【第一線から】長崎県における野菜生産の取り組み〜JA島原雲仙の段々畑を利用したレタス栽培〜
最終更新日:2016年5月11日
長崎県では、近年、レタスの作付面積が大きく伸びています。島原半島の南西部にある南串地区では、段々畑を利用してのレタス生産、特に加工・業務用レタス生産が伸びていることから、その取り組みについて紹介します。
◆西日本有数の野菜産地となった長崎県
冬期の比較的温暖な気候を生かした野菜生産が行われている長崎県は、北海道に次ぐ出荷量2位のばれいしょをはじめ、レタス、にんじん、たまねぎ、アスパラガス、ブロッコリー、いちごなど出荷量で全国8位以内に入る野菜を数多く生産する西日本有数の野菜産地です。全国の農業産出額が平成25年から2年連続で減少している中、長崎県は平成21年以降、5年連続で増加しており、平成16年比では、全国1位の伸び率となっています。部門別農業産出額の構成割合の推移をみると、米と果実の割合が減少していく中で、野菜の割合は増加を続け、平成22年以降は畜産と同じ3割台に達しました。
◆段々畑を利用した野菜生産
長崎県は、多くの離島や半島を有するほか、急傾斜地が多く、野菜を生産する上では決して恵まれた条件とはいえません。しかし、島原半島の南串地区などでは、中山間地域の傾斜地を開拓し、石垣を積んだ段々畑を整備するなど野菜生産を行うための基盤整備を進めています。
生産者の高齢化などによる耕地面積の減少は、長崎県も例外ではなく、平成26年は、昭和50年の7万3900haと比較して、32・5%減の4万9900haでした。このような中でも、レタス、ブロッコリー、たまねぎ、にんじん、かぼちゃなどの面積が増加してきており、県内の地形の特性や天候を生かした適地適作の野菜生産が行われています。
◆加工・業務用レタス栽培の導入
県の南東部に位置する島原半島を管轄とするJA島原雲仙は平成13年4月に11農業協同組合が合併してできました。
JA管内でも南串地区では、急傾斜地が多いことから地区のほとんどが段々畑となっており、機械の導入が難しい中、限られたほ場を有効活用して、地域全体で、加工・業務用レタスの生産性と品質の向上に向けた取り組みを行っています。南串地区では、主として露地栽培が行われています。その理由は、島原半島内においても特に温暖な気候であることから、レタスに直接不織布をかける方法(通称:べたがけ)で霜対策が可能で、トンネル栽培に比べて労力とコストを抑えることができるためです。
JA島原雲仙南串地区の野菜生産者である田島幹生さんは、両親と夫婦の家族4人で、レタス4ha、ばれいしょ2haを栽培しています。段々畑は排水性が良いため、レタス栽培にも適しているそうです。
従来、レタスは青果用として出荷していましたが、加工・業務用レタスの生産を始めたところ、収入が安定してきたとのこと。加工・業務用は、青果用以上に品質と歩留まりが重視され、これに加えて、契約栽培のため欠品することが出来ません。このため、欠品対策として、耐寒性品種、耐病性品種など違う品種を最低3品種作付けしたり、10月に集中的に定植を実施するなど栽培管理を徹底しています。それでも、気象条件などにより、欠品がでる恐れがあるときは、地域の生産者同士が連携しながら市場出荷用のものを加工・業務用に振り向けるなど、南串地区レタス部会が一丸となって、欠品を出さない取り組みを行っています。
◆生産拡大への取り組み
これまでJAでは、レタスは主に九州市場に出荷していましたが、JA全農長崎県本部による販路の拡大により、首都圏にも出荷するようになりました。南串地区におけるレタス生産は、近年、コンビニのカップサラダ向けなどの加工・業務用需要が増加したこともあり、市場向けとあわせて、出荷量は増加傾向で推移しています。
JAでは、生産者が栽培に専念することが出来るようにするために、人手が足りず収穫が追いつかない生産者を支援する「農援隊」という制度を創設しています。ここ数年、経営が安定して人を雇う農家もでてきたり、後継者も増えていることから、魅力のある農業となりました。
さらに、国、県の補助事業などを活用して、真空冷却器や予冷庫の整備、べたがけ用資材を導入し、JA全農長崎県本部の販路拡大、産地JAの営農指導など、県全体が一丸となって生産体制を強化し、レタスなどの生産拡大に努めています。
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