【レポート】持続可能な砂糖生産に向けたEUの取り組み〜ISOセミナーから〜
最終更新日:2016年5月11日
EUは、ブラジル、インドに次ぐ世界第3位の砂糖の産地であり、世界のおよそ1割を生産しています。EU域内の主要生産国は、フランス、ドイツ、ポーランド、イギリス、オランダなどです(図)。
現在、EUでは、持続可能な砂糖生産に向けた取り組みが業界一体となって行われています。その内容について、国際砂糖機関(ISO:International SugarOrganization)が昨年11月にロンドンで開催したセミナーで得られた情報を中心にご紹介します。
EUのてん菜の生産動向
砂糖の原料はサトウキビやてん菜ですが、日本のてん菜生産地である北海道と緯度の近いEUは、主にてん菜から砂糖を生産しています。
2015/16年度(2015年10月〜2016年9月) は、133万haの面積で、9254万tのてん菜が生産されると見込まれています。これは日本のてん菜と比べて面積で23倍、生産量で26倍に相当します。
主要国の概況と持続可能な砂糖(てん菜糖)生産に向けた取り組み〈フランス〉(クリスタルユニオン社の報告)
〈フランス〉(クリスタルユニオン社の報告)
フランスの大手製糖グループで フランスの大手製糖グループであるクリスタルユニオン社は、約1万人のてん菜生産者と契約し、12工場で150万tの砂糖と65万klのエタノールを生産しています。
同社は、持続可能な砂糖生産に向けた目標を掲げ、てん菜の生産性向上に対する支援や、砂糖・エタノール生産工程でのエネルギー使用量の低減、CO2排出量の削減などの取り組みを行っています(表1)。
〈ドイツ〉(ゲッティンゲン大学の報告)
ドイツでは、農業政策の指針として、「持続可能な生産体制の強化」が提唱されており、食品生産を質・量ともに発展させ、資源の保全に最大限努めることが重要な目標とされています。
大学などの研究機関も含めた産学連携によるバイオテクノロジーの発展によりてん菜の生産性を向上させることで、栽培面積を拡大せずとも世界の砂糖需要増加に適応することができるとしています。
〈イギリス〉(農業者連盟の報告)
イギリスでは、2007/08年度から2014/15年度の間に、てん菜生産者が約5000人から約3500人に減少した一方で、てん菜生産量は約700万tから約930万tに増加していま す。1戸当たりの生産規模が拡大するとともに、(1)品種改良(病害虫に対する抵抗性の強い品種など)、(2)播種管理技術の向上、(3)栽培密度の観測などを行うイギリ スてん菜調査機関の活動により、毎年2%程度のてん菜の増産を達成しています。再生産可能なてん菜価格の設定のほか、運搬作業などサプライチェーンの効率性向上などにより、生産者と製糖企業がそれぞれ自立し発展していくことが、今後の増産に向けて重要であるとしています。
欧州てん菜糖持続可能性パートナーシップ(EU BSSP)
欧州てん菜糖持続可能性パートナーシップは、2013年に組織され、2015年9月に「優良実践報告書」を発表しました。
これによると、EU域内では、約18万人がてん菜糖産業に従事しており、てん菜は、砂糖のみならず、家畜飼料やエタノールなどを生み出し、EUのバイオマスの発展に大いに寄与してきたとされています。
同報告書は、EU域内のてん菜糖産業の持続可能な生産体制の維持・発展に向け、実践項目(表2)と優良事例を紹介しています。
このように、EU各国や企業が、実需者の理解を得ながら、てん菜生産者や製糖企業の地位を維持・向上していくため、持続可能な砂糖生産に向けた取り組みが展開されています。
【参考】砂糖類・でん粉情報2016年2月号「第24回国際砂糖機関(ISO)セミナー報告〜持続可能な砂糖生産に向けて〜」
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001259.html
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農畜産業振興機構 企画調整部 (担当:広報消費課)
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