【第一線から】徳島県における野菜生産の取り組み〜水田を活用したブロッコリー栽培〜
最終更新日:2016年7月13日
徳島平野に位置し、徳島県におけるブロッコリーの出荷量で大きな割合を占める徳島市農業協同組合(JA徳島市)と阿波町農業協同組合(JA阿波町)の管内では、水田を活用したブロッコリーの生産が盛んであり、近年、作付面積が大きく伸びています。そこで今回はこの両JAの取り組みについて紹介します。
◆多様な野菜の産地である徳島県
徳島県は、全体の約8割を山地が占め、平坦地が少ない中で、東西に流れている吉野川の中流・下流域を中心に徳島平野が開けており、豊富な水や温暖な気候に恵まれています。
徳島県では少ない平坦地を利用した集約農業が盛んで、かんしょ、にんじん、いちご、ほうれんそう、なす、ブロッコリー、きゅうりなど、多種多様な野菜が生産されています。
中でもブロッコリーは近年生産が着実に拡大している品目であり、平成13年から26年の間に出荷量は、3・2倍、作付面積では2・7倍と大きく増加しています。
◆ 水田を活用した野菜生産
徳島県の耕地は3万100haで、そのうち水田が約7割(2万300ha)を占め、稲作が盛んな地域です。一方、畑は約2割(5640ha) ですが、同県の農業産出額953億円の内訳をみると、米98億円(10%)に対し、野菜は348億円(37%、いも類77億円を含めると45%)と、大きな割合を占めています。
これは、(1)温暖な気候を活かし、米の裏作として冬期の野菜生産が進められていること、(2)米の生産調整として、春から秋にかけて水田に野菜が作付けされていること、が一因となっています。平坦地の少ない同県では、水田に米と野菜を作付けすることで、限られた農地をフル活用した農作物の生産が行われています。
◆製氷機の導入や育苗センターでの苗供給などでブロッコリーの生産が拡大
【JA徳島市の取り組み】
JA徳島市では、県内の他JAに先駆けて製氷機を平成13年に導入し、ブロッコリーを氷詰めにして出荷するとともに、輸送トラックも冷蔵車を使用することで生産者から消費者までのコールドチェーンを確立しました。JA徳島市は、このように野菜の品質と温度の管理にこだわった出荷をしており、常にさらなる改善を図っています。
例えば、平成21年に、生産者が出荷したブロッコリーを直ちに検査できるように検査・氷詰めするラインを増設したことで、出荷時において検査が終わるまで生産者が拘束される時間が従来よりも大幅に短縮されました。さらに、生産者がJAへ出荷できる時間を拡大させることにより、生産者の農作業の時間管理に余裕が生まれ、栽培管理や収穫調整に専念できるようになり、栽培面積の拡大につながりました。
【JA阿波町の取り組み】
JA阿波町では、定年退職を機に、これまで兼業農家として生産していた米に加え、裏作として野菜を作付けするようになった生産者が多いという特徴があります。JAでは、育苗センターで水稲の苗のほかにブロッコリーの苗も生産し、生産者に提供をしています。定年退職した生産者であっても、JAが苗を供給することでブロッコリーの生産に取り組みやすい環境作りが行われています。
また、育苗センターにおいても春に水稲の苗を、夏から冬にかけてはブロッコリーの苗を生産し、年間の稼働率を高めることで、育苗に掛かるコストを抑え、品質を落とさず低価格なブロッコリーの苗の提供を可能とし、生産者から喜ばれています。
また、JA阿波町でも、平成16年に製氷機を導入しました。
このようなJA徳島市およびJA阿波町の取り組みにより、両JA管内では、ブロッコリーを生産、販売しやすい環境が整いました。また、生産者やJAに加えて、県、JA全農とくしまが協力し、根こぶ病対策や秋から翌年の初夏までの長い期間において出荷できる技術を磨いてきたことも、ブロッコリーの生産量の増加につながっています。鮮度重視の出荷を行っている徳島県産のブロッコリーは、出荷先である京阪神地域の卸売市場などで高く評価されています。
このような取り組みを参考に、今後、他の野菜産地においても水田を活用した野菜の生産拡大が図られることが期待されます。
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