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【alicセミナー】腸内フローラと食品・乳製品

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最終更新日:2016年3月3日

わかりやすい資料でていねいに説明される瀬戸氏

 健康志向の高まりから、機能性ヨーグルトなどの食品の需要も高くなっています。そのような中、テレビなどのマスメディアにおいて“腸内フローラ”“腸内細菌”という言葉を聞く機会も増えました。
 このような背景を踏まえ、2月8日(月)にalicセミナーにおいて、「腸内フローラと食品・乳製品」をテーマに、公益財団法人日本ビフィズス菌センター(腸内細菌学会)学術委員会委員で長年腸内細菌について研究をされている瀬戸泰幸氏を講師にお招きし、ご講演いただきましたので、その概要を紹介します。

技術の進歩とともに腸内フローラが注目

 ヒトの腸内には、腸管全体で1000種類、1000兆個もの細菌が棲みついていることがわかってきました。これらの菌の集合体を“腸内フローラ”といいます。腸内フローラは、1960年代から培養法という手法で研究が進められてきましたが、2000年代に入ると、さらなる技術の進歩があり、次世代シーケンサーという機器の登場によりDNAベースで網羅的に解析できるようになりました。これにより、一気に研究スピードがあがりました。また、人間の最大の免疫器官である腸管の研究も同時に進められ、腸内細菌と免疫機能の関わりも注目されるようになりました。

健康に関わる腸内フローラ

 腸内フローラは、(1)有害菌に拮抗して腸管への接着や腸管内での増殖を抑制、(2)菌の構成物や代謝物が免疫細胞を刺激し免疫力を活性化、(3)菌の代謝物が腸管細胞の栄養となり腸管のバリア性を高める、などの働きで健康につながっていると考えられています。いくつかの病気では、腸内フローラが正常でなくなっていることが報告されており、このことから腸内フローラが乱れることが病気の要因になる可能性も指摘されています。また、肥満のマウスの腸内フローラを別のマウスに移植すると肥満になること、腸内細菌の一つであるビフィズス菌の特定の菌株が大腸菌O157による無菌マウスの死を予防すること、など腸内フローラと病気(健康)に関わる研究結果が数多く報告されています。

食事と腸内フローラの改善

 食事内容で腸内フローラが変わることも報告されています。良い腸内環境・腸内フローラを作るには、有害菌を抑制して腸内環境を整える作用のある乳酸菌やビフィズス菌などのプロバイオティクスを摂取すること、また体に良い菌を増やす作用のあるオリゴ糖や食物繊維を多く摂ることも大切で、バランスよくいろいろなものを食べることは、腸内細菌の多様性が増し、腸内環境が崩れにくくなることにつながります。また、牛乳に含まれている乳糖には、ビフィズス菌を増やす作用、ヨーグルトには腸内で働く乳酸菌を使用しているタイプやオリゴ糖を含むタイプもあり、これらの乳製品を摂取することも腸内環境を整え、腸内フローラの改善につながります。

研究は今後も進む

 腸内フローラには多くの菌が関与しているため、とても複雑で、その解析は簡単ではありません。研究の信頼性を高めるためには、現象を一方向だけでなく多くの方向から解析し、全体から見るように、腸内フローラ研究を進める必要があると考えています。
当日の詳しい資料はこちらでご覧いただけます。
https://www.alic.go.jp/koho/kikaku03_000421.html

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