生産コストを下回った際に、差額の8割を補?する事業を実施し、同社も参加しています。また、同社は、今後の展望について、さらなる生産性の向上や環境対策などに取り組んでいき、養豚業が道民に理解され、応援される産業となるよう続けていきたいとしています。 (畜産経営対策部)
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費者課)
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